13話
「ではマスター、現在判明している事を話しますがよろしいでしょうか?」
目の前で悩んでいた彼女は、そう言ってキリッとした目をコチラに向けてくる。
とは言え、垂れ目のせいでイマイチ迫力が無いのだが…。
「最初はこの世界の事でしたか?」
「うん、とりあえずこの世界は『アルテミア大陸』の何処かの空かな?」
アルテミア大陸、ゲーム『キング·オブ·キングオンライン』内で、最初にプレイヤーが降り立つ…と言う設定された場所の名だ。
設定上での広さは、リアル世界全てを合わせた面積…と言われていたが…今居る場所が、自分の所持していた浮遊大陸だとしたら『ゲーム内に入り込んだ』と言う転移系物語的なアレ何じゃないかな〜っと、メタ的な事を考えをしてしまう。
…なのに
「いえ、残念ながら、ココはアルテミア大陸ではないようです」
「………はい?」
その時の俺の顔は、それはそれはマヌケな顔だっただろう。
いや正直、ゲームの中の異世界に転移?はっはっは〜何それ無双系なっちゃうの?などと思っていただけに、ゲーム内ではありませんと言われると『そう言うのもあるのかぁ〜』っと、どっかのグルメ漫画宜しく、唖然とした顔で現実逃避してしまう訳で。
「ゲームの世か…じゃなくて、アルテミア大陸じゃないと言う理由はあるの?」
そう、ココがゲームの世界でないとしたら、何故分かったのかと疑問に思う訳で…。
「はいマスター、この空には『魔素』がありませんから直ぐに分かります」
「…?」
『魔素』?何それ?
「えっと…魔素と言うのは」
余程のマヌケっ面だったのか、彼女リリーナが色々説明してくれていた。
よくあるアレだ、魔法を使う際に必要な力の源。
ゲームの世界の設定にあったが、各種族は大なり小なり魔力を持っている…らしい。
その魔力を使えば強力な魔法がドーンと使える…っという事ではないらしい。
各自の持っている魔力は、強力な魔法を使う為の着火剤になる。
自身の魔力を使って周囲の魔素を集めて形作って初めて強力な魔法が使える。
その魔素と言われるモノは、世界中に溢れているハズなのだが、この世界には無いらしい。
「全く無いの?」
「ありません」
「ほんの少しも?」
「はい。少なくともこの大陸が浮かぶ周辺には、僅かな魔素さえ存在していません」
そう言われると、困った事になる。
魔素は魔法を使う上で必要な代物、それが無いと言うのは…
「ですがご安心を。魔法自体は使えますから」
「はい?魔法が使える?魔素が無いのに?」
「はい、大量の魔素が必要な上級魔法は難しいですが、中級までであれば何とかなります」
この世界には魔素が無い為、強力な魔法、上級と呼ばれる魔法が使えない程度らしい…って、それって大変な事では?そう思っていたのだが、どうやらソコまで深刻な訳ではない。
魔法には上級、中級、下級の三種類があるのだが、中級までなら何とか発動するらしい、ゲーム内のように連発する事は出来ないそうだが。
「それだと伝説級の魔物が襲って来たら対応が出来ないんじゃ?」
「あ〜その件もですが…魔物も居ないみたいですよ」
「はぁ?」
もう何度目だろうと言うくらい、トボけた顔を晒したのだろうか。
伝説級の魔物と言えば、一番有名なのは古代龍と呼ばれるモノだ。
なにしろ体力だけでも十億を超える数値だ。
ちなみに、レベル千の戦士系プレイヤーでやっと一万の体力値になるかどうかになる。
伝説級の魔物がどれほど恐ろしいかと言うのが分かるかもしれない。
そんな魔物が居ないとなると…。
「伝説級どころかハーピィすら見当たりません」
「…マジかぁ〜」
地上の魔物の代表格がゴブリンとすれば、空の魔物の代表格はハーピィになる。
ゲーム内のハーピィは、十レベル程度のプレイヤーなら余裕で倒せる魔物となる。
初期のレベル上げによく会う魔物だけに、ゲームの世界のアチラコチラで生息しているとい設定だったハズだ。
どのマップに行っても、地上ならゴブリン、空はハーピィとなる。
ちなみに海だとシーゼリーと呼ばれるクラゲモドキが現れる。
海の表面にフワフワと浮き上がる魔物だが、実はスライムの仲間だったりする。




