130話
あの後、『俺の許可はいらないからリリーナの好きに使っていいよ』と言ったら
「マスターの御裁可無くして、そのような事は出来ません」
っと、怒られた…なんでさ?!
いやリリーナ、君はこの浮遊大陸の代表…みたいな者たろ?だったら、君の裁量で何やってもいいと思うんだけど?
って答えたんだケド、余計に怒られた。
『この地はマスターのモノであり、他の誰も、私自身であっても代わりになる事ではありません』…っと。
いや君、今まで俺が居ない間、全てを取り仕切ってたんでしょ。
え?それはそれ、これはこれ?その返答はズルくねぇ?
そう思っていたのだが…
「今までは、マスター不在時の『代理』として仕事をしていただけです。これからはマスター御自身の御意向が、この浮遊大陸全土へと広がっていくのですから」
「お、おう…」
鼻息荒く力説されてしまった。
いや、昨日辺りからリリーナと話していて気付いたのだが、どうにも俺を担ぎ上げようと必死なようだ。
ただ、リリーナ本人としては『本来あるべき位置』へと俺を持って行きたいらしい…何だよ、あるべき位置って?
「分かってて言ってんだろ相棒。コイツはお前を『王』にしたいんだよ」
エルザが恐ろしい事を言いやがったよ。
王?王かぁ…まぁ、浮遊大陸を偶然にも手に入れた時点で王様みたいなもんだったけど…これがゲームの中じゃなくてリアルになると…躊躇してしまう。
「はぁ…勘弁してくれよ。この浮遊大陸の住人を守る事はするけど、王とかそんな偉そうなのはイヤだよ」
ため息と共に本音が出てしまう。
何しろこの浮遊大陸、想像以上に大きかった。
まず面積、十一万から十二万平方キロメートル、大体北海道よりちょっと大きい程だ。
この大きさの陸地に、約九万人の住人がいる…らしい。
らしいと言ったのは、大凡の数しか分からないからとの事。
それと言うのもこの世界、人口統計なんてものは無く、当然戸籍なんてものも曖昧、単純に『この村は何百人程度住んでます』とか『この町は何千人が住んでます』とどんぶり勘定状態。
そんなんで『税を取れるのか』と疑問を投げかけたら、「みんなちゃんと払ってくれてますよ」と、不思議そうに言われた。
払わないって選択が無いらしい…マジですか?どんだけピュアやねん?
ちなみに、税収時期になるとそれぞれの住人が、各町や村の代表の所に出向き、自己申告で現金か現物を納めるシステムなんだとか。
それをちゃんと目録に認めると、城へと持って来るんだとか。
凄いなオイ。
その積荷を狙うような者はいないのかと疑問に思っていたが、この浮遊大陸で、そんな不届きな事をする者はいないと断言された。
理由として、他の領地に比べて税率が安いかららしい。
…安いのかな?確か俺の記憶上だと税率三十五パーセントだったような?
この税率だと、ギリギリ赤字にならず、時間は掛かるが住人も増える数値だったハズ。
ホントにギリギリだけどね。
まぁ、税収が無くても武器や防具、回復アイテム販売で、かなりの売上を持っていたから出来た事だけど。




