第七百三十五話 マリー・エドワーズは土を入れた木箱を持ち上げられない
錬金術師ギルドで支給された青いローブを羽織ったマリーと、マリーのテイムモンスター真珠は錬金塔に足を踏み入れた。
マリーはアイテムボックスから錬金術師ギルドに登録した時に貰った鍵を取り出し、その鍵を使って錬金塔の中にある作業室の扉を開け、それから真珠に視線を向けて口を開いた。
「真珠、作業室に入ろう」
マリーは真珠を促して作業室の中に入る。
真珠は尻尾を振りながらマリーの後に続いた。
レンガ造りの部屋の中央には両側に取っ手がついた、巨大な陶器の鍋のようなものが置かれている。
マリーは錬金窯を指さして口を開いた。
「真珠。錬金窯、あった!!」
「わんわんわわ、わっわ!!」
マリーと真珠は作業室に鎮座している錬金窯を見て盛り上がる。
真珠と一緒にひとしきり盛り上がった後、マリーは錬金をするための作業に入った。
この前、マーキースが作っていた素焼きのツボを作りたい。
「えっと、まずは土を入れた木箱をアイテムボックスから取り出して……」
マリーはそう言いながらステータス画面を出現させてアイテムボックスから土を入れた木箱を取り出す。
真珠は尻尾を振り、わくわくしながら自分たちが頑張って土を入れた木箱を見つめる。
「それで、木箱の土をざーっと錬金窯に入れて……」
マリーはアイテムボックスから取り出した直後、宙に浮いている木箱を小さな手で持とうとした。
「うっ。重い……っ」
マリーは宙に浮いている木箱から手を離した。
土が入った木箱が床に落下する。
「これ……私、動かせない……」
「わうー。くぅん……」
真珠はマリーと土が入った木箱を見つめてしゅんとする。
勢いよく振っていた真珠の尻尾は、だらりと下がった。
「スキルポイントをSTR値に振ればいける……? でもSTR値、いくつあればこの木箱を持ち上げて、錬金窯に土をざーって入れられるんだろう?」
「くぅん……」
「マーキースにSTR値今、どれくらいの数値なのかメッセージで聞いてみようかな。真珠は作業室の中を探検しながらちょっと待っててね」
「わんっ」
真珠はマリーの言葉に肯き、作業室を見回す。
マリーはマーキースにメッセージを書き始めた。
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マーキース。今STR値、いくつか教えてもらってもいい?
私、この前、みんなで頑張って木箱に入れた土を錬金窯に入れようと思ったんだけど木箱が重くて持ち上がらなかったの……。
私の今のSTR値は6です。
返信を待ってるね。
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マリーはマーキースへのメッセージを書き終えて送信した。
光月3日 早朝(1時57分)=5月26日 17:57




