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110話

〜〜〜〜〜

同時刻、東の大国マーティーン神聖王国西部港町マールでは、二隻の大型帆船が喧騒に包まれていた。


「いつまで準備に手間取っているつもりだ!!さっさと出港しろ!!」

「何度も言わせんな。まだ十分な食料すら届いていない。海の上で死にたいのか?」


白銀に輝く鎧に汚れ一つ無い真っ白なマントを付けた青年が、日焼けした海の男に怒鳴り声を上げていた。


「き、貴様ぁ、私を誰だとおもっている、この海賊風情が!!」

「うるせえな、何度も聞かされなくても知ってるぜ、神殿のエリートさんよ。それと俺達は海賊じゃねえ、私掠船団船員だ、間違えんな!!」


神殿のエリートと言われた青年に対して、淡々と答える私掠船団の関係者。

そんな二人のやり取りを遠くから眺める鎧姿の中年男性。


「やれやれ、毎日毎日飽きないもんだね、神殿騎士団の連中は」

「他人事ではありませんよテレンス団長。我が方の騎士団でも、日に日に不満が溜まってきているようです」


テレンス団長と呼ばれた中年男性の呟きに、まだまだ年若い十代と思われる少年が答える。


「はぁ〜、そっちは君が抑えてくれよウィリアム君。一応副官なんだから」

「副長『見習い』ですよ団長。まあ、うちの連中なら酒場で酒でも飲ませていれば問題無いでしょうが…っと言いますか、団長がビシッと一言活を入れてくれればいいんですよ?分かってます?」


副官見習いのウィリアムの言葉を聞き流しながらも、港の騒ぎを眺めるテレンス。

桟橋付近での青年と海の男の言い合いも、未だに続いていた。


その周辺では、積荷を持った水夫達がオロオロとしている。

彼らは、西の海に落下したとされる巨大な岩の探索をする為に、神聖王国管理の私掠船の準備を待っている所だった。


だが、そこに色々と口出ししてきた者達がいた。

それが、目の前で言い合いをする銀色の鎧を着た『神殿騎士団』と神官達だ。


王国からの命令を受けたのは、テレンス達を中心とする西方聖騎士団のハズだったのだが、彼ら神殿騎士団は、国ではなく神殿から直接調査に向かうように言われた…らしい。

そこまでは良い、彼ら神殿騎士団が神官の命令の元動くのであれば。


聖騎士団は、国王と国を守る集団だが、彼ら神殿騎士団は、神殿と神官や信者を守る集団であり、神殿が雇う私兵だ。

そのため、本来であれば『騎士』を名乗る事は許されないハズなのだが、歴代国王が教団信者であった為、許されているのだった。


その事が、難関を通過してなった聖騎士団との軋轢を作っていた。

聖騎士になるには、心技体を鍛え上げて、やっと名乗れるものだ。

しかし、神殿騎士団は『腕の立つ信者であれば、簡単な試験で誰でもなれる』のだ。


そんな二つの組織の仲が良い訳が無い。

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