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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第三章 格の違い編
30/55

アンナの厳しい質問

 


「すまないなヒイラギ。それとアンナ。何か言いたいことでもあるのか? さっきからお前の殺気が私の身を震わせているぞ?」


 カラスは余裕がありそうな声で、気弱な発言をする。


「そうね。このお遊びは退屈で仕方がないと思っていたわ。クルギスの言葉だから付き合ってあげてるけど、私には指一本すら動かそうとも思えないわよ。カラス、あなたがいながらこの国の騎士はどうなっているの?」


 いつも通り冷静な声だが、あまりにも熱の入った怒りが込められた言葉である。


 白い子は戦いというものに純粋がゆえに、弱者に厳しい。


「耳が痛いな。だが、トール村の人間とそれ以外の人間で天と地ほどの実力差がある。おまえたちも外の世界に出てきて、それを実感しているのではないのか?」


 カラスは言外に、周りがいくら弱くても諦めろと言いたいのだろうか。


 だが、その言葉を白い子は一刀両断に切ってしまう。


「私はあなたがこの国に来てから何をしていたの、と聞いているのよ。周りが弱いのならばあなたが強く育てればいいだけの話でしょう?」


「強いな、それはあまりにも強すぎる言葉だ。お前のことは村長や、友人から聞かされていたが果たしてそんな子供だったのかな?」


「カラス、質問に答えなさい。私はクルギス以外に優しくする気はないわ」


「……本当に、アンナは第十皇子の何を見たのか。まあいい。私がこの国に来てから何をしていたか。それはな、国王陛下に魅了され既に二十年ほどこの王都で生きてきたが、実際のところ、何もしていないさ」


「何もしていない?」


 白い子は眉を吊り上げて質問する。


「ああ、そもそも私はこの国に逃げてきたのだよ。おまえたちも話ぐらいは聞いているのではないか?」


 カラスのその言葉には、茶髪の子が答える。


「ええ、おれたちはあなたについてある程度聞いています。あなたは生まれつきかなりの力を持った戦士で、大人になっても村で五本の指に入るほどの実力者だったと。でもずっと戦うことそのものに懐疑的である日、突然村を去ったと」


「ああ、私は村長。アンナの父親にだけ言葉を残し、一人で村を出た。しばらく旅をして陛下に拾われ、騎士団長の身分を得て今もこうしている。そんな人間が兵士の育成などするわけがないと思わないか?」


「なぜ、あなたは戦いを嫌がったの?」


「トール村は千年も昔から強さだけを全てにして存在していた。だが、私はそのことについてずっと懐疑的、否定的だった。もちろん強さが全てだという考えが間違っているという気はないが、私にとって大事なのはそれ以外にあるのではないか、と思ったのだよ。お前たちの中にも私の気持ちを理解できるものがいるのではないかな?」


 カラスの問いに、子供たちの中の数人が反応を示した。


 特に、白い子が反応した。


「だが、そうだな。何もしてこなかった私だが、同郷のお前たちのために少しだけ協力しよう。アンナよ。噂ではクルギス皇子に認められるために戦いを挑むそうだな?」


「ええ。私はクルギスの部下になりたいのよ」


「そうか、確かに私が皇子の中で誰の下に就きたいかと考えたらやはりクルギス皇子だろう。だが、彼に勝つ方法など私ごときにはとても思いつかない。あまりにも次元が違い過ぎるからな」


「ええ。それは当然よ。彼は私の主に相応しい存在なのだから」


「そうか。それならせめて私との戦いで体を温めていくといい」


「本気で、かしら?」


「当然だ、本気の私に勝てないようなら至高の皇子に届くはずがないからな」



  ★



 そうして戦いが始まった。じゃれつくような、殺しあいだ。


 アイテムを使って戦うカラスと、一つもアイテムを使わない白い子、戦いは一対一である。


 全員で戦っているのに他の子供も、カラスの部下の騎士も戦いに入る隙間など一つもない。


 近づくだけで吹き飛ばされる。


 基本的に弱すぎるぼくには、視界にすら映らないほどのスピードで戦っている。


 だが、一分もしないうちに試合は終わった。


 勝ったのは白い子だった。傷だらけではあるが、五体満足。


 カラスは全身が赤い。赤くない場所がないほどだ。だが、まだ意識は鮮明なようで軽口を叩ける余裕はあるらしい。



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