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第二百一話 マリー・エドワーズたちはウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンと対峙する

「それにしてもウォーレン商会の会頭は部屋を出て行ったきり、戻ってきませんね……」


ユリエルは部屋の扉に視線を向けて、憂い顔でため息を吐く。

マリーは新たな客であるマリーたちがやってきたのに、従業員がお茶を持ってくることすらないのが気になった。


「まさか、売り上げとか持ってウォーレン商会のみんなで逃げるつもりとか……?」


マリーがおそろしい可能性を口にしたその時、扉をノックする音がした。

扉の両脇に立っていた護衛騎士が警戒しながら扉を開ける。

マリーは入室しようとしている小太りの男を見つめた。ユリエルはマリーの耳元に顔を寄せて囁く。


「彼がウォーレン商会の会頭、アーウィン・ウォーレンだよ」


マリーはユリエルの顔が近い羞恥より、大事な家族から大事な家と土地を奪おうとしている悪党への怒りを強く感じて、敵であるウォーレン商会の会頭、アーウィン・ウォーレンを睨みつけた。

ウォーレン商会の会頭であるアーウィン・ウォーレンは仕立ての良い服を着た、小太りで冴えない容姿の中年男だった。

護衛騎士の簡易的な身体検査を受けて、室内に入ってくる。彼は手に箱を持っていた。


「大変お待たせいたしました。実は、嫡男が病に倒れたと知らせが入りまして。ええ。中座したことをお詫びいたします」


ウォーレン商会の会頭は新たに増えた客であるマリーと真珠、情報屋には見向きもせず、ユリエルとレーン卿だけに視線を向けて頭を下げる。


「鑑定師ギルドの副ギルドマスター様のご用件は、私を『鑑定』することでいらっしゃるのですよね。ええ。ですが『人を鑑定すること』が許されるのは鑑定師ギルドへの依頼人か『罪人の可能性があり、領主の命令書がある場合』でございますよね。もちろん、犯罪に巻き込まれた場合は緊急の場合はやむを得ず『鑑定』を使うことが許されているということは浅学な私も存じ上げておりますよ。はい」


ウォーレン商会の会頭は冴えない容姿とはうらはらの、聞きやすい声音で一気に言って微笑んだ。


「領主の命令書なら所持しています。あなたにも見せたはずですが……」


着席せず、立ったまま話を進めるウォーレン商会の会頭に冷ややかな目を向けてレーン卿が言う。

マリーたちはウォーレン商会の会頭とレーン卿のやり取りを、息を詰めて見守った。


「ええ。ええ。拝見しましたとも。我々が『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を奪い取ったという詐欺行為を疑われているというのですよね。はい。ですがそれは誤解なのです」


「誤解じゃないもんっ!! ウォーレン商会がお祖父ちゃんを騙したんだよ……っ!!」


言い逃れようとしているウォーレン商会の会頭が憎らしくて、思わずマリーは叫ぶ。

ウォーレン商会の会頭は怒りの表情を浮かべたマリーに視線を向けて……微笑んだ。


「ああ。あなたはマークスの孫娘ですね。『離魂病』から快復して本当によかったです。はい。私は若い頃、狩人ギルドのギルド員をしていまして、マークスとは一緒にパーティーを組んだこともありまして」


ウォーレン商会の会頭はそう言いながら持っていた箱をテーブルに置き、箱の蓋を開けた。

箱の中には権利書のようなものが入っている。

『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書かもしれないが、マリーにはそれが『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書であることも、本物であるかどうかもわからない。

もしかしたら『銀のうさぎ亭』とは全然関係のないものかもしれないし、偽の書類を箱に入れてきたのかもしれない。

ウォーレン商会の会頭は話を続ける。


「その縁で、マークスの孫娘の『離魂病』を快復させたいと思った次第で。ええ。ですが私も商人。慈善事業をするわけにもいかず、対価としてこちらの土地と建物の権利書を頂戴したというわけです。はい」


「箱の中のものを、鑑定させていただいても?」


「レーン卿。もちろんですとも。どうぞ、存分に鑑定なさってください」


ウォーレン商会の会頭は箱の中のものをレーン卿に手渡した。


「そうさせていただきます。鑑定」


レーン卿は渡されたものをじっと見つめて鑑定を始めた。

マリーと真珠は息を詰めてレーン卿の様子を見守る。情報屋は口の中で小さく「鑑定」と呟いて、こっそり箱の中に入っていたものを鑑定し始めた。

ユリエルと護衛騎士たちはウォーレン商会の会頭の行動に注視する。

ウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンは奇妙な笑みを浮かべてレーン卿を見守っている。



若葉月22日 昼(3時14分)=5月8日 18:14


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