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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第二章 呪いからの解放編
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会議の始まり

 


 国王の命令で小さな村を一つ救う羽目になった結果、二十人の子供を国が保護した。


 メテオ王国で、いや人類で最も戦力を生み出す村の子供たちを救ったということで、必要がないほどの名誉を手に入れてしまった。


 言い方次第では人類そのものを救ったとすら言えるほどだ。


 その詳しい理由としては、子供たちが大人にさえなれば、人類のもっとも大きな戦力になるのは確実だからだ。


 今から会議が始まる。


 流石のぼくも真剣な会議の中では、偉そうな奴らをからかうのも控えめにして、少し怪しい敬語を使わなければならないので面倒だ。


 国王は玉座から場所を移り、一番大きな会議室で会議をするらしい。


 中央に大きな長机が置いてあり、備え付けの椅子に座っている。


 当然のことながら一番の上座に国王が座り、重鎮ほどその近くに座っている。


 ぼくは皇子の立場なので、本来なら国王の隣に座らなければならないのだが、白い子に呼びつけられての途中参加なので、入り口付近に立っている。


「よくやったぞ、クルギス。仮にトール村が完全に全滅していたら我が国、いや人類の被害はあまりにも大きかったのだよ」


「どうも」


「だが、そのために輝石を失ってしまったか」


 正体は知らなかったが、国王はぼくが輝石をどうやって手に入れたかを知っている。


 単純に鈍く光る石だから輝石と呼んでいるのだが……。


 普通の人から見たらぼくは輝石に思い入れがあるように見えるのだろう。


 その辺の感情をうまく利用することにしよう。罪悪感とかが狙い目だ。


「はい」


「お前が輝石をどれだけ大事にしていたかは、余も理解しているつもりだ。任務達成のために悪魔に渡してしまった代わりに何か望むものはあるか?」


「悪いですけど、あの輝石の代わりになる物がこの世にあるとは思っていません。それに残念ながら人の命に代えられるものはこの世に一つもないでしょう」


 倫理観的には。


「だが、そのように割り切れるほどの想いではなかったのではないか?お前の唯一の私物だったではないか」


 唯一の私物。確かに、当時のぼくは他に何も持っていなかった。


「仕方がないことは、仕方がありません。それ以外に語ることはありません」


「……そうか。お前の献身に心からの感謝をしよう。では、意見を聞きたいのだが、保護したトール村の子供たちをどうするべきだと考えている?」


「大前提の話からして行きますとまあ、とりあえずですが真っ先にぼくに意見を尋ねるのは間違っていますね。国王の立場から言ってもまず参謀に尋ねるのが正しいと思います」


「ふむ、ではどうだ?」


 国王は右隣に座っている参謀に尋ねる。


 この国ではただの王子よりも、重要な役職の人間の方が立場が上なことがいくらでもある。


「はっ、トール村の人間は圧倒的な戦闘力を保持していますので、まだ子供とはいえ、我が王国の騎士団に所属させるのが国家のためになると考えます」


「成る程、人数が多いので選択肢は数限りなくあるが、それでもやはり戦闘に従事させるべきであろうな。そして一番ふさわしい立場はやはり騎士団か。確かに一理あるだろうな。皆はどう思う?」


 国王が会議に参加する全員に目を向けると、会議に出席している幹部たちで話し合いが始まる。


「やはりこの戦乱時代には即戦力が求められるでしょう?」


「確かにそうでしょうね。他国との戦争の火種はどこにでもありますから」


「なるほど、それが最も平和への近道でしょうね」


「全体の意見は大体同じですね。ところで第一王子はどう考えますか?」


 会議室の意見が回りまわって、国王の右腕である第一王子に視線が集中する。


「子供たちを騎士団に所属させるのは正しい判断だと私も思う。付け加えるとしたら、私の騎士団にも是非、数名迎えたいと考えているよ」


 第一らしい実直な意見だ。


 自らの権力や、戦力を増やしたい人間からすれば当然、トール村の子供は欲しいだろうな。幹部たちも乗り気だ。曲がりなりにも第一王子だ。周りの評価も期待も大きい。


「おお、それはいいですな」


「大方の意見は出揃ったようだな。では、クルギスはどう考える?」


「そうですね、強いて言えばトール村の子供たちを騎士団に迎えるというのは有り得ない意見だと思いますね。まあ、特に反対する気も子供たちに関わる気もありませんが」


 会議をしているほとんど全員が怒りの感情でざわめく。その中で国王が代表でぼくに尋ねる。


「ほう、何故そう考えるのだ?」


「いや、興味がないので好きなようにすればいいのではないかと」


 話をするのも面倒なので適当に打ち切る。


 結果に関わる気がない以上、どうでもいいのだ。


 だが、いつもの流れで行くとどうしたところでぼくの意見が通ってしまうような流れに誘導されてしまう。


 だったら素直じゃないような感じを出して、いやいや語るように意見を言うことによって、心理的有利な状況に誘導することにしよう。



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