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コレクター(まだ本編は始まらない)  作者: 冬麻
第一章 子供たちの救い編
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話はついた

 


 このことからアサヒの心理もある程度伺える。不満、恐怖。


 自由への渇望。おそらくだが、本来の彼女はもう少し活動的で明るい人間だったのではないかと思う。


 やはり長い間の門への拘束や、兄である初代の死などが、精神に及ぼした影響が大きいのだろう。


 とりあえず、入り口近くに門に干渉する札をぺたぺたと張る。ぼくの干渉を許可する類のものだ。


 ぼくが手を加えたこの札は残り少ないが、また増やせばいいので使うことにためらうことはない。


 執事に説教されそうな気もするが、いわく貴重なものを気安く使い過ぎだと。


「これに触れたら駄目だよ。もし許可なく触れたら、ぼくを裏切ったと見做して子供たちは皆殺し。直ぐに君を門の外に出すからね」


「……はい。ですが、これはなんなのですか?」


「色々と、ね」


 説明するのは面倒だし、アサヒは頭の固い人間だからぼくの言葉を信じるかも怪しい。


 何より、この札はかなりの多機能だから、教えることができないことも多い。知識を提供させる約束をしても、別に味方というわけでもないし。


「私は、今後どうすればよいのでしょうか?」


「ここにいたいのなら、ここにいればいい。ぼくは子供たちを連れて王都に行くよ。国王の命令がなくてもこんな廃墟で子供たちが生きていく理由はないだろうし」


 思い入れがあったとしても、流石に廃墟で生きていくのは哀れだろう。


 戦闘民族とはいえ、大人も死んで村人の数も少なくて寂しさも覚えるのではないか。


「……そうですか。そうですね」


「それと、子供たちの呪いの解き方を聞きたいんだけど。君が大本なんだろう?魔物を寄せ付ける呪い」


「はい。何代目かの村長が作った術で、生まれ持った私の呪いを何倍にも薄めて村の子供たちに使っているようです。ですが、すみません。呪いの解き方は私にはわかりません。私にわかるのは私の呪いが移った人間には必ず体のどこかに呪いの模様があるということだけです。」


「ふーん、なんで?」


「私の呪いは生涯をかけてすら、お兄さまにも解けなかったものです。それに、もし解ける方法がわかっていたら私は直ぐにでも解いていますよ。危険ですからね」


「君の場合はそれでいい。でも子供たちは違うだろう。代々の子供たちに呪いを使っているのなら、それを解呪できないのなら、この村に大人が存在するわけがないだろう。少数だけど、外部に出ているこの村出身の人間も確認されているし。王都にいる団長の一人も、会ったことがあるけど別に呪われていなかったよ。割と普通だった」


「そうですね。ですが、村のことは基本的に私の手を離れて歴代の村長が治めているのです。基本的に私は村長しか会うことが許されず、運営のほとんどは村で循環しているので、一々その程度のことを私には聞かないのです。だから」


「忘れてしまったわけだな」


 アサヒは隔離された記念物に等しい。実際のところいてもいなくても何も変わらないだろう。


 いや、むしろ村長たちからみたらいなくなって欲しいものだったのだろう。


 村が出来たころなら初代の意向も残り、アサヒを守ることに誇りを持てたかもしれない。


 だが、何千年もたってしまった今では、ただ邪魔なだけでしかないだろう。


「まあ、仕方がない。でも君の手から離れたってことは呪いのことが書物などに残っていないのか?」


「当然、残っていると思いますが、今回の襲撃で村は滅びました。私の魔法で感知しても村は酷い有様です。あまり期待できないのではないでしょうか?」


「わかった。まあ、その辺の雑用は一般兵に任せよう。なにも残ってなくても、今まで自分たちでかけていた呪いが解けていたという事実さえわかれば、ぼくならなんとでも出来るだろう。全員連れて行くよ」


「はい。自分の理解を超えた存在を測ることはできませんので、純粋に期待させてもらうことにします。それと子供たちのことをお願いします。守ってあげてください」


「それは無理だな。王都に連れて行くまでがぼくの仕事だ。それで子供たちはぼくの手から離れる。そこからは国王の采配次第だな」


「そうですか、ですがそれでもお願いします」


 話は終わった。できないことを約束などできない。


 白い子の腕を掴み、引きずりながら帰ろうとする。


「すいません。最後に一つ。アンナには気を付けてください」


 本気を感じるアサヒの声に振り向く。


「どういうこと?」


「その子は私の直系の子孫であり、お兄さまの再来とまで呼ばれている天才児です。ですが同時に自分の意思で全てを決める完全に独立した存在でもあります。一族でありながら一族ではない、そんな思考を持った存在です」


 うん、なんとなくそんな印象を感じている。


「それなのに、さっきは「あなたを攻撃しろ」と言う私の命令を聞きました。……何を考えているのかはわかりませんが、私の言葉に限り多少ではありますが言うことを聞きますが、それでも実の両親の言葉ですら耳に入らないほどの。つまり、アンナは」


「アサヒの命令ではなく、なんらかの自分の意思でぼくを攻撃したという見方もできると?」


「はい、その意図はわかりませんが、あるいはあなたのことを敵だと見做している可能性もあるでしょう。気を付けてくださいね。あなたが命を落とせば今よりもはるかに我々は窮地に陥ります。私がこの場から動けない以上子供たちのことをどうかよろしくお願いします」





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