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1223話

そんな慢心しまくりな新兵を送り出さなければならない今、せめて戦略で余裕を持たせなければならない。

ならないハズなんだけど………。


「俺はリリーナ監視の元、魔法制御の練習かよ」

「はいマスター、集中を切らせない。魔力を空中に霧散させたら回復薬を一本追加ですからね」

「うぐぐっ………」


いつもなら、昼からイシゴリドと剣の修行を行うのが通例なのだが、今、イシゴリドは部隊を率いて出払っている。

城に残っているのは戦う事が得意ではないエピメテウスか、書類整理と裏の企み進行中のリリーナしかいない。


えっ、エルザはどうしたって?

エルザか………彼女は良いヤツだったよ………や無茶しやがって。


………っと、死んでしまったかのような事を言うのは止めておこう。

エルザは、また俺を誘って城を抜け出そうと計画した罪により、一人で倉庫掃除を命じられていたよ。


城内の一般倉庫から地下倉庫まで、しっかりやらされる事となったそうだ。

ちなみに、ヤバい品々を封印している例の倉庫は除外されている。


あそこ、空間が捻じれてるからあり得ない程広いんだよね〜。

エルザさんや、除外されてて良かったね。


暇を持て余していた所、忙しいハズのリリーナがやって来て、「効率的な魔力制御を練習してみませんか?」と言われ、今に至ると………どうしてこうなった?!

いや、別に魔力制御の練習が嫌な訳じゃないよ。


ただ、やるなら剣の練習の方が良かったかな〜って思っているだけだ。

最近、西洋風の両刃の剣の扱いに慣れて来た所だし、色々試してみたい技とかもあった。


ゲーム内で、戦士系が初期に覚えるパワーエッジと呼ばれる技がある。

本来であれば『戦士職』につかないと使えないが、浮遊大陸が現実世界となった今、その職と言う名の縛りは無い。


実際、ゲーム内での職業と呼ばれるモノだが、それぞれ得意分野によって名乗っているのが常識らしい。

例えば、冒険者と呼ばれる人達が「自分は戦士だ」と言うのは、剣の扱いが得意で魔法が苦手だからという事た。


その逆に、「私は魔法使いです」と言う人は、魔法の扱いが得意なだけになる。

極稀に両方出来る人もいるが、大抵の人はどちらか得意分野で職を名乗るのだとか。


つまり、明確に戦士だの魔法使いだのとの線引きはされていない訳だ。

これに気付いたのは、新人魔法師団の教育を見ていた時だ。


腰に剣を装備しながら魔法を放っていたエルフがいた為、「アレはいいのか?」と聞いた所、「個人が得意としている武器だから問題無い」と言われてしまった。

この時はゲームシステム中心の考え方のせいで、魔法使いが剣を装備出来る事に違和感を覚えていた。


しかし、実際目にしてみれば、戦士が剣だけではなく、短杖を腰に装備していたり、魔法使いが革鎧まで装備していたりと様々な姿を見せられてしまった。

なるほど、俺はまだゲームシステムに固執し過ぎてたと、改めて思い知らされたよ。


ただ、さすがに魔法使いが全身鎧を着込みつつ魔法を放つのは無理だったようだ。

どうしても、鎧の重さに気を取られてしまい、集中力が途切れやすくなるらしい。


まあ、体を鍛えれば全身鎧で走り回る魔法使いが出来そうだけど、そこまで全身鎧に拘るよりローブ姿で身軽にした方が簡単だと思う。

実際、魔導師団の方も、軽装による魔法行使に重点を置いているようで、余程アクの強い連中以外は統一した装備になっているそうだ。


アクの強い?


まあ、メルフェンやエルザのような『オレ様至上』な方々の事だよ。

新人さんも一万人もいれば、そういった考え方の人もいる訳で………うん。


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