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第二百七十話 高橋悠里は憧れの先輩とお揃いの単語帳を買い、単語帳の使い方を聞いてから彼と手を繋ぐ

悠里と要は駅ビルの一階、食料品売り場をのんびりと見て歩きながら時間を潰した後、エスカレーターに乗って二階の雑貨店に向かった。


「エスカレーターに乗ると『アルカディアオンライン』の動く階段を思い出しちゃいます」


「わかる。『上りON』とかちょっと言いたくなる」


「ここに真珠もいたらきっと楽しいのになあ。あっ。私、要先輩と真珠のモンスター討伐の話を聞きたいですっ」


「真珠くんはすごく頑張ってウッキーモンキーと戦ってたよ。俺は護衛騎士が弱らせたウッキーモンキーにとどめを刺してレベル上げしてたから、なんかズルをしている気分になったよ」


要は寄生プレイ……貴人プレイをしていたようだ。

悠里は以前、パーティーを組んだ時にイヴやアーシャ、クレムから教えてもらったことを要に伝えるために口を開く。


「要先輩。『アルカディアオンライン』では寄生プレイ……人に頼ってプレイすることは全然悪いことじゃないんですよっ。私も人に頼ってプレイをしても大丈夫って知らなくて、フレンドに教えてもらったんですけど。『アルカディアオンライン』は人を頼ったプレイヤーの数だけ、討伐数分、それ以外のパーティーメンバーのプレイヤー善行値が上がる仕様なんだそうですっ」


「そうなんだ。教えてくれてありがとう。悠里ちゃん」


要の主人公であるユリエルと一緒に戦ったのは、マリーのテイムモンスターの真珠とNPCの護衛騎士たちだ。

ユリエル以外にプレイヤーは誰ひとりとしていない。……だからユリエルの寄生プレイでプレイヤー善行値が上がる者は全くいない。

悠里の説明で、要が『周囲に全く利益が出ない寄生プレイをした』ということが明らかになったが、おそらく悠里は気づいていないのだろう。

『寄生プレイ』を『人に頼ってプレイ』と言い替えながら要に説明をする悠里を可愛いと思いながら彼女の話を聞く。


悠里と要は二階の雑貨店に到着した。

店内を見回すと『単語カード』が置いてあるコーナーがある。

悠里と要は『単語カード』が置いてあるコーナーに向かった。


「単語帳っていろいろあるんですねえ……」


悠里は『単語カード』のコーナーに並ぶ商品を見て、しみじみと呟く。

今まで、自分が単語帳を使うなんて考えたこともなかったので、『単語カード』が置いてあるコーナーで足を止め、商品を見たことがなかった。


「そうだね。単語帳アプリもあるけど、俺はアナログな紙の単語帳が使いやすくて好きなんだ。……これにしよう」


要は青い表紙の単語帳を手に取った。

要は物を買う時に迷わず即決するタイプなのかもしれないと思いながら、悠里も要が選んだものとは色違いのピンクの表紙の単語帳をそっと手に取る。


「あの、要先輩。私も先輩と……お揃いの、単語帳を……買ってもいいですか……?」


「うん。もちろん」


要が肯くと、悠里は嬉しくて笑顔になる。

マスク越しでも満面の笑みを浮かべているとわかった。要は悠里の頭を撫でたい衝動をこらえた。

子ども扱いをするのはよくない。悠里に『兄枠』に入れられて、恋愛対象外にされてしまうかもしれない。

悠里と要はそれぞれに単語帳を買い、買った単語帳をそれぞれの鞄に入れて雑貨店を出た。


駅ビルを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

悠里は要とお揃いの単語帳が鞄に入っているのを嬉しく思い、そして自分が単語帳の使い方をよく知らないことに気づいた。


「要先輩。あの、単語帳ってどうやって使うんですか……?」


使い方はあとでネットで調べればいいかとも思ったけれど、せっかく要と色違いでお揃いの単語帳を買ったのだから、使い方も要の真似をしたい。

悠里の問いかけに、要は少し考えて口を開いた。


「俺は、英単語だと、カードの表に英単語とアクセント記号を書いて、裏に英単語の意味を書いてる。それで、使う時は一つの単語を覚えるまでじっくり見るんじゃなくて、全部の英単語を一気に素早く見終えるようにしてるよ」


「一気に見るんですか? 覚えられなくても?」


「うん。ドラマのCMの間とか、晩ご飯を食べた後とか、ゲームで遊ぶ前とか、隙間時間に見るようにしてる。授業の合間の休み時間にも1セットは見るよ」


要の言葉を聞いて悠里は感動した。

悠里は授業の合間の休み時間も、昼休みも、勉強しようだなんて考えたことはなかった。

休み時間は休むもの!! 休み時間は遊ぶもの!! そう信じてきた……。

だが、明日から、いや、今日から生まれ変わろう。

家に帰ったらゲームで遊ぶ前に単語帳に英単語を頑張って書いて、一回最後まで見終えてからゲームで遊ぼう……!!


「要先輩。私も先輩に教えてもらった方法をやってみますね。教えてくれてありがとうございますっ」


「どういたしまして」


要はそう言いながら悠里に手を差し出す。

悠里は照れながら、要の手に自分の手を重ねた。要は悠里の手をそっと握る。

……要先輩と手を繋ぐのは、これで三回目。

要の手は悠里より大きくて、温かい。

もう外は暗くなってしまったけれど、でも、少しでも長く、二人で一緒にいられたらいいなあと思いながら悠里は要の横顔を見つめた。




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