115話
そんなエルザが、部屋に備え付けてある大きな丸テーブルに、料理の乗ったトレイを置くと
「よし相棒、沢山食え」
やけに乱暴な言い方をした瞬間、フワリと白い布のような物がユウキの目の前を通り過ぎ、その向こう側から『ごきり』という音と『どすん』と言う鈍い音を立てる。
白い布が通り過ぎると、そこにはカーペット上に倒れ伏したエルザの姿があった。
顔面から倒れているエルザのすぐ後ろには、それはそれは、先程までとは違う良い笑顔のリリーナが立っていた。
この現在の状況を言うならば、『あ…、ありのまま、今起こった事を話すぜ!「おれの目の前にエルザが立っていたと思ったら、いつのまにか倒れていた」な…、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだったぜ』っと言う、所謂ポル○レフ状態だ。
もっとも、どうしてそうなったかは分かっているので、続きの『催眠術だの』と言う台詞は出てこない。
ってか、超スピードってのが近いだけだ。
簡単に言うなら、『エルザの持っていた朝食がテーブルの上に置かれた後、間髪入れずにリリーナの蹴りが後頭部に入った』だけだ。
それはもう、十分なスピードが乗っていた事で、エルザの後頭部を支点に、何処ぞの格闘漫画よろしく、空中で『グルリ』と半回転させて、カーペットの上に叩きつけたのだから。
ちなみに、ユウキの眼の前を塞いだ白い布は、リリーナの着ているワンピースのスカート部分が広がっただけの話だ。
一応言っておくが、中身は見えていない…見えたなんて言ったら、ユウキの身もどうなる事か。
「マスターなら見ても良いんですよ?」
「ナチュラルに心を読むな!!」
「読んでませんよ?そんな気がしただけですわ」
「…」
昨日から何度も同じやり取りをするせいで、何を考えているかが分かる…らしい?何それ怖い。
そんなやり取りをしてる間に、何故か復活していたエルザ。
「いや〜腹減った腹減った〜」
首筋をゴキゴキと鳴らしながらも椅子に付く辺り、どれだけ頑丈なのかと問い正したい…しないけど。
まぁ、ゲーム時のステータスがそのまま反映されているとしたら、恐らくトンデモナイ頑丈さ…この場合防御力かな?を持っているハズだ。
リリーナのゲーム上でのステータスだと、全ての能力値がバランス良く平均的だが、エルザの場合は違う。
よくある物理攻撃特化型だ。
力と体力の能力値が高く、魔力等がとてつもなく低いという、完璧な戦士職だ。
一応、簡単な魔法は使えるのだが、威力は精々火傷程度の火の玉が出せるくらい?
その特化した能力値のお陰か、リリーナの蹴り程度では、チョット痛い程度のようだ…恐ろしい。




