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127話






〜〜〜〜〜

とあるマンションの一室で、その人物はパソコンや携帯電話から鳴り響く通知音に悩まされ、頭を抱えていた。

最新の通知の題名は『規約違反』と書かれていた。


当初は、通っていた大学に内緒でやっていた様々な違法行為スレスレの何かがバレたのか?と思っていたのだが、恐る恐る開いて内容を確認してみればそうではなかった。

『キング·オブ·キングオンライン上における違反行為』と題した文章に、頭の中では疑問符が大量に発生していた。


キング·オブ·キングオンラインと言えば、『今度、サークル仲間達と一緒に荒らしてやろうと予定していたネットゲームの名だった』ハズだ。

そもそも、まだプレイどころか『アカウント登録すらしていない』ハズのゲーム会社から違反の通知が来ている事がおかしかった。


その上、『ユウキ』と言う名前の『全く知らない人物』から、「違法な行いは止めろ」「ルール違反だ」と、何件ものメールが届いていた。

しかもその日付が、今から一日前という不思議な状態だ。


日付といえば、更にオカシイ事がある。

自分には『この半年程の記憶が全く無くなっている』のだ。


キング·オブ·キングオンラインを荒らしてやろうとサークル仲間と話をしたのは『昨日』のハズだった。

ところがだ、カレンダーを見てみれば、いつの間にか半年もの日数が過ぎ去っている。


意味が分からない。


自分が飲み会をしたのはまだ秋になる前、夏の終わり頃だったハズだ。

マンションの窓から見える景色は、残暑の厳しい蝉の煩い世界だった。


それが今はどうだ、窓の外は秋を通り越して冬景色。

雪こそ降っていないものの、天候は曇り空で寒々しい。


変だ、変過ぎる。

自分は『サークル仲間達と飲み会をした後、自分の住むマンションの一室で一眠りしだけ』のハズだ。


カレンダーを見れば二月の文字が見える。

ネットニュースを見てみれば、全く見覚えの無い情報で溢れかえっている。


たった一眠りしただけで半年が過ぎている。

浦島太郎の気持ちってこんなモノだったのか?と、何やら意味の無い事を考えてしまう。


そんな中、スマホが着信音を鳴らしてくる。

相手を確認してみれば、同じサークル仲間の一人だった。


「はいもしも」

「リーダー、やべぇ!!俺達時間飛んじまったよ」


挨拶も無しに叫ぶ相手に、思わずスマホを落しそうになる。

が、すぐに気を取り直して落ち着くよう促せば、どうやら彼もこの半年間の記憶が無いとの事。


「俺等どうなってんだ?!コー君やあっ君に聞いても、全員半年分の記憶が無えって言うし、しかも調べてみれば、大学にはちゃんと通ってたって記録も残ってるし、出っ歯教授の講義にも参加した事になってる。いったい何なんだよこれ?」

「落ち着けって」


スマホのスピーカー越しに、色々調べた事を語る仲間に、リーダーと呼ばれた男も額に手を当てて考える。

二十二人全員、あの飲み会の後の記憶だけが消え去っているというのだ。


一人や二人であればイタズラの類と言えるが、自分も含めた全員となれば話は別だ。

後日、全員で集まって話し合おうと伝えてスマホを切ると、ベッドに倒れ込む。


何が何だか分からない。

分かっているのは俺達全員、半年分の記憶を失っているという事だ。


疲れた脳を休ませようと、深いため息を吐きながら眠りにつく。

確か、明日は講義の無い日だったな〜などと考えながら。






翌日、朝から『見知らぬゲームプレイヤー』から、『お前らのせいで上質な武具が手に入らなくなった』とのクレームメールが大量に届く事となり、かなり長い期間頭を悩ませる事となるのだった。


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