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第百三十一話 マリー・エドワーズは情報屋から依頼の話を聞く

フローラ・カフェ港町アヴィラ支店に続く銀色の扉の中央には、青い水晶が埋め込まれている。

マリーは背伸びをして青い水晶に左腕の不滅の腕輪をかざす。距離があっても水晶は反応して扉が開いた。

カウンターで情報屋の『ルーム』に行く手続きをしてもらい、現れた階段を動かして下に向かう。

マリーと真珠はルームに続く扉に到着した。

マリーは正面の壁にある扉を開け、真珠はマリーの後に続く。


部屋の主の情報屋がマリーと真珠を笑顔で出迎える。

マリーと真珠は情報屋に『銀のうさぎ亭』に送ってもらったお礼を言い、彼にすすめられたソファーに座った。それから、マリーは真珠を膝の上に抱っこする。

情報屋はマリーと真珠の向かい側に腰を下ろして口を開いた。


「マリーさんへの依頼の話をさせてください」


情報屋の言葉を聞いたマリーと真珠は、背筋を伸ばして居住まいを糺す。


「前回言ったことの重複になりますが、依頼を受けて頂ければ前金として金貨20枚をお支払いします」


「あの、鑑定結果の対価として銀貨3枚もらえるんですよね? それは今、もらってもいいですか?」


「わかりました。お渡ししますね」


マリーは情報屋から銀貨3枚を受け取ってアイテムボックスに収納する。

それからマリーは真珠と視線を合わせて微笑んだ。

いい調子だ。この調子で頑張ろう……!!


「マリーさんへの依頼内容ですが……」


情報屋はアイテムボックスからビー玉を取り出してテーブルに置いた。


「これは何も入っていないガラス玉です」


情報屋がテーブルに置いたのは『錬金を失敗した時にできるガラス玉。錬金素材にはならない』という説明文だったのになぜかアイテムのランクが『Aランク』だった不可思議なガラス玉だ。


「このガラス玉を鑑定師ギルドの副ギルドマスターに鑑定してもらいたいのです」


「私がこのガラス玉をレーン卿に鑑定してもらいに行けばいいということですか?」


「そうです」


「どうして情報屋さんが頼みに行かないんですか? あっ。情報料を払わなくちゃいけないなら、話さなくていいですっ」


「依頼に関わることですので、無料でお話しますよ」


情報屋の言葉を聞いたマリーと真珠は安堵の吐息をついた。


「鑑定師ギルドは領主館にあるのですが」


「えっ!? そうなんですか!? 知らなかった……っ」


マリーは巨大魔方陣を起動させるために領主館に入ったことがあるが、館の中に鑑定師ギルドがあるとは思わなかった。


「鑑定師ギルドは領主館にある書庫の管理を任されているようです。港町アヴィラは1000年前に高台の領主館以外は、大波に呑まれて全壊してしまったことがあって、それからは重要な資料や貴重な本は全て領主館に集められるようになったという話です」


港町アヴィラが1000年前に高台の領主館以外は大波に呑まれて全壊したという話は、ウェインから聞いたことがある。

水に呑まれたのはNPCの命だけではなく、さまざまなものが失われたのだとマリーはしんみりした。

ワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』では港町アヴィラを守り抜くことができて本当によかった。


「私はワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』のクエスト報酬で『港町アヴィラ領主の感謝状』を入手したので領主館に入ることは簡単にできたのですが」


「その『港町アヴィラ領主の感謝状』を私も持ってます!!」


マリーは右手をあげて主張した。マリーの膝の上の真珠が寂しそうに俯く。

真珠は『港町アヴィラ領主の感謝状』を持っていない。

マリーは寂しそうな真珠に気づいて彼の頭を撫でた。


「真珠は私のテイムモンスターだから、一緒に領主館に入れるよ。大丈夫」


「そうですね。マリーさんと真珠くんは『パーティーを組んでいる』状態ですので問題なく入れると思います」


なにそれ!! 知らない情報……!!

マリーと真珠は目を丸くした。


「私と真珠がパーティーを組んでいる状態というのは……?」


情報屋に料金を請求されたらどうしようと不安に思いながら、マリーはおそるおそる問いかける。


「マリーさんはまだ、パーティーを組んだことがないようですね」


「ないです。まだ一回も戦ったことがないです」


「くぅん……」


モンスター討伐に行こうと思って武器を買う予定だったが、どこにあるのかもわからない武器屋を探しながら『歩けばきっとたどり着けるだろう』というRPGあるあるの精神で適当に歩いた結果、プレイヤーが集まる広場の露店にたどりついて、結局買ったのは武器ではなくビー玉だった。

マリーと真珠はいつ、戦うことができるのだろうか……。


「『フレンド機能』の『フレンド設定』でパーティー申請ができるのですが、テイムモンスターがいるプレイヤーは、プレイヤーとテイムモンスターがパーティーメンバーになります」


「やった!! 私と真珠は同じパーティーだよ。嬉しいね」


「わうぅうわ!!」


「『アルカディアオンライン』ではパーティー人数の上限がないので、テイムモンスターを多く連れているプレイヤーも、問題なくパーティーに入れます」


「そうなんですか。平和でいいですね」


「ですが、モンスターの討伐経験値はパーティー人数で均等に分けられますので種族レベルを上げたい場合は少人数パーティーがおすすめです」


「教えてくれてありがとうございます」


「わぅわううわううわ」


教えてもらえてありがたいけれど、情報料は支払わない!!

マリーには一千万リズの借金返済という使命があるのだ。


「話が逸れてしまいました。話を元に戻しますね」


どうやら情報料の請求はないようだ。マリーは心の中でガッツポーズをした。


「『港町アヴィラ領主の感謝状』を使い、領主館に入って鑑定師ギルドに行ったのです。そして『鑑定師ギルドの副ギルドマスターに鑑定してもらいたいものがある』と依頼をしたのですが、その際に私自身の『鑑定』をしなければならないと言われてしまいまして」


「してもらったらいいんじゃないですか? 鑑定」


「くぅん?」


「私は自分のスキルを鑑定師ギルドに知られたくないのです。特に鑑定スキルを持っているということは」


「隠ぺいスキルとかないんですか?」


「検索をしてみたのですが、今のところ該当するスキルはないようです」


「だったら、情報屋さんがスキルを創造すればいいんじゃないですか?」


マリーの提案に情報屋は目を丸くした。


「確かにそうですね。私は、今までスキル創造が不発ばかりだったので自分がスキルを創造することが頭にありませんでした。大変貴重なアドバイスをありがとうございます」


「役に立ててよかったです。そして、誠意をお金に換算していただくのは大歓迎です!!」


キラキラと目を輝かせて言うマリーに苦笑しながら、情報屋は銀貨1枚を差し出す。

マリーは情報屋から銀貨1枚を受け取ってアイテムボックスに収納した。

マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価 銀貨4枚


若葉月14日 夜(5時23分)=5月6日 20:23

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