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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第二章 呪いからの解放編
14/55

責任

 


「それはつまり、国王陛下を非難しているのか?」


「別に。ぼくは責任の在りかを示しているだけだ。少なくても、ぼくは国王の生き残りを助けてこいと言う命令に従っただけだからな。それ以外の命令がなかった以上は自己判断で構わなかったということだ。部下の行動の責任は上司がとるものだし、命令を聞かない部下の責任は上司がとる必要のないものだ。つまり、この場合は将軍たちにぼくを裏切れと命令した彼らの上司、つまり第二王子と。第五王子。それに彼らと手を組んだ宰相が責任を取るべきだ。ああ、彼らの作戦にはめられた国王にも責任があるな」


 ぼくははっきりと言ってやった。


 とてもたくさんの民衆が聞いている中でとても大きな声で言ってやった。


 真実を知られていることに青ざめる宰相と、顔を隠して少し笑っている国王に言ってやる。


 この男はやはりわざとだったわけだな。


 まったく村の情報は渡さないし、色々と押し付けてくれる。


 ぼくの「皇子」からの失脚をその目で見たかったであろう、第二王子と第五王子も青い顔をしている。


「気づいてないとでも思ったか?実はしっかりと調べはついているんだな、これが。別にトール村じゃなくてもよかったんだろう。次にぼくが戦場に行くときにはこういう風になるように、しっかりと手はずを整えていたんだよな。まったく、切り捨てていい将軍を選ぶのはいいけど、兵は適当に選んでるんだからかわいそうに」


 まあ、切り捨てていい兵士とダメな兵士を分けるなんて不可能だがな。


 当然のことながらぼくの下にいる民は徴兵を許していないので犠牲者はゼロだ。まあ、領地の外に知り合いがいたなら可哀そうだが、そこまでの管理は出来ない。自分の命だけで満足してもらう。


「いちいち語る必要がないぐらいに証拠が集まっているから、あとで国王に直接見せることにするよ。まあ、たくさんの家族や友人を亡くした民衆の前でこの事実を喋ったから隠しようもないけどね」


「嘘をつくな!そんな事実などはない。それに証拠などある物か!」


「その判断は国王にしてもらうよ。なにしろ国で一番の権力者だ。この国では国王が全ての権力を持っているからな。これだけの犠牲を出した事件が公にされているんだら。ちゃんと「誰」が「どんな罰」を受けたか国民にもわかるほどに明確に表れるだろうさ。とても曖昧にできる規模じゃないし、もし強引に曖昧にしたら暴動すら起きかねないからな。まあ、頑張ってくれ」



 ★



 その場で全ての情報を国王に提出することを約束すると、ぼくはとっとと自室に帰った。これで本当に任務は終了だ。だが、ぼくには一休みする暇などはないのである。


「どうだった?」


「短い間でしたから。なんとか被害は少なくて済みました」


 有能な執事に報告をさせる。ぼくが離れている間、代役を務めてもらっていたのだ。


 ぼくの仕事は多岐にわたるので、どれだけ有能でも一人では死にかける。基本的に部下を作らないぼくとしては唯一の認めている部下だと言える。


 もう四年の付き合いだし、同郷だったりする。まあ、本当かわからないが。


「他国への睨みに、国内の情報を守る。内政も手を抜けない。おれはただの執事ですから、とても疲れましたよ」


「お疲れ。まあ、出来るだろう。奇跡の子なんだから」


 ぼくが知っている限り、当代でもう一人の人類の奇跡の子。一世代に奇跡の子は数人いるとすごいぐらいなのでもういないと思われる。


「そういえば村の子供の中に奇跡の子がいたよ」


「……それはすごい!おれ以外の奇跡の子なんてみたことないですよ!」


「まあそうたくさんいても困るけどね。優秀過ぎるから。たくさんいたら色々なバランスが崩壊してしまうよ」


 奇跡の子とは全てのことに優れた存在のことを指す。


 頭脳、力、魔法、その他全てに才能あふれている。何か一つでも才能がなければ、その時点で奇跡の子ではない。


 ぼくがあの悪魔や白い子を奇跡の子だと一目で見抜けたのはこの執事が奇跡の子であり、いろいろと詳しい情報を知っていたからだ。一度でも目にすれば簡単にわかる。


 まあ、外見が優れ過ぎているのでわかりやすいといえばわかりやすいのだが。


「連れてきた子供は今はどこへ?」


「うん?生き残りはみんな国王に引き渡したよ。一緒にいるんじゃないか?」


「それはもったいない。部下にしないのですか?役に立つのはおれで証明済みでしょう?」


「優秀だろうがなんだろうが、部下なんていらないよ。必要なら必要な時に調達すればいい。本当ならお前だっていらないんだ。でも、連れてけって言われたから」


「賢者様ですか。感謝しなければいけませんよね。「お互い」に色々と」


「嫌だ」


 一応は感謝しなければいけない筋なのだろうが、ぼくは好きになれない。


 悪戯と人をからかうのが趣味な奴だからな。


「でも、国王にはそのうち呼ばれるだろうさ。なにせ子供たちには呪いがかかっているからな」


「ああ、魔物寄せの奴ですね?国王に聞きました」


「何で、お前が聞いてるんだよ。ぼくに情報を教えなかったのはお前なのか?」


「いえ、クルが出発した後に呼び出されたんですよ。そこで色々聞きました。趣味と、色々と罠にはめるために言わなかったそうですよ。でも後で説明するのが面倒なのでおれに伝えておくと」


「ああ、そう」


 趣味か。あの男は賢者に似ている部分がある気がする。主に悪い部分が。


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