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99話


眉間に皺を寄せながらも、ジッと目を閉じてるユウキに、若干イラつきながらも質問を続ける女性。


「お〜い相棒、いつまでもだんまりしてないで答えてくれよ」

「もがもがぁ(なら離せ)」

「だから、何言ってんだか分かんねえって」


なんとか離れようと、空いてる左手をお腹の辺りに入れるが、ユウキがどれだけ力を入れてもびくももしない。

それどころか、この女性の腹筋の硬さに思わずビビってしまう。


ボディビルのように見た目の腹筋が割れている訳ではないが、その引き締まった腹筋に『これヤバい、力量的な意味で』と、若干失礼な事を考えてるユウキ。


「なぁなぁって相棒、聞いてる?ってか、聞こえてる?なぁって」

「もがぁ(うっせぇ)!!」


喋りたくても喋れない状態で答えを求められても、どうすれば良いのかと思うユウキだったが、そこに一筋の光りが表れた。

ユウキの背後のシーツが動き、何かが起き上がってくる。


「ふぁ〜あ、おはよう…ございます」

「おうリリーナ、やっと起きたのかい?遅いお目覚めってヤツかよ。良い身分だなおい?」

「うぬぬぬぬぬぅ〜…Zzz」

「寝なおすな!!ってか、それ何語だよ?!」


丁度ユウキの後ろで、上半身を起こしたリリーナだったが、目を数回パチパチと開け閉めすると、そのまま半目になりながらユウキに寄りかかるように体を倒してくる。

ユウキの背中側に体を預け、左肩上に顎を乗せる。


「うふふ…マスタぁーおはようございますぅ〜」

「もがぁー(何だとぉ)?!」


そして、真っ赤な顔で大混乱に陥るユウキ。

それはそうだろう、何しろ『前後を柔らかい何か』に挟まれているのだから。


そこはそれ、一応既婚者のユウキ、柔らかい何かが何なのか分かる訳で…頭の中では『凄く…おっきい…です』と、本来の意味とは真逆の使い方をする程混乱していたりする。

そして、一筋の光に導かれ、アッサリと意識を手放す…鼻血を出しながら。


『また気絶…かよ…巫山戯んな…よ…コンチクショーめ…』



〜〜〜〜〜


「おい相棒、しっかりしろ!!」


そう言いながら、必死にユウキを揺らす褐色の女性。

その焦った声にやっと眠気を飛ばしたリリーナが声を掛けてくる。


「ちょっとエルザ、マスターに何て事をしているの?!」

「ち、違ぇよ!!ワタシは何もしてねぇ!!相棒が勝手に気を失って」

「マスター、血が出てるじゃないの。何て事を」

「だから違えって!!」


『エルザ·アクルックス』

この浮遊大陸にて、ユウキを守る十三将の一人であり、戦闘力に優れた有角族だ。

鼻血を出しながら気絶したユウキを巡って、リリーナと取り合いする姿は、とても十三将一の戦闘能力を持っているとは思えないのだった。


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