表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

XENO

作者: 龍導



まだクソ暑い夏


そこは学校

学校の全校集会がある月曜日

窓際の机に座り、

二人の女の子が話をしている

まだ朝で、授業まで時間がある



「って美咲!!聞いてる?」



美咲と呼ばれた女の子は、外に向けられていた目線をその女の子に戻す



美咲「へっ?あっごめん愛衣(あい)!!何んだっけ?」



美咲は謝りながらも話を戻そうとしている



愛衣「美咲さぁ!!最近元気ない」



美咲「そりゃ、近頃悪い話ばかりだしぃ…学校も周に一度だしさ!」



愛衣「う―ん、それはそうだけどな…まぁ正しい理由やな」



その悪い話とは、近頃この学校で起きた殺人事件である

どれも奇妙なものであったために、ニュースなどに取り上げられたほどだ


暇そうにしていた美咲を見ていた愛衣は、思い出したように立ち上がった

その愛衣に驚く美咲



美咲「どっどうしたのよ?」



愛衣「今日!ウチの学校に転校生が来るんだって!!」



美咲「……ふーん」



美咲は興味が無さそうな返事

それに頬を膨らませた愛衣が美咲の頬をつつき、更に愛衣は美咲の脇などを触り笑わせる



愛衣「へっ!?…なんだよぉーその反応は!!冷たいぞぉ」



美咲「いやっ!!違うのぉ!!…変だなと思ってね!!…やっやめてぇ!!」



愛衣「ん?なんでよ!?」



愛衣はピタっと手を止め、美咲の顔を覗き込むように見る


涙目になりながら美咲は自分を落ち着かせて声を出す



美咲「ふぅー…だって変でしょ!変な事件が起きてて、そんな学校に転校生だなんて…おかしいね!!私だったら他の学校に行くね」



愛衣「まぁ…そうだけど」




少しの沈黙の後、美咲が『ねぇ』と愛衣に問う



美咲「…ソイツ、どんなヤツ?」



これに愛衣がニヤニヤ笑い美咲を馬鹿にする



愛衣「やっぱり気になるんじゃん!!」



『いいじゃん』と恥ずかしそうにすねる美咲



美咲「転校生かぁ」



愛衣「次終わったら見に行こ」






ー…昼休み



2年C組の教室の隣りのD組では、入口付近に人だかりがあった

新しい仲間を見に来たのだろう

しかも部活の勧誘もしている

その人だかりの中では女の子達の黄色い声が聞こえる



愛衣「はやくぅ―美咲ぁ!!」



いつの間にか愛衣はそれの中に居た


人込みの中に美咲も入ってゆく

その人込みの中から、微かに見えた男の子



美咲「あっ!!!」



驚きの声が漏れる美咲

それと同時に頬が赤くなる



愛衣「やっぱりカッコいいねぇ美咲」



愛衣の言葉通り、格好良かった

それと美咲は何か不思議なものを感じた…ますます顔が赤く染まる


その男の子は、

金髪で

ピアスもあけ

悪そうな服装だが、幼そうな顔つきで

美咲にしてみれば、ストライクzoneど真ん中だ


大きなヘッドフォンを首にかけ、携帯電話を操作していた



愛衣「ねぇ美咲どうしたの?………あっ!!ねぇ話しかけてみない?」



愛衣は怪しげな笑みを浮べて、美咲の顔を覗きこんできた



美咲「ふぇっ!!!…いやっ…あの…えっと…私は…いいです!!」



美咲は愛衣から逃げるように教室へ走っていった。








放課後―…




美咲と愛衣はほぼ毎日一緒に登下校している


愛衣とは美咲が小さい頃、祖母の家へ預けられてから、隣りの家が愛衣の家だった

愛衣との最初の会話は「名前なんて言うん?」で、それが始まりなのでした。美咲の家族のことは後々知る事になるだろう



今日も美咲は、愛衣と一緒に帰ろうとしたが…肝心の愛衣の姿がなかった

愛衣の机にはバックが置いてあったので、まだ学校に居る様子だ


美咲は近くのクラスメイトに聞くが、知らないらしい



美咲「何してんだか…」



美咲は愛衣に甘えている自分に嫌味を感じながら、一人で帰ることにした


教室を出ると、隣りの教室から金髪の男子が出てきた

その金髪少年の聴くヘッドフォンから音が漏れていて、左手には手提げ鞄

金髪少年はそのまま階段を降り、帰る様子だ


美咲は階段を降りてゆく金髪少年を見て、自分でもよく判らない感情と変な好奇心で、隠れながらもそれに着いて行くのだった

美咲の胸はDoki×2だった







これってストーカーよね…と思いながら美咲は金髪少年を追っていた



程なくすると、金髪少年は立ち止まった


そこは学校よりグラウンドを挟んで東にある今は使われていない旧校舎

美咲が入学する年に新校舎として新しく建てられて以来、この東校舎は使われていなかった



ヘッドフォンを外し、旧校舎の昇降口を見つめている


すると、開くことがない昇降口が突然開き、赤毛の男の子と茶色い大型犬が姿を現した

金髪少年に近寄る男の子と犬

赤毛の男の子は、金髪少年と並んだせいか、身長120cmぐらいで美咲には高校生には見えなかった

茶色い大型犬の方は、先程から二人の周りを回るように嬉しそうに走っている


楽しそうに金髪少年と赤毛の男の子は話している


何を話してるんだろ…と思いながら美咲は、そろそろ帰ろうと、歩み出した…その時!!



「ワンッ!!」



その犬の鳴き声により、美咲はもう一度金髪少年の方に振り向くと、美咲に真直ぐ茶色い大型犬が走って向かってくるのを発見した


マズい!!と思い、木影に隠れ、どうしよー…と困惑する美咲



「ワンッ!!」



美咲は、また聞こえた鳴き声で下をみると…


犬が可愛らしくお座りしていた





茶色い大型犬はじぃーっと美咲を見ている



美咲「なっ!!何よ!!」



更に横に赤毛の男の子が現れる



?「おねぇさんこんにちわ」



美咲「へっ!?こっこんにちわ!!」



犬だけでなく赤毛の男の子も、美咲をじぃーっと眺めている


遠くてわからなかったが近くで見ると、赤毛の男の子は後ろで髪を結び、青と赤の瞳を持っていた



「…………」



まだ茶色い大型犬と赤毛の男の子は、美咲を無言のまま眺めている

どうしてよいか判らず、混乱する美咲

するとまた後ろから…



?「蒼緋(そうひ)どうした?」



美咲は振り向くと金髪少年を見つける

その蒼緋と呼ばれた赤毛の男の子は、金髪少年に困ったように言葉にする



蒼緋「(れん)にぃ…このおねぇさん、どう見てもハル姉だって!!」



その言葉に金髪少年、煉は蒼緋の肩を掴み注意する



煉「蒼緋!!ハルはもういねぇんだら!!!」



煉は蒼緋に向けていた目をゆっくりと美咲に向ける



煉「すいません!突然…蒼緋が変なことを………………」



煉は美咲を見た途端、驚きの表情に変え、言葉をなくす









美咲「…えっとぉ……」



煉に見つめられ、頬を赤く染める美咲、口元を手で覆い、泣きそうになっている


それに気付いたのか、蒼緋が無言のまま、煉の制服の裾を引っ張る

その蒼緋の行為により、煉は正気を戻す



煉「あっ!!ごめんマジごめん!」



煉は慌てて美咲に謝罪する

美咲は涙目になっていた顔を拭きながら、謝る煉を止める



美咲「わっ私は大丈夫ですから!!やめて下さい!!」



慌てふためく煉と美咲、落ち着かせるように蒼緋が二人の服を引っ張り、冷静に言葉にする



蒼緋「あのさ…おねぇさんの名前は?僕は蒼緋だよ」



美咲を見上げる蒼緋の子供らしい可愛らしい表情に美咲は落ち着きを取り戻し、煉も同じく助かったようにうでを撫で下ろす



煉「俺は今日からここの学校の生徒になった、煉だ」



美咲「美咲です。桜井美咲!!宜しくです」



正直に美咲は嬉しく感じた

美咲自身、ストーカーのような行動を悔やんでいたが、話せただけでも凄い進歩だった


その後、煉と蒼緋は用事があると…二人はその場を去った


美咲「あっ!!…アドレス聞いとくんだった…」



美咲は嬉し悲し帰宅した。









これがすべてのはじまりだった
















学校は自宅学習期間という形で生徒を守っているつもりだが、学校側はこれ以上、事件が学校内で起きる事を逃れるためでもある

警察などは全力で捜査にあたっているが、まだ捕まってないのが現状だ

3人目の殺人事件から、その犯人らしき動きはないが、学校側も警察側も苦難していた

美咲をはじめ学校の生徒達は、自宅で暇な時間を過ごしたり、皆で遊びに出かけたり、アルバイトする者まで居る

部活動に関しては、土日の午前中しか許されていない様子

ある意味、生徒達は放置されていた




―…4週目の月曜日


月が変わり、ようやく風が涼しくなってきた

―…学校の屋上

美咲と愛衣の憩いの場所になっていた

通常は立入り禁止になっているので、好都合だったのである

朝だというのに、温い空気が頬を触り、丁度心地よい



美咲「はぁ…悲し…」



屋上の手摺に身を任せながら、雲一つ無い空を見上げる

その美咲を苛めるように笑う愛衣



愛衣「また煉クンのことかぁ!!うわぁ〜青春だねぇ〜!!」



愛衣は美咲の両肩に手を置く

美咲はそれに恥じらいながらも言葉を返す



美咲「何古臭いこと言ってんのよ!!」



今日の朝日は一段と綺麗だった…これから訪れる恐怖、そして二人を哀れむように…






教室は物静かだった―

登校時間が終わり、教室には寝てる者、自習してる者、携帯電話を触っているのが目立つ


登校時間終了を告げるベルにより、教室の自分の席につく美咲

愛衣は美咲の前の席だった




――…



暫くして、クラスがざわめき始めたのであった

それは本来、授業が始まる筈の時間に、先生が来てないこと

もう20分ほどになる


美咲は愛衣と暇を潰そうと、話し掛けようとしたが、愛衣は窓の外の校門を不思議そうに眺めている


それにつられるように外を見ると、校庭には人だかりが出来ていた

そこには8人の教員と、黒いコートを着た20人ほどの集団

何かを話している



愛衣「…あれは……」



何故か困惑する愛衣



美咲「どしたの愛衣?」



愛衣は突然立ち上がり、美咲への返答もせずに、教室を立ち去る



美咲「……愛衣?」



美咲は愛衣の突如の行動に違和感を抱きながら、また外を見る



いつに無く教室は五月蠅く、美咲をはじめクラスの生徒は窓側でグラウンドの様子を見ている


言い争っている教員と謎の集団


その集団のフードを被ったリーダー格の男が、怪しげな笑みを浮かべながら、何かを言葉にする

それに激怒したように、教員が無理矢理外に出そうと、強攻策のように[帰れ!]という素振りをしている


するとリーダー格の男が、仲間から黒い物体を受け取る

それは現実では有り得ない物で、美咲はドラマぐらいでしか見た事がない物だった…



…その数秒後



鈍い金属音とともに

一人の教師が倒れる


その教師の服が赤く染まる


その光景を見ていた各クラスの生徒から、悲鳴や苦い声を漏らす…

美咲は言葉も発せずに驚きの表情


その撃たれた教師を、近くで見ていた教師達は、静かに後退りする

教師達が思うことは恐怖一つ…


その瞬間…7回ほどあの鈍い金属音が鳴る


グラウンドで倒れた8人の教師

赤黒く血で染まったその8体の遺体


教室からの悲鳴…

それをリーダー格の男は黒いフードを被り、長い揺れる前髪から感じる怪しげな笑みは恐怖を与えていた

8体の遺体を踏み付けながら、謎の集団は校舎に入ってきた…
















教室に居た生徒達は騒ぎ混乱し、ここから逃げようと教室から出るため立ち上がる

一人の生徒が扉のドアノブに手をかけた…その時




「…あ―…聞こえるか!!…ここの生徒さん」



突如、教室の天井に備え付けてあるスピーカーから聞こえる音声

それに教室の生徒は動きを止める



「え―先に注意しとくが…教室から出ないように、五月蠅くしないように、逆らわないように、もしもの時は容赦なく殺しま―す」



糸が切れるように『ブツっ』と放送が終わる

それを待っていたかのように教室のドアが開き、2人の男女が入ってきた



女「は―い!!死にたくなかったら!!静かに席に座りましょう!!」



異様な雰囲気に似合わない、笑顔の茶髪の女

頭が悪そうで見た目は幼い



男「……くだらん…」



左手に握られていた拳銃を、手のひらで回す白髪の男

不良っぽい服装



女「放送のようにぃ―騒がない逃げない逆らわないだよー」



教室の生徒は、小さく震える人や、呆然と泣き崩れる者

美咲は愛衣を心配しながらも泣くのを我慢していた。



…美咲は小さく震え、泣くのを必死に我慢して、愛衣の無事を祈っていた

教室には2人の危険人物


美咲は勇気を出して黒いフード付のコートの2人を見た

教室の教卓に座る女は…顔は幼くて、赤混じりの茶髪、身長は150cmぐらいで小さく、美咲は中学生くらいに見えた。左手には20cmほどのナイフが握られている。黒板に落書きして笑っている。


対象的に入口の近くで腕を組み壁に身を任せる男は…白髪で中年の顔つき、身長は170cmぐらいで小太り、40歳ぐらいに見え、肩からショルダーで吊らされている中型の銃、更に右手に回転式の拳銃…何もせず、眉間に皺を寄せている。


美咲は、こんな時なのに観察力が優れている自分に困惑する


教室は微量の泣き声などで静かで、教卓に座る女の高笑いが響いていた。











程なくすると、またスピーカーから音声が流れた。



「………命令だ。好きにしろ」



そのたった一言の放送に意味がわからないまま、生徒達は教室の2人を恐る恐る見る。


2人は目を合せ、喜んでいる。




放送は更なる恐怖を与えた…


女は教卓から降りると、生徒達を見て笑みを浮べている。


その時…

突然隣りの教室からか、銃の発砲音が聞こえた。

隣りというのはD組だ。


その音を聞いて男が笑って女に言った。



男「エミ!!隣りは始めたみたいだ!!先にお前が好きにしていいぞ!!」



エミと呼ばれた女、笑いながらチョークで黒板に何かを書く


意味不明な理解しがたいもの

『げーむをしますよ♪』


更に女は説明も加えた。



女「エミちゃんは優しいので、君達の質問を応えま―す♪…でも、げーむに勝ったらの話だよぉ」



女は『誰か質問ありますぅ?』と手をあげて飛び回り子供っぽい態度で聞く




誰も名乗り出ない

…できないのだ



そこで女は、頬を膨らませて一人の生徒を指名した。



女「えっとぉ…そこの貴方!!」


女の指は…



確実に…



美咲を指していた。










「そこ!!起立!!」



静寂が作り上げる恐怖…それに手先が震える


美咲はゆっくり立ち上がる

他の生徒は見て見ぬふりで俯いている。今にも倒れそうな体を支えながら恐る恐る女を見る

女は口元が笑っていた。



女「ん―聞きたいことあるかなぁ?」



女は頭を傾けて美咲を見つめる

手足は恐怖で震え、口を開くことも難しい

美咲は困惑しながらも言葉を探す

咄嗟に思い付いた質問をぶつけてみる…震える体から声を出す



美咲「あ…あの…な…なんで」



女「ん―!!何!!」


この緊迫感が襲う教室で女の笑い声が異様に恐怖だった。



美咲「…なんでこんなこと…するの」



その問いに女は肩を落し、残念そうにため息を吐く



女「…そんなことでいいの?」



女のその言葉に苛つきを覚え、美咲は口走ってしまう



美咲「…冗談じゃない!!なんでこんなことするのよ!!……!!」



このいつ殺されるかわからない場面で、美咲は己の発言に驚きと不思議…そして失態を感じる。自らの言動によって二つの殺気混じりの視線を感じてしまった。呼吸が乱れ、頭の中は恐怖で渦巻いている。


女の表情は笑わなくなり、鋭い目を美咲に向けている



女「なんでなんて…簡単よ」



女はこれまでより冷たい態度で美咲に話す。



女「わたしたちはぁ…この…」


男「ちょっと待て、ゲームするんじゃないのか?」



男は俄かに笑い、つまらない様子で女を落ち着かせる。

思い出したかのように女の表情は笑顔になり、また子供のように美咲を見る



女「そうだったね〜答えの先にゲームしないと…ごめんねぇ」



女はどこからか持っていたナイフと同じ物を取り出した…

男がいきなり銃を構える



男「…机を退かせ!!」



脅されながらもゆっくりと机を後ろに運ぶクラスメイト


女が不適切な笑みで近付いて来た、手には2本のナイフ



教室の机は後ろに片付けられ、美咲を残して生徒達は端の方で座っている



女「手を出して〜」



女の声により、美咲は女の顔を見ずに震える両手を出す


すると手に何か重いものを感じる

恐る恐る見ると、先ほどのナイフ



美咲「…え!………」



女「ルールは簡単よぉ、私の血が流れたら私の負けですぅ…でも、君は死ぬかもねぇ!!君には死ぬか私に刃を向けるかの二択なんだからぁ!!」




美咲はこれまで我慢していたものが溢れて頬に涙が流れた。




女「ほらっ…もうゲームは始まってるんだよ。ほらっ!!」



女はおもむろにナイフを振るう


その刃は美咲の頬に触れ、美咲の頬から血が流れる。


頬から流れた血が滴となって床を赤く模様付ける。



美咲「…あ…あぁ…」



手に持っていたナイフに美咲は目を向けた。そのナイフの表面に自分の顔が写っていた。


…血で濡れた自分の顔…



美咲は頭の中が真っ白になった。



ひとつの言葉が美咲を動かす…


『死にたくない』


『死にたくない!!!』




美咲は女を見た、笑いながら近付いて来る



女「しんじゃうよ…君」



女のナイフは美咲の左腕を傷つける

左腕に激痛が走った。

制服は赤く染まる。

卑屈な声を出しながら美咲は後退りし逃げ道を探す。



美咲「…やだぁ…助けてぇ…誰か」



生徒達は目を背けて俯いている


床が美咲の血で赤黒く染める


逃げ回る美咲、しかし女のナイフが一つ…また一つと傷を増やしていく…













美咲「ぁ…いやぁ…ぅ…」



美咲の手…制服は赤く染まって、逃げ回る中、床を染めていく血によって水を跳ねる音が聞こえる

教室には女の笑い声が響いている




(あれ?…段々頭がぼぉーとしてきた。私どうなるんだろ…死ぬかも、いやっ死ぬんだぁ…ってか私何してんだろ)



女「おらっ…どうしたの?疲れたのぉ?ねぇ!!」



女は美咲を突き飛ばす、美咲はバランスを崩して後ろから倒れ、机にぶつかる



立ち上がろうとしたが、力が入らずにもがいている


女はまた笑って近付いて、美咲の目の前に来た



女「エミちゃんはつまらないよぉ、そうだなぁ〜エミちゃんはゲームをしてくれない君が嫌いだよ。そうゆう君にはおしおきだね!」



女が言葉にした瞬間…右肩にこれまで感じたことのない激痛が美咲を襲った。


肩にナイフが刺さっている


言葉にならない悲痛な美咲の声が教室に響く





(…あ…私死ぬんだ…………あれ?…なんだか愛衣に大切なこと言ってなかったな、そうだ!借りっ放しの本なくしたんだっけ…でもだいぶ昔のだから、愛衣も覚えてないよね…あれ?なんで愛衣のこと考えてんだろう……愛衣……愛衣に会いたいな………いやぁ…し、死にたくない!!!…死にたくない!!!)




女「んーなんかもういいや♪死んじゃえ」


女は美咲の肩に刺さっているナイフを抜こうとするために手を伸した。


その時、美咲は必死に痛みを堪えて左腕を動かし、知らずの間に握っていたナイフを女の右肩に突き刺した。



女「…ぐぅっ!!」



美咲の攻撃という予想外な行動に女は動揺する



美咲「えっ!!」



美咲は目を見開く、確実に自分の手で女の肩にナイフを刺している。


女はすぐ距離を置くと、哀しげに美咲を見る。



女「…お前、殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!…もうエミは君を許さない」



また女はどこからかナイフを取り出し、ナイフを逆手に持ち美咲に振りかざした。



振り下ろされる左手のナイフ…



美咲「いやぁあああー!!!!」


恐怖のあまりに目を瞑る美咲


しかしいくら待っても痛みを感じない…


美咲が目を開けてみると…

女の手首を男が捕まえていた。そのまま男は女を突き飛ばした。



男「約束は守れよ…エミ…」


男は次に美咲の方に振り向く、顔色一つ変えずに左手に持つ銃の銃口を美咲の額に置く



男「理由は話しても…お前を生かす訳ではない!!そうだなぁ…簡単に言葉にすると、この世の中を変えたいのだ!!」


理由を聞ける状態じゃなかった

突き付けられた拳銃に殺意ならぬ恐怖に、声を出せずに壊れた玩具のように震えている美咲



男「この腐った社会を!!これはテロだ!!これから始まる新な社会の為にお前らは死をもって始まりを告げるのだ!!」


男は美咲の首もとを掴み、更に銃口を押し付ける



男「お前らは運がわるかったな…最初に3人を実験に殺したんだが、大人達は何もできなかったな…所詮そんな世の中だな。まぁ新社会を見ずに死ぬんだから、そしてお前は我らの仲間に刃を向けた…だからお前は俺が処刑する」



男は銃の引金を引く指に力が入る




(…やっぱり私死ぬんだ…運が悪かったのかな?…いや、死ぬのが運命だったのかな?…んーん、もうどうでもよくなって来た……アレ?…どうしてか愛衣に会いたいよ…愛衣…愛衣…愛衣!!)



男の不適な笑いとともに引金が引かれる







    その時だった…







突如に別の発砲音が聞こえた、それにより男の手にしていた銃が宙を舞う



美咲は驚いた!!






そこには…





……愛衣が居た。















美咲「…ぁあ…あい?…」



突如起きた愛衣の登場に、女は唖然とし、男は転がる拳銃を目で追いながら呆然と立ち尽くす。それを横目に愛衣は美咲に駆け寄り話しかける



愛衣「ごめんね美咲…遅くなって、もう大丈夫だからね」



美咲「…あ…あいが…きてくれた……あいぃ……」



美咲は願っていた愛衣との再会に安心したかのように愛衣に倒れるように気を失った


驚きを隠せない男はゆっくりと愛衣を視界に入れ、動揺と言葉を放つ



男「…おっお前!!…なっ…何なんだよ!!」



その男の問い掛けに愛衣が美咲を支えて、振り向かずに答える



愛衣「君達の行動はこちらに筒抜けだよ…被告人さん」



男「…!!まさか!!…お前!!」



男は肩に掛けてあった銃を構える。その手には震えがあった。愛衣はゆっくりと立上がり、鋭い目線を男に向ける



愛衣「…私は君達を許さないよ!!…法の下で君達を拘束する!!そしてXENOの名の下に君達を処刑台に送る!!」



男「ふっふざけるなぁ!!」



男は再び銃を構え撃とうとするが…

急に扉が開き、一人の生徒が入って来た。その生徒は素早い動きで男の腕もろとも銃を天井に向け、慣れた手つきで男を取り押さえる。



?「はぁ…最初に制圧しろって言っただろが愛衣!!もしも撃たれたらどうすんだ!!今回はプロテクターも装備してないんだぞ!!」



男を取り押さえた生徒とは、金髪少年、煉だった




愛衣「…ごめん」



愛衣は謝罪するが、美咲を見ている

煉がその愛衣を見兼ねながらも男の首の後を殴り気絶させる



煉「えっと…この女は戦意喪失か…」



女を見ると、未だに状況を把握できずに呆然としていた。


蒼緋「ねぇー!!終わったぁ!!」



教室に突然、子供の声…蒼緋の声が響き、驚きながら煉は指示する



煉「ああ、緋空を呼んでくれ…あと修復班に連絡」



蒼緋「うん!!ひそら姉ちゃん呼んで来る!!」



蒼緋はパタパタと音をたてながら走っていった。また煉は愛衣と美咲を見る



煉「愛衣…なんで先に言ってくれなかったんだ?」



愛衣は俯いてまた『ごめん』と煉に謝るとまた話した



愛衣「だって…美咲は美咲だもん。美咲はハルじゃないもん。知った所で煉はどうしたの?…私は桜井美咲が大好き…できれば巻込みたくなかった」



煉「…………とりあえず病院に運んでやれ」



煉は他の言葉が見つからずにいた。












ー…



瞼が重い

うっすらと見える白い天井

私を包む軟らかい布団

窓から差し込む太陽が眩しくて私の睡眠の邪魔をする




……あれ?



私…どうしたんだっけ…




美咲「っああ!!!」



急に体を起したせいか、首を傷めた。

ここは病院なのだろうか…

白い壁

大きい窓

ベット


今頃だけど肩や腕を触ってみると、痛みも傷も無い

確かにナイフで…



美咲が悩んでいた時、部屋の扉が開いた


それは愛衣…

最初は頭をのぞかせ、起きている私に驚いたのか動揺していたが、すぐさま部屋に入って来た


しかし何を喋ったらいいか2人共、悩んでいた。少しの沈黙のあと、やっと愛衣が喋り出した



愛衣「痛いところない?完治してる筈だけど…」



愛衣はベットの横にある椅子に座った

また私は腕を擦る



美咲「うん…何もない…どうしたんだろ?傷跡もないし」



また沈黙…




愛衣がまたその沈黙を破った



愛衣「安心した…あの後だってのに美咲が元気で…」



愛衣は少し苦笑いで話した。愛衣は制服の上に茶色のファーコートを着ていた

あの事を思い出しながら愛衣に話した




美咲「…今でも悪夢のよう。でも愛衣が来てくれたから…ねぇ、あの後どうなったの?」



少し愛衣は悩む素振りを見せて、腕を組み話し始めた



愛衣「簡単に言うと、アイツらは学校でテロを起こそうとした連中なの…その連中は身柄を拘束されて、今頃は監獄の中だね」



美咲「それだけじゃ…わからないよ…愛衣の事も」



愛衣は私の問いに、悲しげに質問してきた



愛衣「ねぇ…美咲は今までの生活を捨てる覚悟はもてる?」



美咲「へっ?」



愛衣「学校でのテロはほんの一部に過ぎないの…私はXENOって組織に所属していてね、本格的なテロ組織の撲滅を目指しているの…世間には知られてないテロ事件が沢山あってね、ほぼ毎日事件が起きているのよ…」



美咲「信じらんないケド、愛衣がそうなんだ……でもそんなにテロが起きてんならニュースとかで出るでしょ?なんでそんな事がないの?」



愛衣「それは国が隠しているのよ…」



美咲「隠してるってどうやって?」



愛衣「その事件の記憶そのものを消去するの…例えば美咲も巻込まれた学校の事件では、教師11人、生徒17人が死亡したの…生徒やその事件の被害者の記憶から事件の事、その28人の情報を消すの、被害者の中には28人の家族も含まれているのよ。だから事件そのものが消されて、事件がなかったように別の記憶を埋められて、今は普通の学校として機能しているわ…」





私は正直に愛衣を信じていいのだろうか…

記憶を消す?

なにそれ?

存在すら消すって…

そんなに隠したいの?


私の頭は混乱してオーバーヒートしていた。そこにまた悲しそうにに愛衣が俯いて話す



愛衣「それでね…美咲」



愛衣「私はXENOのメンバーとして5歳から育てられてね、あの学校あたりの周囲の監視を他のメンバーとやって来たの…私はXENOのメンバーとしてこの地区でテロ組織がなくなったから、任務終了ってことで本部に戻るんだ……だから私の存在もあの学校の人達の記憶から消えるんだ」



美咲「えっ!!それって…私は」



愛衣はまた優しく微笑みかけて『でねっ』と戸惑う私に喋り始めた



愛衣「美咲はどうしたい?…美咲はあの学校の桜井美咲としてあの悪夢のような記憶を消して戻れるよ!!私としては巻込んだのは悪いと思うケド、私はずっと美咲と一緒に居たい!!私の勝手な願いだけど…XENOに入って私と一緒に行こう!!」



愛衣は身を乗り出し泣きながら美咲に問う

その時また扉が開いた!


もう見慣れた金髪頭

煉が立っていた!



煉「もうやめろ!!愛衣!!」



煉は愛衣の腕を掴み、連れて行こうとしている



愛衣「やめてよ煉!!」



煉「あまり情をいれるなって言ったろ!!」





美咲「私!!行きます!!」



2人の動きが止まった


私はあの日常に戻っても楽しみもない、ただ一つ私が笑えるのは愛衣が居たから…

だから…決心したんだ…



愛衣と一緒にって…





愛衣「…今……なんて?」



美咲「だから!!私は愛衣と一緒に居る!!」



私は愛衣がだけだったの…

あんなに喋ったり

あんなに笑ったり

あんなに怒ったり

あんなに泣いたり


私はあんなところに帰りたくない


だって愛衣が居ないんだもん




愛衣「美咲ぁ…」



愛衣は涙を流しながら私に微笑んで見せた


その後ろから煉が呆気にとられたように驚きの表情で近寄って来た。そして先程愛衣が座ってた椅子に座り、私に言った



煉「君は大変な事を言ってる。全て捨てていいのか?もしそうだとしたら、もうこの世の中の君という人物が消えるんだよ…その場には誰一人として美咲という人物を知っている人は居なくなるんだぞ…」



美咲「大丈夫です。覚悟してます」



すると煉は大きなため息を吐き、部屋を出て行った



愛衣「美咲ぁあ!!」



愛衣は急に私に抱き付いて来た。あんなに強くて頼りになる愛衣が今、嬉し涙を流している。それにつられたのか、私もやっと泣くことができた。





これから…

どうなるかわからないけど


私はこれで良かったと思う


後悔するよりはいいと思うから


















残念ながら、ここで終了です。



申し訳ございません。


ただ、の突発的小説のため、連載は至難の業でありまして…言い訳をしたいぐらいだ(笑)

なんか無理矢理終わらせた感が…



…真面目にすいません。


小説XENOには、謎が多くありましたが…

・緋空←誰?

・ハル←誰?

・薬?

・XENOってなに?

・…まぁいろいろ…



メッセージがあれば、頂きたい。

連載…どうしよーかな…


メッセージ次第で…



つーか本気ですいません。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ