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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第三章 格の違い編
26/55

価値

 


「単純に国の役に立つようにしただけだよ。やる気がある方が役に立つからね」


 表向き、子供たちにはあっさりと説明しておく。


 出来るだけぼくに恩を感じるように。


「それだけですか?」


 茶髪の子は疑わしげにぼくに尋ねる。


「うん、それと話しついでにもう一つ聞きたいんだけどさ、君たちは騎士団に入ってほしいと言われたんだろう。もう少し詳しい説明はなかったか?」


「数日後に入団試験をすると言われました。実力を試したいのでおれたちと団体戦をして倒した団に入れと」


「なるほどね」


 子供達はとても簡単な説明しかされていないらしい。


「正直、乗り気ではありませんけど」


「なんで?」


「だって、どう考えてもこの国の人間ではおれたちに勝てないですよね?」


「そうだね」


 子供達は自分たちの実力をちゃんと把握しているらしい。


 トール村の人間に常人が勝てるわけがないのだ。


「わざと負けるのもどうかと思うし」


「この話にはどんな意図があると思う?」


「え?」


「別に、君たちには入団試験なんていらないだろう?実力はあるに決まっているんだから」


「ではなぜおれたちと戦いたいんですかね?」


「きみはどう思う?少しは事情に精通しているだろう?」


 白い子に話を振ってみる。子供たちの中で一番優秀なのは当然ながら彼女だからだ。


「どう考えても新人いびりでしょう?最強の村出身の私たちの心を折って自分たちに服従させようとしてる。カッコ悪い」


 白い子があまりにもはっきりと言う。


「騎士団の人間に勝算はあるのかな?」


 茶髪の子が、白い子に尋ねる。


「あると思っているとしたらただの勘違いよ。はっきりと私たちとの実力差を知らないから希望を持っているだけよ。だって王国の基準はあのカラスよ?」


「カラス?あの落ちこぼれの?」


「ええ、どうしようもないわよ」


「カラス?誰それ?」


 ぼくは子供達の会話に口を挟む。


 いや、大体の流れでわかるのだが。思い当る節もあるし、でも印象が大分違う。


「なんとかって騎士団の団長よ」


「白鴎騎士団の団長のあの人か。一応あの人はこの国の最強の騎士で団長だと言われているんだけど」


「まあ、村の外の世界では凄く強いんだろうけど、私たちの村では最低レベルの強さしか持たない大人よ」


「きみたちのほうが強いんだ?」


 そうは見えないが。


 あまり団長に接触したことはないが、ぼくから見ると割と強そうに感じたのだ。


 なんとなくだが、白い子は戦いや強さと言うものにとても厳しい考えを持っている印象を受ける。


「ううん、一対一なら私たち子供よりかなり強いわ。でも十人でかかれば十分倒せるレベルね」


「それって弱いのか?」


「私たちの村の強さって、子供と大人で話にならないほどの実力差が存在するの。基本的に子供では絶対に何があっても大人には勝てないのが当たり前の話なのよ。それがたった十人で勝てるなんてあまりにも弱いわ」


「へえ」


「それに、私たちの村の大人が外に出て何らかの職業に就くっていうのは、それだけで村の人間から落ちこぼれって言われるの。それはつまり群れなければいけないほど弱いってことだからね」


「やっぱり小さな村には独特のルールがあるんだね」


「ええ。小さいは余計だけど」


 細かいことを。


「まあ、とにかくあまりにも強すぎる君たちをボコボコにして絶対服従にしてやろうってのが、上層部の意図だと思ってくれていいよ」


「全ての騎士団をおれたちが倒してしまったらどうなるんでしょうか?」


 やはりリーダー格は茶髪の子なのか、ぼくに積極的に質問をしてくる。


 いい傾向だと思う。


 こういう人間が世の中を長生きすると、ぼくは思うからだ。


「色々と考えなしになるんだろうさ。とりあえず予定は未定になって、それと君たちがとても強いということが上層部に理解してもらえるんじゃないか?」


「あの、それなら第十皇子は騎士団を持っているのでしょうか?」


「持っていないよ、それにぼくはあらゆる意味で国のどこにも所属してはいない」


「そうなんですか。なら万が一にもおれたちが負けることはなさそうですね」


 あまりにも狭い枠組みで物事を考えているようだ。


 一々指摘をする気なんてないけど。


 何故、今の段階で全ての物事を判断できるのだろうか。


 今の世の中では強さぐらいいくらでもひっくり返せるのに。


「それじゃあ、おれたちはどうしたらいいんでしょうか?」


「そんなことは自分たちで相談すればいいさ。確かに国という枠組みでは味方だけど、言ってしまえばこれは味方同士のじゃれあいだろう」


 これは、そういうものだ。


「そんなものに口を挟む気はない。ぼくは君たちに最低限の情報を与えただけでそこから先は成功しようが失敗しようが自由にすればいい。これだけ情報をもらって上手くいかないならきみたちは所詮はそれだけの存在だというだけだしね。まあ、個人的感情で物事を話すのならどうでもいいし」


 ぼくは、興味がないのだ。




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