120話
服一つ着るだけで、一時間近くがかかってしまった…何故に?
「民に対して立派なお姿をお見せしないといけません」
「いや待てって!!」
民って誰?俺は、浮遊大陸に住む住人に会いたいだけで…。
「マスターの納める領地に住んでいるのですから民であり領民です」
「…」
このやり取り何度目だよってくらいやってます…はい。
俺としては、そこまで偉そうな立場ってつもりは無いのだけれど、何故かリリーナががががが…。
「はっはっは、諦めが肝心だよ相棒」
「…痛いから叩くなよ」
同じくらい上機嫌なエルザが、バシバシと左肩を叩いてくる。
いや、かなり手加減してくれてるみたいだが、それでも痛い…ヤメテ…ヤメテ…。
そんな騒ぎも一段落し、やっと出発…と思った瞬間、リリーナに抱き上げられた…ちょっと、リリーナさんや?
「場内は広いので時間が掛かりますよ?」
「うぐっ」
確かに広い、それはもうとてつもなく広い…これでもゲーム内では、初期に貰える小さな城のハズなのだが…。
ん、待てよ?この広さで一番小さいって事は、中規模や大規模の城の広さって…いや、今はいいか、考えるのは後だ後。
そんなユウキの姿を 後にエルザをこう評した。
「なんて言うか、死んだ目ってのはあぁ言うものなのかねぇ〜」
いや、死んでねぇからな?!
〜〜〜〜〜
城から出たユウキ一行は、そのまま大通りを南側へと歩いていた。
『外に出たので歩きたい、下ろしてくれ』と懇願するユウキに、渋々同意するリリーナだったが、何故か左手を繋がれた。
「迷子になってはいけませんから」
「いや、ならねぇよ?」
「ダメです」
「ぐぬぬ…」
まさか、リアルで『ぐぬぬ』と言う破目になろうとは…そんな事を思うユウキだった。
そのユウキの右側にはエルザが歩いている…当然ユウキと右手を繋いでいる。
「まぁ、気にすんなよ相棒」
「気にならねぇ訳ねぇだろ!!」
「何だ、思春期か?」
「ぐぬぬ…」
何故、街の視察だけでこうなるのか…。
そう思うユウキの目に写るのは、踏み固められた道と、焼け焦げた左右の建物跡だった。
あれから六日経っていても、未だに焦げた匂いが漂っている。
さすがに火の手は無いが、焼け焦げた木材や、熱で破れた石を取り除く作業をしていた…ドワーフ達が。
『うん、ドワーフだ、マジのドワーフだ、凄い、ずんぐりむっくりのイメージ通りのドワーフ達だ。』
若干興奮気味のユウキに、心配そうな顔を向けるリリーナと、面白そうな顔を向けるエルザ。
そんな顔をされるような事だったか?と、二人を見上げるユウキ。
そんな三人に声をかけてくる人物がいた。
「なんじゃリリーナ、お前、子供を連れての散歩か?」
振り返るユウキの前には、太い腕に大きな木材を抱え上げたドワーフと、布切れのような物を一抱えしたエルフが立っていた。




