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第八十四話 高橋悠里はマスクケースを作ろうと思い立つ

悠里は晩ご飯を食べ終えて自分の分の食器を洗い、歯を磨いてから自室に戻る。


「先輩から返信来てるかなあ……」


返信がなくてもがっかりしないと三回自分に言い聞かせてから、悠里は机の上に置いたスマホを手に取る。

新着メッセージが二件。要と圭だ。


「先輩から返信来てる……っ」


悠里はスマホを胸に抱いて深呼吸をした後、意を決して要からの返信を確認する。



返信ありがとう。

サックス一緒に吹けたら楽しそうだから顧問の矢上先生に楽器を持ち出していいか聞いてみたんだけど、コロナ禍だから公園とかで吹くのはまずいって止められた。

でも、二人だけなら明日の午前中に学校でサックス吹いてもいいって。高橋さんは予定空いてる?



要からの返信を読み終えた悠里は歓喜した。

明日も先輩に会える……!!

すぐに返信しよう。悠里は『明日、予定空いてます!! 時間はいつでも大丈夫です』と要にメッセージを送った。


「すごい。今日いちにちだけでいっぱい先輩とメッセージのやり取りしちゃった」


悠里は要からのメッセージを何度も読み返して、頬を緩めた。


「そうだ。圭くんからもメッセージ来てたんだ」


悠里は圭からのメッセージを確認した。



ゲーム内時間に合わせてプレイするのは無理だから、吹っ切って自由に遊べば?



「それが嫌だから相談したのに……っ」


でも、圭の言う通りかもしれない。家族の目を気にして遠慮していたらゲーム内借金完済など夢のまた夢だ。

悠里がため息を吐いたその時、要からの返信が来た。

悠里の沈んだ気持ちが一気に浮上する。要からのメッセージを確認した。


「『明日の10時に家まで迎えに行くね。牧高食堂に寄って昼飯買って行こう。都合が悪くなったらメッセージ送って』」


悠里は要のメッセージを声に出して読む。

先輩が、明日迎えに来てくれる……。


「『それからアルカディアオンラインの申し込みをしたよ。ゲーム機器が来たら知らせるから一緒に遊ぼう』」


要と『アルカディアオンライン』で遊べる。……ゲームでも会える。

悠里は要にメッセージを書く。



明日の10時ですね。待ってます。牧高食堂のおすすめメニュー、先輩に教えますね。

『アルカディアオンライン』で一緒に遊ぶのも楽しみです……!!



何度も自分が書いたメッセージを読み直した後、悠里は要にメッセージを送信した。


「明日も先輩に会える。すごい」


学校に行くから、服装は制服。今日のように悩まなくていいので少し安心だ。

今日買った楽譜を忘れずに持って行かなくちゃ。通学鞄に楽譜とお財布を入れておこう。

悠里が楽譜と財布とハンカチ、それから携帯用のアルコール消毒液を通学鞄に入れた直後、部屋のドアが開いた。

入って来たのは父親だ。


「悠里。風呂が空いたぞ」


「うん。わかった」


父親は長居せずにすぐに部屋を出て行く。

悠里はクローゼットからパジャマを出して浴室に向かった。


お風呂から上がって、洗面所で髪を乾かしながら悠里はフローラ・カフェにあったマスクケースを作ってみようと思い立つ。

明日、学校で牧高食堂のテイクアウトメニューを食べる時に使えると考えたのだ。

悠里はいつも、給食を食べる時にはポケットティッシュを一枚敷いてマスクを置き、その上にもう一枚ティッシュをかぶせている。

この方法は、小学校六年生の時の担任の先生から教わった。

でも、ティッシュ二枚でマスクを挟むより、紙のマスクケースにマスクを入れる方が清潔な気がする。


髪を乾かし終えた悠里は自室に戻り、スマホでフローラ・カフェの公式サイトを見た。


「マスクケースの作り方、あった」


まずは折り紙を用意する必要がある。折り紙がなければ包装紙を適当な大きさに切って使うと書いてある。

祖母は包装紙を綺麗に畳んでとっておいているはずだ。

今の時間なら祖母はたぶん、リビングでニュースを見ている。

悠里は自室を出てリビングに向かった。


リビングには祖母と母親がいた。二人、ソファーに並んでニュースを見ている。

母親は片手におせんべいを持っていた。


「お母さん。晩ご飯を食べた後におせんべい食べると太るよ」


「おいしいものは脂肪に変わる運命なのよ。お母さんはその運命を受け入れるわ」


母親はそう言って、おせんべいを豪快に食べた。

祖母は困った顔でそんな母親を見つめている。


「お祖母ちゃん。包装紙ってある? マスクケースを作りたいからちょうだい」


「いいわよ」


祖母は立ち上がり、サイドボードのガラス戸棚から包装紙をしまっている箱を取り出す。


「いつか使うと取っておいても絶対に使う機会は来ないと片づけ名人たちに言われ続けた包装紙が日の目を見るのね……っ」


母親がおせんべいを食べ終えて言う。


「マスクケースっていうのは、どういうものなの?」


包装紙が入った箱を悠里に渡しながら祖母が尋ねる。


「今日、吹奏楽部の先輩と一緒にフローラ・カフェに行ったんだけどね、そこに紙で出来たマスクケースがあったの。マスクを箱に入れて蓋をすると清潔でしょ? 使い終わったら捨てればいいんだよ」


「それは便利ね。私も作りたいわ」


「じゃあ、お祖母ちゃんも一緒に作ろうよ」


「面白そうね。私も作るわ」


母親も話に乗って来た。


「作り方見ながらじゃないとわからないから、スマホ取ってくる。ちょっと待ってて」


悠里はリビングを出て自室に向かった。


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