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√B ルートB  作者: もんく
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Hello hidden wold!

た。Tシャツにジーパンといった全く色気の無い、何なら俺とほとんど同じ様な格好だったが人のファッションに口に挟むのもどうかと思ったのでなにも言わないでおいた。

その後ちょうどお昼時だったのでファミレスで昼食を食べた。俺はハンバーグにチーズが乗ったようなのを頼み、ヒナはサバフライ定食を頼んだ。渋い趣味をしてる。

ヒナは箸の使い方を知ら無いので、フォークとスプーンを使わせた。

昼食を食べ終わった後、美容院に行った。

ヒナはジッとしているのが苦手そうなので心配したが、始終モゾモゾしていたのを除いたら割と大人しかった。


髪を切り終わったヒナが出てきた。肩より少し下くらいの長さに切ってもらていた。前髪も貞子顔負けって感じの長さだったが、スッキリした。ボサボサだった髪も綺麗にしてもらっていた。


「お〜、なかなか可愛くしてもらったな〜。良かったな!」


と言うとヒナは少し照れながらも口をクニャリと曲げて笑った。そしてその他日用品を買った後、寝間着を買い忘れていたのに気づき、再び安村洋服店に行った。子供にはよくある事だが、ヒナは自分の買い物にも関わらずめんどくさそうにしていた。

帰りに髪留めを数種類ヒナに買ってやったが、ヒナは使い方を知らなかったので、帰ってからヘアゴムとヘアピンの使い方を教えてやった。他の髪留めは俺も使い方が分からなかった。そもそも名前もよく知らない。




家に帰ったら、蛇の死体が消えていた。泥棒が入ったのだろうか?と思ったが蛇の死体を取っていく訳がない。ヒナになぜ蛇の死体が無くなったかわかるか?と聞くと


「魔法で作ったから。」


と答えた。意味が分からないが、無くなる分には困らないからまあ良いか。

六時くらいだったので、夕食にした。ヒナに箸の使い方を教えたが、なかなか食べられなくて可哀想だったので、続きは明日にして、途中からフォークとスプーンで食べさせた。

夕飯を食べた後、ヒナが風呂に入っている間に皿を洗う。

ヒナが出た後、俺も風呂に入ったが、俺が風呂から出た時にはヒナはもう俺の布団で寝ていた。久々の一人の時間の様な気がしたが、まだヒナが来てから1日しか経ってない。

今日は色々な事が起きたので、1日の終わりくらいはゆっくりしようとしばらくテレビを見ていたが、ヒナが起きそうになったので、俺も寝る事にした。

しかしうちに布団が一枚しかない事に気づいた。仕方がないので、ヒナの位置をずらして二人で寝る事にした。少し狭い。




次の日も俺は床で寝ていた。ヒナに押し出されたんだろうなと思ったが、ヒナも掛け布団に包まった状態で敷布団からはみ出し寝ていた。おそらく俺を追い出しただけでは飽き足りず、さらに俺を追撃したのだろう。誰にも使われていない敷布団が何と無く寂しそうである。

朝食を終え、歯磨きと着替えを済ました頃にローワンがやってきた。

タイミング良すぎだ。どこかに監視カメラでも付いているんじゃ無いか?


「おぉ、髪を切ったのか。可愛いじゃないか。」


ヒナは警戒して俺の腕を掴みながらも少し嬉しそうだった。


「まぁ、そんなに警戒するな。」


とローワンは苦笑いする。


「とりあえず、魔法が何かから教えてよ。」


とヒナを撫でながらローワンに頼む。


「良いだろう。まず魔法に関してどこまで知っている?」


「ヒナの魔法を見ただけで何も知らない。」


「なるほど、ではマナの説明からしよう。

マナとは脳波に影響されてエネルギーに変換さられるもの 「魔力」 を膜が覆ったような構造を持つ物質であり、周りのエネルギーを吸収して魔力に変える性質を持つ。魔力が一定の量に達すると分裂する。世界中のほぼどこにでもに存在している。

エネルギーを使う事によって物質を具現化する事も出来る。」


「エネルギーを使って具現化ってどう言う事だ?」


「例えば鉄を具現化すると、光をエネルギーで跳ね返して、鉄と同じ色になるし、潰そうとしても鉄と同じ反発力で潰そうとする力を返そうとする。」


「実際に鉄がある状況と同じ現象を作り出すって事か。」


「そう言う事だ。因みにエネルギーに変換されるマナ無くなると勝手に消える。」


だからヒナが魔法で作った蛇は帰ってきた頃には無くなっていたのか。


「じゃあ、そのマナってやつを上手く使った技術が魔法っていうことか?」


「そう言う事だ。うまく使うと想像した事を現実世界に反映させる事が出来る。

マナは基本的には知覚できない。などの性質も持っている。」


「マナって生き物なのか?」


「確かに分裂して増えたりするが、遺伝子が無いから生物では無いな、狂牛病を引き起こすプリオンと同じように自己複製はするが生物では無く、ただの物質だ。」


「魔法っていくらでも使える物なのか?」


「いや、体内のマナを体外に送り出す事によって魔法が使えるから、体内の全てのマナを使い果たしたらしばらく魔法は使えなくなる。」


「無くなったマナはどっかから湧き出て来るのか?」


「マナは常に均等に広がろうとするからマナを使ったら周りからマナが集まってくる。だいたい体内のマナを使い切っても5秒ほどで回復する。」


「結構早いな。」


「だが決してマナを使い切るな。さっき言ったとうりに魔法って言うのは体外にマナを送り出す事によって対象に干渉するのだが、対象が生物であった場合その生物の中のマナが邪魔をしてマナを送り込めず、送り込むためには直接対象に触れなくてはならない。しかしマナを使い切った場合は触られなくても干渉されてしまうので、最低でも半分は常にマナを温存して置け。」


「分かった。」



「ではまずは基本的な鉄を作る魔法を教えよう。」


「待て、嘘を見抜く魔法はあるか?」


「…ある。」


「じゃあそれから教えてくれ。」


嘘を見抜く魔法を覚えたら、ローワンが隠し事をしても気づける。


「君は見かけによらずなかなか賢いな。しかし物事には順序というものがある。魔法においてマナを使うコツを掴むのが一番難しいから、まずマナを使う練習に適している物質を作る魔法からやりたまえ。」


見かけによらずと言うのは気に食わないが、言っている事は正しそうなので黙って聞いておく。


「まずマナを使う方法だが、使うというより、語りかける感じに似ている。知覚することの出来ないマナに語りかけるのは難しいだろうから、最初は見えるようにしよう。」


そう言ってローワンは内ポケットから粉薬の様な物を取り出して部屋にばら撒いた。するとまるで粉に染色されたかの様に直径1cmほどの半透明のつぶつぶしたものが現れた。


「鉄を作るにはまず、マナを操り、自分のマナで満たされた空間を作る。マナを体外に送り出すのは指先などの触覚の繊細な場所が適している。」


「じゃあ舌とかが良いのか?」


「そうだ。魔術師のキスは死神の味、という言葉もあるくらい舌はマナを送り出すのに適している。」


「魔術師のキスは死神の味ってどういう意味だ?」


ちょっと響きがエロい。


「キスをしたら相手に舌を触れれるだろう?そしたら相手にマナを送り込んで心臓を止めるなり脳を破壊するなりなんとでも出来るって事だ。」


「なるほど、魔術師はハニートラップうまそうだな。」


「はは、確かに落とす所まで行けたらいつでも殺せるな。まぁその話は置いといて、マナを送り込んだら次は鉄の原子がどのように並んでいるかをイメージし、それを並べていくイメージをマナに語りかけたまえ。」


「えらくざっくばらんな説明だな。」


「仕方が無いだろう。こればかりは感覚の世界なのだから、ほらこの図を見てやってみたまえ。」


そう言って高校の化学の教科書に乗っていそうな鉄原子の配列の図を出した。

仕方が無いのでその図を見ながら鉄を作ってみる。

休憩を挟みながら二時間ほど練習して、やっと俺の意識に反応してマナが少し体外に出るようになった。

どうやらマナに語りかけるというより、マナに命令する形の方が俺の感覚にあっていたようだ。更に三時間ほど練習してついに手のひらにジワジワと砂鉄のような物が出て来た。


「ヨッシャ!やった!」


そう叫んだが、気を抜いた途端に砂鉄は消えてしまった。

この時ヒナは暇つぶしの為にテレビを見せていたが、飽きたらしく寝ていた。


「ここまで来たら何度も繰り返し、精度を上げれば他の物質も具現化出来るぞ。」


「マジで⁉︎ちょっと楽しくなって来たな。」


と盛り上がっているとヒナが起きて来て、


「ごはん…」と目をこすりながら言った。


「良し!なら良吾の初魔法祝いに私が奢ってやろう!付いて来い!」


とローワンが言ったのでついて行くと、牛丼屋に着いた。大学の先輩が後輩に奢る時に良くしそうなチョイスである。


「昨日の服とか結構な量あったのに買ってくれたから金持ちだと思っていたけど、そうでも無かったんだな。」


「この仕事は給料は良いが色々と金がかかるから、自転車操業なんだ。ちなみにあれは組織の金で払った。」


魔法業界も世知辛い。

牛丼が来るのを待っている間、ヒナに箸の使い方を教えたが、やはりまだ難しいようだ。

昼食を食べ終わって再び魔法の練習を始める。ヒナとローワンはオセロを始めた。昨日と朝はあんなに険悪な雰囲気だったがだいぶ仲が良くなっている。ヒナは初心者の割に結構強いようで、ローワンは手加減する余裕が無いようだった。

西の方が赤く染まり空の東の方は暗い青に沈んだ頃やっと思いのままの形の鉄を作れるようになった。


「じゃあ今日はここまでにして続きは明日にしようか。」


「明日は学校があるんで無理ですよ。」


「あー、そうか君は大学生だったな。」


なぜ知っているのだろうか?


「では小さな物で良いから鉄以外の物も色々と作っておきたまえ。」


そう言ってローワンは帰っていった。





次の日、ヒナを一人で家に置いて行くのは不安なので大学に連れて行く事にした。

学校に行く途中に友人の太刀川 修介と出会った。太刀川は身長が少し高く、優しげな目をした男で、茶髪に染めピアスなんかも開けていて見るからにチャラい。だいたいいつもヘラヘラしている。顔がとても広くて、芸能人の知り合いも居るらしい。俺とは正反対の存在であるが、たまたま入学式に隣に座っていて、良い奴なのでそれ以降ずっと仲が良い。


「お〜い、太刀川〜。」


と声を掛ける。

太刀川はこちらを見た途端に驚いた顔をした。


「お前…彼女出来たのか⁉︎それを俺に見せびらかすつもりか⁉︎」


「違うわ!そもそもお前は彼女居るだろう!それに彼女にしては子供すぎだろう。」


「そんな事無いだろ。てか彼女じゃ無いなら何なんだよ〜。」


「なんか朝起きたら部屋に居たんだよ…」


「…お持ち帰り?」


「…分からん。」


「ヤバイな。」


「あぁ、非常に。」


しばらく沈黙が続いた後


「キミ名前なんて言うの?」


とナンパみたいな聞き方で太刀川はヒナに聞いた。ヒナは警戒して俺の後ろに隠れて黙ってしまったので。


「ヒナだ。」


と俺が答えると


「お前に聞いてねーよ!」


と言って再びヒナに


「ヒナちゃんって言うんだ〜。可愛い名前だね〜。」


と言った。ヒナはさっきまで人見知りしていた癖に嬉しそうにした。どうやらヒナは褒められるのが好きなようだ。結構、単純なやつだ。


「ヒナちゃんの苗字は何?」


と太刀川が聞いて、ヒナの苗字を決めてなかった事に気がついた。カラスと呼ばれていたので


「烏野だ。」


と適当に答えたら、カラスという呼び名を気に入ってないヒナに殴られた。太刀川も


「お前に聞いてねーって。」


と言ってどついて来た。

二人に殴られたが、烏野ヒナ(烏の雛)という名前がつぼに入って笑ってしまったせいで太刀川に


「お前マゾなのか?ヒナちゃんともそう言うプレイしてんのか?」


と言われたので、太刀川を出来るだけ強く殴っておいた。

ヒナはマゾの意味が分かっていないようだった。

そんな事をしているうちに最初の授業のある教室に着いた。授業中ヒナが暇そうだったので平仮名の練習をさせたら、昼までに自分の名前と俺の名前が書けるようになった。

食堂に行くと太刀川の彼女の篠谷睦月がいた。

髪は栗色で背中らへんまで伸ばしているが、良く手入れをしているようでサラサラである。太刀川と同じく少し背が高い。あまり細かい事は気にしない性格で、太刀川とは気が合うらしくで随分と長く付き合っているらしい。

因みに学年は一つ上である。

篠谷はヒナを見るなり


「何この可愛い子!」


と近づいて来た。


「エヘヘありがとうございます。」


と答えたら


「いや城内のことじゃ無いから。」


と真顔で言われた。


「烏野ヒナちゃんって言うんだよ〜可愛いよねぇ〜。」


とニコニコしながら太刀川も同調した。俺は烏野ヒナという名前にまた笑いそうになったが、今度は我慢できた。

とりあえず席を取り、それぞれ注文する。

俺はいつも通り定食の中で一番安いD定食を頼んだが、ヒナは一番高いA定食を頼んだ。

ヒナは値段と言うものをまだあまり理解していないので仕方が無いが何となく虚しくなってくる。


「いつもケチな城内もヒナちゃんには優しいね〜。」


「まったく城内はヒナちゃんにメロメロだなぁ〜。」


と二人してからかって来たので、


「うるせえな。このノーテン夫婦が!」


と返したら


「ヤダ〜、夫婦だなんて〜。」


「て〜れ〜る〜。」


と喜んだので無視することにした。

ご飯中に二人がヒナを質問攻めする。


「ヒナちゃん何歳なの?」


と篠谷が聞いた。


「分かんない。」


「え⁉︎」


思わず声が出てしまった。まさか自分の年齢を知らないとは。


「えってお前ヒナちゃんの歳知らなかったのかよ。」


「あぁ、正直何にも知らない。」


今度は太刀川が


「ヒナちゃんの好きな食べ物って何?」


と聞いた。


「サンマの塩焼き。」


「渋!」


続けて篠谷が聞く。


「じゃあ好きな飲み物は〜?」


「日本酒。」


とヒナが答えたので少し焦ったが、


「本当に渋いね〜今度飲みに行く?アハハ!」


との返答だったので安心した。


「じゃあ好きな人は?」


と続けて篠谷が聞いたら、


「良吾。」


と即答だったのでちょっと泣きそうになった。恐らく始めてお父さんと呼ばれた父親の気持ちはこんな感じだろう。

二人は


「ヒューヒュー、好かれちゃってるねー」


「これは可愛くてしょうがないんじゃ無いの〜

?」


と囃し立てて来たが実際に可愛くてしょうがないので、笑いながらヒナの頭をクシャクシャと撫でてやる。ヒナは何が何だかよく分かっていない様だが、何と無く嬉しそうにしている。


「ところでヒナちゃん今日は学校無いの?」


と太刀川が質問した、ヒナはどう答えるのだろうか。


「ここにある。」


「アッハハ!確かに違いない!」


「ヒナちゃんは天才だね〜!」


と二人は大爆笑だった。

午後の授業もヒナには平仮名の練習をさせておいた。授業が全て終わるまでに太刀川と篠谷の名前も書けるようになった。


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