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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第三章 格の違い編
48/55

作戦

 


 緊張の糸が切れてしまい、気絶してしまった魔剣の少年を連れて、ぼくの領地に戻る。


 騎士団用の寮が出来るまでの仮住居の一室に寝かせると、魔剣の少年を見舞いに来た子供たちに任せてぼくは自室に戻った。


 オルトが派遣した使用人と、毎日子供たちの一人が世話をするようだ。


 どうやらしばらく起きることはないらしい。


 体のどこかが悪いわけではなく、極度のストレスや睡眠不足が原因らしい。


「これで一人片付いたな」


 ぼくはオルトが持ってきた決算書類に、ぺったんぺったんとハンコを押しながら呟く。


「そうね、とはいってもあと十四人いるけど」


「……」


 何で白い子はここにいるの?


 ここはぼくの部屋なのに。


「はい、ですが休憩する暇はないんですけどね。既にいくつか報告が上がっています。王都西域にあるリュート村で幽霊の目撃証言があるそうです。二十四件も」


「ああ」


 それは確実にイリスだろう。


 幽霊が見えるという原理はよくわからないが、色々な要素を計算すると、イリスの能力が他者に影響していると考えるべきだ。


「それと、子供たちだけの冒険者パーティーがメテオ国でも有数の高難度ダンジョン、竜の洞穴に入ったという情報があります」


 それは茶髪の少年だろう。


 白い子たちの話を総合するとダンジョンのボスを次の食事に選んだのだろうな。


「どうしますか? ちなみに彼らのパーティーの子供の一人から救難要請が出ています。なんでもパーティー全体で最奥のボスと戦ってかなりの傷を負ってしまったらしいです。助けに来てほしいそうですよ」


「面倒だな。だが、優先順位は決まっている。ぼくは村の方に行くからオルトはダンジョンに行ってくれ」


「その理由は?」


「イリスの方は一般人にまで影響が出ている。子供たちは最悪、全滅しても大した影響がない」


「なぜ、おれがダンジョンの方に?」


「オルトだとイリスの幽霊を見るという能力がもし危険だった時、殺す以外の解決法がないだろう?」


「確かに。おれにはクルのように未知の物を作る能力はありませんからね。ですが、おれは全体の指揮をとります、王都のこともクルの領地のことも誰かが見てなければなりませんから。だから、アンナに頼みます」


「私?」


「アンナは強いだろう? ヒイラギたちを助けてきてくれないか」


「断るわ。私はクルギスについていく。これは譲れないわね」


「絶対か?」


「絶対よ。でも確かにヒイラギのほうも無視はできないわね。……そうね、ミュウたち四人に頼みましょう」


「大丈夫か?」


「流石に四人もいれば、倒せなくても逃げてこれるでしょう。大丈夫よ、ああ見えてミュウは強いし頼りになるわ」


「じゃあ、任せるよ。ぼくらはもう少しハンコを押してから出発するから、今すぐに行ってくれと伝えておいてくれ」


「わかったわ」


 白い子は、伝言を伝えに部屋を出ていった。


「なぜすぐに行かないんですか?」


「行かなければならない気持ちと面倒なので行きたくない気持ちで戦っているんだ。十分もすればやる気になるから」


 心を決めるために無心でぺったんぺったん押していると複数の足音が聞こえ、部屋に入ってきた。


「じゃあ、行ってくるねクルギス君」


 笑顔の子がわざわざ出発の挨拶に来たらしい。


「ああ、早くいけ」


「あたしたちもやられちゃったら助けてね?」


「断る。一目見て強そうだったら戦わずに逃げてこい」


「戦わなかったらヒイラギ君たちを助けることが出来ないならどうするの?」


「見捨てて帰ってこい。無理なことはしなくてもいい」


「同じ村の仲間を見捨てられないよ!」


「お前たちがどう思っているのかは知らないが、今のところ茶髪の子たちはぼくの味方じゃない。どうしても助けたい理由もない。おまえたちが無理をしてでも助けたいというのなら自己責任で好きにすればいい。もし助けられずに全滅しても、助けが間に合わなかったってことにしておくから」


「わかったよ!あたしは絶対に助けるからね!」


 笑顔の子は、怒りを含ませた捨て台詞を吐きながら他の子供を連れて出て行った。


「クルギス、ミュウは無理をすると思うわ」


「そりゃそうだろう」


 あまりにもわかりきっている。


「放っておいていいの?」


「自己責任なら好きにすればいいさ。どんな結末になろうともね」


「クルギスはそんなに責任を取りたくないの?私は人の命というものにはある程度の価値があると思うわよ」


「そうだね。こう見えてぼくも命は価値があると思う人間だよ。それを助けることが出来るのならいくらでも責任をとっていいぐらいには思っている」


 それは事実だ。



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