128話
この浮遊大陸には、街や村が複数存在するが、その全てがユウキの統治に従っている訳ではない。
リリーナが把握する限り、全体の五十パーセント程度、つまり半分がユウキの統治下だ。
これはどういう事かと言うと、陸地部分の住みやすい場所にある大きな街が、ユウキが浮遊大陸に来た際、忠誠を誓ったからだ。
元々、この浮遊大陸の各街や村は、それぞれの代表が勝手に統治していた。
そこにユウキが表れ、浮遊大陸の統治者を宣言、それに従って配下に入ったという経緯がある。
初期に従った者達は、ユウキが『異邦人』である事を理解し、その傘下に入る事で、守ってもらおうと考えていた。
浮遊大陸は、外部からの敵が入り難くなっているが、逆に内部での争いが激化し易い傾向にある。
実際、いくつかの村が、互いに争う事はよくある事だった。
そんな状況で表れた『異邦人』であるユウキに、各街の代表が保護を求めた形だ。
当然ながら、その事に不満を持つ者達もいる。
実は、ユウキは全く知らないが、ユウキの支配下に治まった街へと侵攻しようとする未統治の町や村が複数あった。
彼らにしてみれば、異邦人の侵略(彼ら的にはそうなっている)で混乱している隙に大都市(彼らの感覚的には大都市)を手に入れようと考えていた。
もっとも、そんな村に関しては、エルザを中心とした武闘派により、アッサリと制圧されている。
首謀者は始末しているが、他にも明らかに不満を表明していた者達も消している…物理的に。
国外追放しようにもココは浮遊大陸、空の上からの追放など落下死しかあり得ない。
結局、一撃であの世行きにはしていた…らしい?
リリーナ自身は、事後報告で聞いていた為、詳しい事までは知らない。
しかし、そうした不穏分子の関係者が、まだ多数存在している為、城の外は危険な場所でもある。
『その為に色々考えたのにぃ…』
彼女の予想では…
『城の外に出る→街の様子を遠目で見る→ドワーフと遭遇(エルフに遭遇する予定は無かった)→ちょっと城でお話を→外出終了』
と、なるハズだった。
「ったく、無駄に策を弄するからそうなるんだよ」
「うるさいですよエルザ!!」
エルザにはこの事を知らせていたのだが、やけに素直に受け入れたと思ってたいた…なるほど、失敗すると思っていた訳だ。
「ぐぬぬ…」
「まぁ、アンタの心配事も分かるがねぇ~。そこはワタシ等で守ればいいだろ?」
「いや、でも…」
エルザの言っている事は正しい…が、もしもの事をかんがえると、リリーナは不安になる。
「はん、五将と七将の頭が付いてるんだ。問題あるかよ」
ニヤリと笑うエルザの後ろに、額に手を当てて肩を落とすリリーナがついて行く。




