124話
何やら悲壮感漂わせながら顔を下げているリリーナ、その横では、空を見上げながら口笛を吹いている悪びれていないエルザ、そんな対照的な二人を見て、またため息を吐きそうになるユウキ。
『いかんいかん、確かため息を吐くと、周囲に嫌な感情を持たせたり、やる気を下げたりする…んだっけ?』
何処かで見た情報を思い出しながら、グッとため息を飲み込む。
リリーナとエルザの件に関しては後で何とかするとして…問題は眼の前のエルフだ。
「えっと…それでエルフさん」
「失礼いたしました主、私の名はフェアラスと申します」
「フェアラスさん?」
「呼び捨てでお願いします」
「…それでフェアラス、何故俺に頭を下げているのか聞いても?」
胸に右手を当てて頭を下げているエルフのフェアラスに視線を向けると、ゆっくりと顔を上げてニッコリと笑う。
あ~、何て言うか『美形がやると様になる』ってのは、こういう事なんだな~などと思っているユウキ、しかもさっきまで無表情だったのに。
「我らが主に頭を下げるのは当たり前ではありませんか?」
「いや違う…そうじゃないんだよ」
右手で頭を掻きながら、ついついため息を吐いてしまうユウキ。
さて、どうしたものかと思っていると…
「おいヒョロヒョロ、どういう事じゃ?主だと?」
「まだ分からんとは…本当に『デカ』いだけの『樽』だなお前は」
「何じゃと!!」
「我らが主と言えば『浮遊大陸のユウキ様』以外あるまい?」
そうハッキリと言ったエルフのフェアラスの言葉に、唖然としていたドワーフ達とエルフの若い者達だったが、ハッと我に返ると直様跪く。
いや待て!!不安定な廃材や積み上げられた石の上で跪くのはヤメろ!!マジで!!などと思っているユウキの思いはさて置かれ、見える範囲の者達全員が頭を下げていた。
それを見て、頭を抱えるユウキだったが、一先ずどうにかしないといけない、そう思い
「全員頭を上げてくれ、頼む。それと作業中の者達はそのまま続行してくれ。そちらを優先だ」
今現在、何故か彼らが従っている以上、それらしい事を言う事で、この場を納めたいと判断した。
結果的にだが、ドワーフ達もエルフ達も、納得がいかないとでも言いたげな顔をしながら、それぞれ作業に戻っていく。
何人かは、チラリチラリとコッチの様子を見てくるが、そこは気付かない振りをする。
いや、今の状態で下手な説明を求められても困るからだ。
ユウキは、口元を押さえ、周囲にため息が漏れないよう気を付けながら、ゆっくりと息を吐く。
眼の前では、立ち上がって微妙に微笑んでいるフェアラスの姿があった。




