ベッドの上で天使は何人と寝れるか
テストも終わり夏休みの初日にローワンが来た。
珍しい少し慌てた様子で、
「君には悪いが協会の連中が君に魔法を教えるたのなら君にも仕事をさせろと言ってきた。本当に申し訳ないがちょっと仕事を手伝ってくれないか?」
と言ってきた。せっかく夏休みを楽しもうとしていたのに水を差された。
「え⁉︎何で?そもそもヒナはどうするんだ?」
「ヒナにも仕事を手伝わせろとの事だ。正直なところ協会は君に仕事をさせると言う名目でヒナを使いたいんだと思う。」
少しショックである。
「これに拒否権はない。下に総会役員が来ているから逃げようとしても逃げられないだろう。そんなに無茶な仕事では無いだろうから来てくれないか?」
感情受動魔法を使って見たが嘘はついていない様だ。拒否権が無いというならついて行くしか無いが、
「ヒナはどうしたい?」
「良吾が行くなら行く。」
ヒナが嫌じゃ無い様なのでついて行く事にした。正直なところ魔法協会の仕事がどんなものなのか興味もある。
アパートの下に行くと黒塗りの車が停まっていた。
「あれは何て言う車なんだ?」
「分からない、だが私はデロリアンと呼んでいる。」
「タイムスリップ出来るのか?」
「形が似ているから。」
「いや、全然似てねぇよ!」
ヒナは車に乗るのも初めてらしくはしゃいでいる。
運転席と助手席には黒服の男がいた。
俺とヒナとローワンの3人は後ろの席に乗った。
「そう言えばヒナの歳がいくつか知ってるか?」
車が進み出してしばらくしてから思い出したので聞いてみた。
「何だ?気になるのか?」
「いや、この前友達とその話になってさ。」
「私も詳しくは知らないが、五年前からほとんど身長が変わって無いから恐らく19歳くらいだと思うぞ。」
一瞬目の前が真っ白になった。
まさか太刀川達の言っていた事が本当だったとは。
ヒナの方を見てみる。どれだけ見ても19歳には見えない。
ヒナは何故か俺の頭を撫でた。
「まぁ歳なんてどうでもいっか。」
そう言ってヒナの頬をプニプニしたら嫌だったらしく殴られた。骨に当たって少し痛かった。
「仕事って具体的に何をするんだ?」
と話題を変える。
「この一年で日本に魔女が五人も現れたからその調査だ。」
「え?魔女って女の魔法使いの事だろ?それが五人いたからって何がおかしいんだ?」
「正確には魔女っていうのは魔人との性交により、魔人の固有魔法を得た者の総称だ。
男の魔女もいるが、男の魔人の方が性に対してオープンなので必然的に女の方が多いから魔女と呼ばれている。
魔人と性交をすれば必ずなれる訳ではなく、100人に1人くらいの割合でしか起こらない現象だから魔女が五人も現れるって事は少なくとも500人位は魔人と性交したって事だ。更に私達が見つけていない者も居るはずだから数はもっと増えるはずだ。」
「魔人と性交ってあのカニ見たいなやつとかウサギみたいなやつとヤルのか⁉︎しかもそれが何百人もって言うのはだいぶ怪しいな…」
「今回見つかった魔女は癒し手と言う人に近い姿の魔人の魔女だからそんなにエグい事にはなっていないだろうが、異種姦という事自体があらゆる文化において禁忌とされているから十分怪しいな。」
ヒナは話の半分も理解出来ていないみたいだ。
「しかもその魔女達が全員とある天使の会と言うカルト宗教の信者だと言うから私がそこに潜入した。もう随分と信用も得ている。今回は君達を勧誘したと言って君達にも潜入してもらう。そして現場を押さえ次第潰す予定だ。」
「簡単に言うけど小さい宗教でも潰すとなるとそんなに簡単な事じゃ無いだろ?」
そう言うとローワンは得意げな笑みを浮かべて
「並みの魔術師じゃあな、だが私だったら話は別だ。」
と言った。
「そんなにすごい魔術師だったのか?」
「そうだとも、私は魔法総会の中に4人しかいない六条実行官で今まで誰も解決出来なかった数々の仕事を解決して来た。ヒナの件もそうだ。」
「ヒナもそんなにすごいやつだったのか?」
「あぁそうだ。ヒナは当代では日本で最も厄介な無法者と言われていたんだぞ。」
「マジか⁉︎そんな風には見えないけどな。一体何をしたんだ?」
少し聞くのが恐ろしかったが好奇心の方が勝ったので聞いてみた。
「日本のマフィアのファミリーを全て潰し一つにまとめ上げたんだ。当時のマフィア達は悲惨なものだったぞ。厳つい顔したおっさん達が可愛らしいお菓子を買いに行かされたりしたんだ。思わず飴ちゃんでもあげて『頑張れ!』って応援したくなるくらい惨めだった。」
「それはそれで可哀想だけどな。」
とヤクザのおっさん達に同情しいたらヒナが
「買って来てって言ってない。勝手に買ってきた。」
と反論した。
「そうだったのか、余計惨めだな…それでその後ヒナがまた放浪生活に戻ったから今の日本はマフィアが再び領地を仕切り直して居る。」
「何で抜けたんだ?」
とヒナに聞くと
「あいつらが私の事を怖がるから出て来た。」
「ヤクザを怖がらせるなんて凄いな〜。」
とヒナの頭を撫でるとエヘヘ〜と照れた様に笑った。何が怖いかってこんな無邪気にアホそうな笑みを浮かべる奴がヤクザをビビらせたと言う事が一番怖い。
「そうだ。今の内に今回の仕事で必要そうな魔法を教えておこう。」
「行き当たりばったりって感じだな。」
「仕方がないだろう。私だって昨晩君達を仕事に加えろと言われたのだから。」
珍しくローワンが言い訳をしている。今更ゴチャゴチャ言っても仕方がないので大人しく教わる。
「と言うわけで送音魔法を教える。送音魔法はマナによって音の道を作り対象だけに音を送る。これによってこっそり話をしたり、相手に幻聴が聞こえると勘違いさせる事も出来る。更に全身の音を誰か一人に送る事によって消音効果も得られる。では送音魔法をやってみる。」
そう言ってローワン は俺の耳を触った。
「良吾、聞こえているか?」
とローワンが普通に喋りかけてくる。
「そりゃ聞こえるけど。」
「じゃあヒナ聞こえているか?」
ヒナはポカンと俺とローワンの方を見ている。
「ヒナ、聞こえてないのか?」
と聞くと
「何が?」と答え、
「ローワンは何で口をパクパクしてるの?」
と聞いた。ローワンは満足そうに笑って今度はヒナの耳を触り何やら口をパクパクし始めた。いっこく堂の様に声が遅れて聞こえてくるのかと思ったがそんな事もない。
「これが送音魔法だ。大体分かったか?」
「効果は分かった。」
「ではやってみろ。まず対象の耳を触って。」
言われた通りにローワンの耳を触る。
「やって!」
とヒナが手を掴んで来たのでヒナの耳も触る。
「そこのマナに音を受け取る様に囁やくんだ。そして手を離しながら対象の耳から自分の手をマナの細い糸で繋げるようにする。最後に自分の口あたりのマナに音を全て拾い耳に向かって送る様に囁やけば出来るはずだ。何か言ってみろ。」
「聞こえますか〜。」
二人とも聞こえると答えた。
「斎藤、良吾がなんて言ったか聞こえたか?」
すると助手席の男が
「いいえ、聞こえませんでした。」と答えた。
助手席の男は斎藤って名前だったのか。
二時間程で目的地に着いた。
「君達は基本私に着いてこればそれで良い。今の内に送音魔法の下準備だけしておけ。」
そう言ってローワンは車を降りた。
そこは大きさこそはそれなりに大きいが教会と言うにはあまりに俗っぽいと言うかあまり神聖な雰囲気のしない普通の建物であった。
ローワンはツカツカと中に入って行く。
中には高校の教室ほどの大きさの部屋があり、その中に30人位の信者らしき人と四人の幹部らしき者、そしてボスらしき一人の男が居た。
信者や幹部達は皆優しそうな目をして居るが自分に自信が無さそうな情けない表情でしかも猫背である。
ボスらしき者も優しそうな表情だが意志の強そうな目をした四十代位の男である。堂々とした態度で、きっと学生の頃からグループの中心だったんだろうな思わせるカリスマ性がにじみ出ている。
ローワンが姿を現した途端に信者達はモーセ宜しく道を開け、彼女に挨拶を始めた。その様子からして、ローワンは中々高い地位を得て居る様だ。
信者の中を真っ直ぐに進んで行き、ボスらしき男の前に跪いた。
「本郷様、入会希望者を連れて参りました。」
「ありがとうございます。ローワンさん、あなたにはいつもお世話になって居ます。」
そう言って男はこちらを向き
「私が天使の会の会長、本郷忠信です。二人の名前は何ですか?」
「城内良吾です。」
ヒナは警戒して俺の腕に抱きつき黙ってる。
「こっちはヒナです。」
「二人は兄妹ですか?」
説明するのがめんどくさいので「はい」と答えると
「歓迎します、私達と共に世の中を良くして行きましょう。」
と胡散臭い事を言ってくる。俺はこういう風に堂々と良い人発言する奴は信用出来ない奴だと勝手に決めつけている。それに何と無く顔と話し方が嫌いだ。そして日本人によくある事だが、宗教という物に少し嫌悪感を抱いている。つまり俺は(初対面でこんな評価をつけるのは申し訳ないが、)この男が大嫌いである。
「ちょうど朝の話の途中でしたので、聞いて行って下さい。」
そう言われたので信者達の隣に立つ。本郷が何やら話しているが何を言っているのか聞こえない。
ローワンに送音魔法を使って
「何かしただろ。」と聞く。
「送音魔法の応用だ。今までは口から耳まで音の一本道を作っていたが今回は音の通行止めをした。本郷の話は表面上は良い話だから良吾はともかくヒナが洗脳されない様に一応な。」
確かに俺は宗教に対して嫌悪感があるので話を聞いた程度では洗脳はされないだろうがヒナは今まで不幸な境遇だったみたいだし、酔っ払いにうちに来るかと聞かれてホイホイ付いて行くほど単純な奴なので心配である。
宗教は精神的に弱ってるやつと単純な奴がハマりやすいし、(ヒナ精神的に弱ってはいないと思うが、)
本郷の話が終わりローワンが本郷に話し掛けた。
「この二人に施設を案内してあげて下さいませんか?」
「良いですよ。まずここは集会部屋です。今の様に私の話をしたり親睦会など多くの人が集まる際に使います。ほかの部屋も案内しますので付いて来てください。」
そう言って教祖は歩き出した。
「本郷の後について行け。途中で怪しい所が有ればどんどん質問していけ。」
と恐らく送音魔法でローワンが言った。だいぶ無茶振りである。
「こちらは会議室です。幹部の方達と話し合いなどをします。」
感情受信魔法を使ったが、嘘を付いているような感覚は無かった。
こんな調子でいくつかの部屋を回ったが、途中の廊下の天井に扉らしき物がを見つけた。祖父の家にも似たような扉があり、それは物置きに繋がっていたので、どうせこれも同じだろうと思ったが一応聞いてみた。
「あれは何ですか?」
「ああ、あれは屋根裏部屋ですよ。今は使われていません。」
と答えたが俺が聞いた瞬間、心臓が少し痛くなった。
本郷は嘘を付いている。
その後もいくつか怪しい所を質問したがその屋根裏部屋以外に嘘を付いていそうな所は無かった。
その日は施設の案内が終わったら帰った。
帰り道でローワンに屋根裏部屋の事を話した。
「ふむ。それは怪しいな…無理矢理見に行っても良いが、手荒に行くと一般人に見られてしまうかも知れないし…もう少し様子を見るか。これからしばらくはここに通うぞ。」
どんどん夏休みが潰れて行く。少し泣きそうになった。
通い始めて3日目、何故か少女が鞭打ちされていた。止めようとしたら
ローワンが
「あまり目立つ事をするな。」
と言ってきた。ローワンいわくこの宗教は他人の為に自分が犠牲になるのを美徳としており、それに反する行為をしたために鞭打ちをされて居るらしい。
少女の母親が鞭打ちを終えた少女の頬を泣きながら叩いた。叩くだけならまだしも泣くくらいなら叩かなければ良い。
気持ち悪い、倒錯、被害者意識、narcism、自己満足、偽善、錯覚、矛盾、ego…
その日からローワンに俺に操音魔法をかけない様にしてもらった。
本郷は色々な話をしていたが大体は
信仰、自己犠牲、慈愛、忍耐、平和などの事について語っているだけだった。一見話の筋は通っているが、少しずつ論点がズレている。正面から見れば歯車が噛み合っている様に見えるが横から見れば噛み合っておらず、それぞれが自立して回っている様なものだ。何も関係のない事をそれっぽく繋げて話している。
その四日後、本郷の話が終わったので帰ろうとしたが例の少女とその母親の信者を本郷が呼び止めているのを見つけたので送音魔法で少女の髪から俺とローワンの耳に音が届くようにした。
あまりよく聞こえなかったが、儀式がどうのこうのと言う内容だった。
本郷と少女が屋根裏部屋があった廊下へ歩いて行った。微かに少女の肩が震えているのが見えた。
ローワンが小さなゲートを作りジトバシとダーナを召喚し、
「悪いがあの少女と男を追ってくれ、何処かの部屋に入ったらその様子を教えに帰ってきてくれ。」
とダーナに頼んだ。
「何でジトバシなんだ?他の精霊でも指輪を着けていなかったら見えないだろ?」
「ジトバシは2メートルまでの厚さの壁だったら飛べるからな。」
しばらくしてにジトバシに乗ってダーナが帰ってきた。
「どうだった?」
とローワンが聞くと
「悪いわね、癒し手に見つかっちゃった☆」
と本当は悪いと思って無さそうにダーナが答えたが、
「何⁉︎行くぞ良吾!ヒナ!」
とローワンは普通に返事をした。
ダーナに道案内させ2人の行った先に向かう。
本郷と少女の行った先はやはり例の屋根裏部屋だった。
ジトバシを使い屋根裏部屋の中に入ると本郷が少女に鞭打ちをしていた。2人の他に幹部が3人と部屋の奥に半裸の羽の生えた男がベット上にいた。
あの男レッドブルでも飲んだのだろうか?
ローワンは少女を保護し、羽の生えた男に叫んだ。
「魔法総会の者だ!癒し手よ、ここで何をしていた?」
「これはこれはこんな所までご苦労様。私はただ本郷さんの望みを叶えてあげただけだ。」
そう羽の生えた癒し手の男が言った。
「本郷、お前はコイツに何を望んだ?」
本郷はローワンが急に敬語じゃなくなったのに少し戸惑いながら、
「私は天使様の人の傷や病気を治す力をあやかりたかっただけだ」
目を逸らしてそう言った。
「ほう…それでこの子、いや他にも多くの子供達をこの男にくれてやったのか!」
「そうだ!天使様の力を持った者が沢山いれば世界中の不治の病や致命的な怪我で苦しむ人達を助けることが出来る!」
今度は真っ直ぐローワンを見て本郷が叫んだ。
「たとえ良い事の為でも子供の考えを強制する事は許されない…貴様は超えてはいけない一線を超えたな…本郷。」
ローワンは低い声でそう呟いた。
「こいつらは悪魔だ!殺せ!」
本郷がそう叫ぶと幹部達が銃を撃って来た。恐怖で体が固まったその瞬間目の前を大きな何かが通り過ぎた。
気がつくと壁一面に血飛沫が付き、巨大な二つに裂けた腕が右端に落ちていた。そのすぐ下には上半身がぐちゃぐちゃになった男たちの死体。
癒し手はさっきと変わらずベットの上に居る。
どうやらヒナが巨大な腕を出し、本郷達を吹き飛ばし、癒し手はヒナの出した腕を魔法で裂いて防いだようだ。
なかなかグロテスクだがグロいと思っただけでよく漫画の描写になんかにある様に吐いたりはしなかった。そういえばなぜグロいものを見た時に人は吐くのだろうか?他の生物は吐いたりしないのに。
……この状況でこんな事を考えるなんて俺も結構動揺している様だ。
「貴様…ウツシガミか‼︎ならば手加減はしない!」
癒し手はそう言って手の中から火の玉を出し、それをヒナに対して飛ばして来た。
俺はまたしても動けなかったがヒナは大蛇を出しその火の玉を食わせた。大蛇の中程で火の玉は爆発したがこちらには煮えた大蛇の血飛沫が飛んで来て少し熱かっただけだった 。
「ヒナはウツシガミでは無く人間だ!癒し手よ、貴様はき人間法違反で魔法総会 六条実行官 ムスターファ カリド ローワンが逮捕する!」
そうローワンは勝ち誇った様に言った。六条実行官って何だかんだ偉そうな肩書きだ。
「そいつのどこが人間な…」
癒し手はそう叫び、途中で意識を失った。
「何が起こったんだ…?」
やっとの思いでそう聞くとローワンは
「転移魔法でゲートを奴の首付近に作り直接高電圧をかけた。要はスタンガンを食らわせた様なものだ。」
そう言ってローワンは転移魔法で大きなゲートを作り、癒し手に触れて魔法で浮かせ、ゲートの中に入れた。
「これで今回の仕事は終わりだ。ありがとうな、2人とも。」
そう言ってローワンは魔法総会に電話をし、本郷達の処理と少女の身柄の確保をした。
「そう言えばヒナの戸籍作って置いたぞ。」
と言ってローワンが帰りの車で俺にヒナの戸籍抄本を渡して来た。
名前は「城内 ヒナ」で、誕生日は俺と出会った七月十日、年齢は二十歳になっていた。
「ヒナって戸籍無かったのか?」
「そうだ、ヒナは烏野真司という男の子供なのだが、烏野真司に子供がいるという記録はないからヒナに戸籍は無いはずだ。」
「えっ!ヒナの苗字って烏野だったのか⁉その話詳しく教えてくれ。」
まさか本当に烏野だったとは。
「いいぞ」ローワンは咳払いをして話し始めた。
「事の始まりは8年前警察に所属している魔法使いから魔法総会に不可解な事件があったと連絡が来た事から始まる。その内容は1人暮らしの32歳、独身の烏野真司が壁叩きつけられて死亡していて、現場には巨大な腕が落ちていた、と言う内容だった。
当初は魔人が関わっていると思われていたが、巨大な腕や蛇などを出す子供の目撃が相次いだ。
近隣住民達の聞き込みにより、その子供は烏野真司の娘だと分かった。
以降その子供の事を烏野真司の娘を便宜上略しカラスと呼んだ。
そしてヒナを保護しようとしたがヒナの魔法に苦戦し、そうしている間にヒナが日本のマフィアを束ねたのが2年前。事が大きくなって来たので私が派遣された。
そして去年ヒナがマフィアを抜けて今に至る。」
「そう言う事だったのか。ヒナは本当にお父さんを殺したのか?」
とヒナに聞くと、「うん。」と返って来た。
確かに本郷達の事も吹き飛ばしてたし、マフィアをまとめ上げたらしいし、そう言う事もしていてもおかしくない。それに戸籍がないなんて絶対にロクな扱いを受けていなかったのだろう。
「そうか、頑張ったな。」
と言って頭を撫でると、ヒナは首を振り
「簡単だった。」
と少し得意げに返した。
頑張ったな、と言うのは父親を殺した時のことじゃ無いが、ヒナが昔の事を気にして無いならそれに越した事は無いと思い黙ってヒナの頭を撫でた。




