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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第三章 格の違い編
35/55

未知の自由より安全な支配を

 


 手続きはオルトに丸投げした。


 これで重荷もなくなったことだし、いつものように仕事をするとしよう。


 次の日の昼。手続きが終わったことを、子供たちに伝えに行った。


「はい、これで君たちは自由だ。好きな道を歩くといい。でもいいかい? 君たちは強いけど、この国で犯罪行為をしたら極端にひどい目にあわせるからね。それを忘れないように」


「けっ! どんな目にあうっていうんだよ!」


「罪の重さによっては、その場で死刑」


 赤毛の少年は、蒼い顔をして引いてしまう。


「嘘じゃないからね。じゃあ、あとは好きにするように」


「待って!」


 白い子がぼくの袖を引いてくる。


「なに?」


「クルギスに相談をしたい子が何人かいるの。時間を頂戴」


 茶髪の子などを筆頭に、合計で十五人の子供がその場で部屋から出て行った。


 このぐらいあっさり出て行ってくれると、ぼくがとても楽なのだが。


「それで、何の用?」


 ぼくは、部屋に残っている少年少女に尋ねる。


「それは私から説明します」


 白い子の近くからアサヒの姿が見える。


 その周りにいる子供は三人の少女と一人の少年だ。


「彼女たちはこれからどうすればわからないと言っているのです」


「だからあ、そういう子供を導くのはきみの仕事だろう?」


「そうですが、この子たちはトール村の子供ではあっても戦うことが嫌いな子供たちなのです。できれば王都で穏やかに暮らしたいのですよ」


「好きにすればいいさ。王都で暮らすのだって選択肢にはある。でもなんでそれをぼくに? 好きにすればいいだろう」


「この子たちは、あなたの庇護下に就きたいと言っているのですよ。部下にしてほしいと」


 ぼくはとても嫌な顔をしながら尋ねる。


「戦いが嫌いなのに?」


 その命に何の価値が?


「この子たちはアンナと同じ、あなたの実力やそれ以外の姿を見て、あなた個人に惹かれているのですよ。自分たちにも強さ以外にも道があるのではないかと。とても素晴らしいものがこの世には存在するのではないかとね」


「まあ、評価してもらえるのは嬉しいけどね。ぼくは一人でいいんだ。君たちのことがいらないからこそ自由にしたんだから。役に立たないものはいらない」


「役に立たないとは限らないでしょう?」


「子供たちの実力も行動も結果も関係はない。ぼくにとっては誰かを使うという時点で足手まといなんだよ。それは誰でも変わらない」


 あのオルトだってたとえ奇跡の子でもいらなかったぐらいだ。


 あくまでも賢者に対する義理に過ぎない。


 手駒なんて現地調達、使い捨てでいい。


 一々育てるのは面倒だし、時間の無駄だ。


「で、白い子は?」


「私はクルギスの傍にいるわ」


「……まさかとは思うがそれは、決定事項なのか?」


「ええ」


 この子は揺らがないだろう。


 瞳から決意を感じる。


「クルギス皇子、オルトさんから多少話を聞いたのですが、内政に人材を必要としているのではないですか?」


「必要といえば必要だけど」


「クルギス皇子の政策に、この子たちはもってこいだと思いますよ。トール村の人間は強さ至上主義なので他種族に対して偏見はありませんし、この子たちも他の子に比べて実力が劣っているわけではありません。」


 ふむ。


「非常時にも優秀に動くことが出来ます。十分すぎるほどにクルギス皇子の役に立つでしょう。考えてみてはくれませんか?」


 まあ、いいか。オルトに投げよう。


「じゃあ、オルトに預けるよ。ぼくの領地を管理しているのは基本的にオルトだから色々と相談すると言い」


 それで、色々と見極めがつくだろう。


「でも気を付けるように。オルトはぼくよりも遥かに厳しいから。強さも頭脳も教養も全てを高水準で求めてくるから。どんな目にあっても文句を言わないように」


 オルトなら上手くやるだろう。


「それとぼくのもとに残るなら、戦うのが嫌いでも騎士団の除隊はやめてちゃんと団に所属してもらう。人数が少ないのは精鋭だけを残してあとは放逐したことにするから」


「この子たちは戦いが嫌いなのですが?」


「オルトに育ててもらうというのは全てに秀でることになる。そんなことは言っていられないさ。今の時代では戦うのが嫌だなんて言ってられないし、それにぼくの部下なら命令に逆らうのも論外だ」


 生きるためには、戦うしかないのだから。


「あと、白い子には騎士団長になってもらう。実力的にもそうだし、君にはオルト直々に鍛えてもらうから」


「何故?私はクルギスがいいわ」


「すべての面でオルトに勝ったらぼくの傍にいることを許す」


「そう、わかったわ」


 同じ奇跡の子だし、賢者が認めたほどの人材である以上白い子ではオルトにはどうあがいても勝てないだろう。


 勝てたとしても何年も後だ。ぼくの目標を叶えてしまえば全てチャラになるだろう。


 とにかくオルトに押し付けて自由になりたい。白い子を近くに置くのは色々な意味で怖すぎる。


 部下を持つなんて絶対に嫌だが、最低限の基準は満たしているようだし、基本的にオルトに押し付ければぼくの苦労は増えないからまあいいか。




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