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第二百六十九話 高橋悠里は憧れの先輩の苦悩に気づかず真子と楽しく乙女ゲームについて語り、フローラ・カフェ星ヶ浦駅前店を出る

「あの、私、今日のことをウェインに伝えようか迷ってるんですけど、要先輩と真子さんは伝えるのと伝えないの、どっちがいいと思いますか?」


「俺は伝えた方がいいと思う。個人的には、ウェインさんはリアルでもゲームでも一ノ瀬さんとの関係を絶った方がいい気がする」


要の言葉を聞きながら真子は買ってきた『フローラ・カフェラテ』を一口飲んでため息を吐く。


「ウチはウェインに文句を言いたい。すずにも悪いところはあったかもしれないけど、好きな人からデートに誘われたら誰だって舞い上がるでしょ? 断るならちゃんとすずにわかるように断るべきだったと思う」


要と真子の意見を聞いた悠里は自分の中で考えをまとめて、口を開いた。


「じゃあ、私が今日起きた事と、すずさんが言っていたこと、要先輩と真子さんの意見をウェインにメッセージで伝えますね」


「ごめんね。悠里ちゃん。面倒なことに巻き込んじゃって」


悠里に頭を下げながら真子が言う。

面倒なことに巻き込まれた。それは確かにそう思う。

でも、真子が悪いわけではないので悠里は首を横に振り、口を開いた。


「気にしないでください。困った時はお互い様ですっ」


「ありがとう。悠里ちゃん。ゲームだったら今、ウチらのプレイヤー善行値爆上がりだよねえ」


「ですね。これでプレイヤー善行値が上がらなかったらサポートAIさんにクレームを言います」


真子と笑い合う悠里を見つめながら要は『フローラ・ブレンドコーヒー』を飲む。

そしてウェインについて考えを巡らせた。

ウェインの性別は男で、悠里の身近にいる。身近にいるけれど、悠里にとって彼は恋愛対象ではないようだ。

要とよく似たグラフィックの主人公を選んだということは、おそらく要との面識は無いのだと思う。

要は、知り合いや男友達に似たグラフィックの主人公でゲームをプレイしようとは思わない。ウェインもきっと要と同じように考えると思う。

だからウェインは要の顔を知っている『吹奏楽部の部員ではない』だろう。

要は考えを巡らせながら、同時に、真子と悠里の会話に耳を傾ける。


「あのね。聞いて。悠里ちゃん。フレデリック様めっちゃ素敵だったんだよっ。本当、あのワールドクエストを作ってくれてありがとう」


「いえいえ。同じ乙女ゲーム好きとして、真子さんに喜んでもらえて嬉しいです」


乙女ゲーム好き?

悠里の言葉を聞いた要は母親が大画面のテレビでプレイしていたやたらと画面がキラキラしているゲームを思い浮かべる。

母親はゲームをプレイしながら『乙ゲー最高!!』と叫んでいた。要は引いた。

……アレか。アレが好きなのか。

告白とか……乙女ゲームっぽいアレな感じだと喜んでもらえるのだろうか。

……無理だ。キツすぎる。母親がボイス付きの乙女ゲームをプレイしていた時に何気なくセリフを聞いた時には寒気がした。

誰だよ。乙女ゲームのシナリオとか考えた奴……っ。


真子と悠里はパーティーと乙女ゲームの話で盛り上がり、要は告白のプランを乙女ゲーム仕様に近づけなければいけないのかとひそかに苦悩しながら時間が過ぎた。

真子がマフィンを食べ終え、それぞれの飲み物が空になり、解散しようということになる。

それぞれにマスクをしてゴミを捨て、フローラ・カフェを出たところで真子が悠里と要に笑顔を向けた。


「今日は楽しかった。ウチは今日、悠里ちゃんたちに会えてよかったって思うよ。デートの邪魔してごめんね」


「真子さんっ。私たちはデートとかじゃ……っ」


「気にしないでください。俺も楽しそうな悠里ちゃんを見られて楽しかったので」


「うわあ。惚気がすごい。こういう時に『リア充爆発しろ』って言うんだよね。きっと」


「今、俺と悠里ちゃんが爆発したら高確率で芝浦さんも爆発に巻き込まれると思います」


「『リア充爆発しろ』にそういう返しする人、初めて見た。じゃあ、ウチは行くね。バイバイ」


真子は悠里と要に手を振って、上りのエスカレーターに乗った。

悠里と要の行き先は二階にある雑貨店なのだが、二人で真子の姿が見えなくなるまで見送る。


「……二階の雑貨店で真子さんに会うとか、ないですよね?」


真子を見送った後、悠里が言うと要は少し考えて口を開いた。


「会ったらなんか気まずいね。一階で少し時間を潰してから二階に行く?」


「はいっ」


要と一緒にいられる時間が長くなったことが嬉しくて、悠里は笑顔で肯いた。


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