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第二百二話 マリー・エドワーズはウォーレン商会の会頭との問答のさなか、強制ログアウトする

レーン卿は鑑定を終えてマリーに視線を向けた。

マリーと、マリーの膝の上にいる真珠は緊張しながらレーン卿の言葉を待つ。


「鑑定結果ですが、これは『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書です。本物であることは保証します。偽造された形跡はない」


「ええ。ええ。もちろんです。友人から買い取った土地と建物の権利書ですからね。丁寧に扱いますとも」


ウォーレン商会の会頭は笑みを浮かべて言う。マリーは祖父を騙したその口で、祖父と自分が友人だと言うウォーレン商会の会頭に憎しみを抱いた。

真珠はマリーの怒りを感じ取り、ウォーレン商会の会頭に向かって唸っている。

ユリエルはマリーを宥めるために彼女の背中を優しく撫で、それから真珠の頭を優しく撫でた。


「こちらの土地と建物の権利書は『孫娘の離魂病を治す司教様を紹介する対価として』私どもが譲り受けたものでして。はい。実際、私どもがお連れした司教様の『リザレクション』の効果があってそちらのお嬢さんは快癒したと聞いておりましたのです。ええ」


「嘘です!! ぼったくり聖職者が嘘を吐いたの!! 私、目が覚めた時ちゃんと『自分で目覚めました。司教様のおかげじゃないです』って言ったのに!!」


マリーの叫びを聞いたウォーレン商会の会頭は笑みを深めて柏手をうつ。

マリーと真珠は柏手にびっくりしてびくりと身体を震わせ、ユリエルはウォーレン商会の会頭の言葉に注意を払う。

情報屋はレーン卿から手渡された『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書の隅々まで目を通し、レーン卿は思索に沈む。


「まさに!! 今、お嬢さんが言った通り!! 『司教様が嘘を吐いた』のです!! 私どもも被害者なのです……っ!!」


マリーは祖父を騙した張本人と思われる男が、自分も被害者だと言い出したことに驚き、声を失う。


「ではあなたは、あなたが手配した司教がすべて悪いと言うのか?」


ユリエルが声に怒りを滲ませて言う。

ユリエルの言葉にウォーレン商会の会頭は大仰に頭を横に振った。


「いいえ!! いいえ。違います。そのお嬢さんが目覚めた時は司教様も私どもも『リザレクションが離魂病を治す治療法である』と信じていたのです。はい。でも、そのお嬢さん以外の離魂病患者数人はリザレクションでは目覚めず、その時に私どもは思ったのです。『リザレクションは本当に離魂病を治す治療法であるのだろうか?』と……」


「でも、それでもあなたが騙した私のお祖父ちゃんに謝りもせず『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を返そうとはしなかったですよね……!!」


「うううううううううううう……っ!!」


マリーと真珠がウォーレン商会の会頭に対して怒りの声をあげた。ウォーレン商会の会頭は項垂れてため息を吐く。


「『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を返しに行く予定だったのですよ。ですが、私の嫡男が離魂病にかかってしまって……」


ウォーレン商会の会頭の言葉を遮断するように激しく扉を叩く音が響いた。

ウォーレン商会の会頭は舌打ちをして扉を睨みつける。

護衛騎士の一人、黒髪の男が扉を開けると焦った顔をした中年女がいた。

中年女は着古したエプロンを身に着けている。ウォーレン商会の使用人かもしれないと情報屋は思った。


「あのっ。旦那様にお伝えください。坊ちゃまが、坊ちゃまがお目覚めになられて、でもっ。わけのわからないことを口走り、次々に部屋の物を消失させてしまって……っ。あたしたちではどうしたらいいか……っ」


女の言葉に、マリーたちプレイヤーは『ロールプレイをしないタイプのプレイヤーが欲望に任せてアイテムボックスにアイテムを収納しまくっている』と推察した。

でも、誰一人その推察を口にすることなく押し黙る。


「今、大事な来客中だ。邪魔をするな」


ウォーレン商会の会頭が女に、にべもなく言ったその時、マリーの耳にサポートAIの声が響く。


「ログイン制限時間になりました。強制ログアウトを実行します」


その言葉を聞いた直後、マリーの意識は暗転した。



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