そして、日常へ
「おはようございます!」
ゴールデンウィークが終わり、私はマスカレードに出勤した。
「あら、エリカちゃん、おはよう~」
リエさんがニコニコしながら言い、「はい、お土産」と、マカダミアナッツチョコレートをくれた。
「ありがとうございます」
私も思わず笑顔になる。
「マーサと一緒に、美衣姉のお店に行ったんだって? 美衣姉、元気だった?」
「はい! マーサお姉さんと三人で、ヴォーグを踊りました」
私が答えると、リエさんは「え? ヴォーグを?」と、眉をひそめた。
「ちょっと、マーサ! いきなりエリカちゃんに、初めてのステージでヴォーグ踊らせたの!?」
リエさんが、ドレスに着替えているマーサさんに詰め寄ると、マーサさんは「うん、まぁね」と言って、「ボクがリードしたから、問題なかったよ」と答えた。
まだ何か言いたそうなリエさんに、私は「とても勉強になりました」とフォローを入れた。
「おはよう~ あら、リエちゃん良い色に焼けたわね」
ナナさんが出勤してきて、リエさんに声をかける。
「あ、ナナ姉、はい、これお土産」
ナナさんは、笑いながら「ありがとう」とチョコを受けとった。
「ナナちゃんも、一緒にハワイ来ればよかったのに~」
タマエさんが化粧を直しながら声をかけると、ナナさんは「せっかく誘ってもらったのに、すみません」と言って頭を下げた。
「ナナ姉は、私たちと違って恋に生きるオンナだから」
リエさんが、ナナさんの脇をツンツンしながら言った。
「そうね。せっかくの連休だから、やっぱり愛する人と一緒にいたいわねぇ」
ナナさんは、いじわるっぽく言って「ウフフ」と笑った。
「さあさあ、お店開けるわよ~」
メルママが控室を覗いて言う。
「はーい」
私たちは、椅子から立ち上がるとフロアに向かった。
今日は、どんなお客さんが来てくれるだろう。
私には、何ができるだろう。
わかっていることは、一つ。今日も精いっぱいやるしかないのだ。
「いらっしゃいませ!」
私は、今の自分にできる最高の笑顔でお客さんを迎えた。
マスカレードの面々のゴールデンウィーク、お楽しみいただけましたでしょうか。
平成最後の投稿にて、こちらのサイドストーリーも完結です。
今後とも、『医大に受かったけど、親にニューハーフバレして勘当されたので、ショーパブで働いて学費稼ぐ。』および『ダンジョンメンタルクリニック』をよろしくお願いいたします。