11話
「やっぱりリリーナなんだ………って事はココは城…」
「はいマスター、黒帝城です」
『ゴスッ』
リリーと名乗る女性の言葉にユウキは思わず地面へと頭突きをしてしまう。
「ま、マスター、大丈夫ですか?」
リリーナの焦った声が聞こえてくるがそれどころではなかった。
黒帝城、何その中二病真っしぐらな名は!!
この城は、領地持ちになると貰える初期の城だが、カラーリング等は数種類から選べる。
浮遊大陸を得たのがゲーム開始して四年目だったのだが、その時貰えた城に、当時ノリノリで付けた名が『黒帝城』。
「殴りたい………当時の自分を殴りたい」
「マスター?」
オロオロとするリリーナに気付く事も無く、ただただ落ち込むユウキだった。
十分後…
「ゴメン、取り乱した」
「いえ、そんな…」
大きく深呼吸をするとゆっくりと顔を上げ、改めて目の前の女性を見る。
ゲーム内ではアニメ調のCGだったが、この世界では本当の女性になっている。
肌は北欧系の白さと言う感じなのだろうか?日本人顔なのに白い肌、あれかな、北欧系じゃなくて北陸美人って言うんだっけ?
正直、最初見た時は誰だか分からなかったけど、顔の形とか妻に似てる上に『背中で自己主張してる真っ白い翼』が、あぁ〜この人、俺が作ったNPCなんじゃね?って思った。
その羽が、やけにピクピクと動いているのが気になるケド…何それ、ソワソワしてる感じなの?すっごく良い笑顔とのギャップに困惑するんだけど…
「んん………、改めて聞きたいんだけど…何処まで把握出来ているのか聞いても?」
「はいマスター、何でもお聞き下さい」
「そのマスターって何?」
「?マスターはマスターです」
思わず額に右手を当ててため息を付いてしまうが、ここで『マスターと呼ぶ理由を聞きたい』などとグダグダと問うても仕方がない…っと、少し荒っぽく考えるながらも今現在分かっている事を聞く。
「分かっている事………ですか?」
「うん、この世界の事、この場所、浮遊大陸の状態、そして俺の体の事、分かる範囲でいいから」
そう伝えると、右手を頬に当てながら考え込むリリーナ。
〜〜〜〜〜
このキング·オブ·キングオンライン開始から一年目に追加されたシステム『NPC作製』。
これは、自身の相棒ともいうべき存在を創れるというものだ。
新規プレイヤーやソロ活動、少数グループプレイヤー等からは中々好評だった。
ただし一部のプレイヤー、高レベルプレイヤーやMMOガチ勢と呼ばれる人達からはブーイングの嵐だった。
曰く『他のプレイヤーを誘えないヤツは去れ』『MMOでソロプレイするヤツは据え置きゲームでもやってろ』と言う暴言まで飛び交う程だ。
この暴言が某ネット掲示板内で広がった為、ゲーム内でのPKやMPKが横行する程の大問題になった。
これには運営も問題と考え、NPCシステムの一部見直しが入る事になった。
見直し内容はと言うと、NPCの最大レベルの設定だ。
このゲーム内では、開始から八年間でプレイヤーのレベル上限は千五百にまで上がってしまった。
これもまた某掲示板で、『某なんとかボールさん並みのレベルインフレ』などと揶揄されたものだ。
そんな状態の中で、NPCキャラの最高レベルは二百五十までとされた。
これは、あくまでも『初期のお助けキャラ』と言う位置付けの為のシステムとした運営側の苦肉の策だ。
この策が上手くいき、PKやMPK等の違反行為は減少する事となった。
とは言え、この時の騒動のせいで、一部プレイヤーグループ間には、深い遺恨を残す結果となり、少数のガチ勢VS同盟を結びまくったエンジョイ勢の大規模戦闘がアチラコチラで発生する事態になった。
能力で優るガチ勢と数の力のエンジョイ勢の戦いは、かなり不毛な戦いになっていたりするのだが、それはまた別の話。




