116話
首を鳴らしながら椅子に座るエルザだったが、一応痛かったらしく
「おい羽女、後で鍛錬場へ来やがれ。ぶっ飛ばしてやんよ」
「あらあら、あんな蹴り程度も躱せない角付きが何か言ってますわ」
何とも殺伐とした事を言ってやがります。
朝食時からなに殺気飛ばし合っているのかと小一時間…なんて地雷行為はしないけど、取り敢えず、黙って朝ご飯だぁ〜。
などと思いながら表情に出さないようユウキが気を付けていると、左右の椅子にそれぞれエルザとリリーナが座る。
昨日からそうなのだが、何故かユウキの両隣に座る。
いや、席はまだまだ空いてるんだから…などと言うもんなら、どんな目に合うやら分からない…おぉ怖い怖い。
そんな感じで、出来るだけ平静を装いながら朝食を食べる。
テーブルの上の大皿には、ふっくらしたパンが二個にベーコンが三枚、半分に切られたゆで卵には塩がかけてあり、その横には千切りキャベツが添えられている。
うん、アレだ、チラチラ見えてたけど、喫茶店の定番朝食メニューってヤツだコレ。
正直に言うと、異世界の食事、ナメてたよ。
アレだよアレ、異世界でのお約束って言ったら食事改善でしょって思ってたのに…まさか、こんなに美味しいとは思ってもみなかった。
うん、よくある転生モノの食事って、パサパサで岩のように固いパンを主人公が食べやすくする為、酵母を入れて発酵させ…って展開が鉄板でしょ?
アレ系の流れは王道で好きだし、異世界に来た以上、その展開をやれるかなぁ〜っと思ってた時期がありました。
その流れを期待しながら、初めての食事をしした所、美味しかった訳で…。
うん、パン柔らかくてほんのり甘いし、肉類はちゃんとした下味の付いたアッサリ風味、野菜も鮮度がしっかりしたモノだし、何故かあるマヨネーズ。
あ、あれ?王道ドコ行った?
物語的には、パンは固く、肉類は味も何も無くただ焼いただけ、野菜なんて鮮度簡潔無いって感じだと思ったのに…マヨネーズまであるし。
後、スープの方もしっかり作られてて、塩味だけって訳でもなく、ちゃんと出汁取ってある。
つまり、何が言いたいかと言うと、食事事情が普通だった。
いや、普通以上だった。
何処の高級料理だよって感じで。
その辺り気になったので聞いてみた所、それらの作り方を伝授した人達がいたらしい。
『え、マジ?誰それ?』って聞いたらリリーナが
「『ゴズ·タダヒサ』と『メズ·ヨシヒコ』って人ですよ、知りませんか?」
って、不思議そうに言われた。
ん、ゴズ·タダヒサ?メズ·ヨシヒコ?ごず?めず?牛頭…馬頭…『牛頭ただひさ』と『馬頭よしひこ』?!
いやいやこの二人、運営だよ。




