153話
そして始まった本格的な話し合い。
これ、話し合いって言っていいのかどうか。
どちらかと言うと、コチラの言い分を向こうに飲ませるって感じか?
「今、何と言ったんじゃ?」
おおう、真ん中付近に居たドワーフが一人、眉間に皺を寄せながら聞いてきた。
以外な事に、彼以外は、少々イヤそうな顔をしているけど、意見を言うつもりは無いらしい。
そんな彼らドワーフ達に伝えたのは…
「今、説明した通り、この世界での武器や防具の作製は、個人的趣味以外を全て中止とする…っと言ったんだ」
「ワシらドワーフに物造りを止めろと言うのか?!」
テーブルに勢いよく『ドン』と手を付けると、そのドワーフが怒りを滲ませた声で聞いてくる。
まだ怒鳴り散らす程では無いらしい。
そのドワーフ、名前を『ヴィボール』と言うらしいんだが、今居るドワーフ達の中では、一番の若手らしい。
顔だけ見ると、同じ髭面オッサンにしか見えないけれど。
「座れ、ヴィボール」
「しかしガルゴースさん!!」
「さっさと座れ、さもないと後ろの怖い姉さんに殴られるぞ」
そう言われたヴィボールが後ろを振り返ると、そこには良い笑顔のリリーナが立っていた。
ほんの一瞬前までは、ユウキの横に居たハズだったが、いつの間にか移動していたようだ。
そんな彼女の視線に、『ぐぅっ』と一つ唸り声を上げると、渋々席に座る。
まぁ怖いよね、俺も傍目で見てただけなのに怖いと感じたし…ってか、あの表情の時のリリーナは、怒っている前兆みたいなものだ。
さて、彼らに告げた最初の話は『武具の作製中止』だ。
それと言うのも理由として『販売相手がいない』事が挙げられる。
今いるのは異世界、それもモンスターのいない世界だと言われている。
そんな世界で、それこそドラゴンにすら手傷を負わせられる武器なんて物を出したらどうなるか。
それ以前に、武具を購入してくれるかさえも怪しくなる。
エルザによれば、人だと思える生き物が居るらしいとの報告は来ている。
だからと言って、何も分からない人に、強力な武具を売ろうもんならどうなる事やら。
ちなみにリリーナの予想では…
「もっと強い武器を寄越せとか言ってくると思います。それに通貨や価値観が同じとも限りませんし」
と、やけに冷めた目で言ってた。
何だろう、何か身に覚えでもあるんだろうか?俺には、そんな覚えは無いんだけど。
ちなみに、エルザも同じ考えらしい。
「竜も巨人亜種もいないんなら、強い武器も作る必要無いだろ?」
っとの事だった。
まぁ、言ってる事は間違ってないケド…それを、ドワーフ達に納得させなければならないってのが問題で。




