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第二百六十話 高橋悠里はサックスパートのメンバーにマスクケースを渡す

「高橋さん。どうかした?」


萌花と口喧嘩をしていた要が悠里の視線に気づき、口喧嘩をやめて問いかける。

要の優しい声音を聞いて、萌花が口喧嘩との落差に愕然とした顔をした。

悠里は要のために選んだマスクケースを手にして要に歩み寄り、口を開く。


「あのっ。私、マスクケースを作って持ってきたのでよかったら使ってもらえませんか?」


マスクケースを差し出して言う悠里に要は微笑んで肯き、マスクケースを受け取る。


「ありがとう。使わせてもらうね」


「あっ。それ、この前、高橋ちゃんが使ってたやつだよね」


「篠崎先輩の分も持ってきました。今、渡しますね」


「いいの? 嬉しい!! ありがとう!!」


「高橋。俺の分は?」


「相原くんの分もあるよ」


悠里は颯太の分をマスクケースを彼に渡し、それからマスクケースを二つ持って萌花の元に向かう。

要は机の上に置いていたマスクを悠里のマスクケースに入れて蓋をして、使っていたティッシュをゴミ箱に捨てに行った。


「あの。篠崎先輩、どうぞ」


「二つもくれるの? いいの?」


悠里が差し出した二つのマスクケースを見て萌花が首を傾げた。


「えっと、一つは佐々木先輩の分です。篠崎先輩から佐々木先輩に渡してもらってもいいですか?」


「それはいいけど……。美羽先輩は『リボンねこ』が好きだから喜ぶと思う」


「やっぱりそうなんですか。佐々木先輩、鞄に『リボンねこ』のキーホルダーをつけてたから、好きなのかなって思って……」


「高橋さんは優しいね」


ティッシュを捨て終えて戻ってきた要は悠里と萌花の会話を聞いて、言う。

悠里は要に優しいと言われて嬉しいけれど照れる……と思いながら首を横に振った。


「篠崎先輩。佐々木先輩って今日部活に来るんですか?」


颯太が自分のマスクを外し、悠里があげたマスクケースに入れながら萌花に尋ねる。

悠里は『佐々木先輩』という言葉を聞いて心が沈んだ。要は浮かない表情を浮かべる悠里を心配そうに見つめる。


「美羽先輩は授業でわからないところがあったから、先生に質問してから部活に来るって」


「へえ。佐々木先輩って勉強を頑張ってるんですね」


「美羽先輩は三年生で、来年は高校受験があるからね」


萌花と颯太の会話を聞きながら、悠里は自分のマスクを外して自分用のマスクケースに入れて蓋をする。

そしてサックスケースからストラップを出して首に掛け、アルトサックス用のマウスピースにリードをセットしてリガチャーのネジを締めた。

悠里を心配そうに見つめていた要は、アルトサックスを吹き始める。

……美羽は、結局その日、部活には来なかった。




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