固有スキル
調べてみるとこの岩山の中腹くらいに境界があった。
その境界で一旦魂感知が切れていたため、境界を超えるまでグレータモンキーの接近に気づけなかった様だ。
魂感知に頼りきっていた何よりの証拠で、ちょっと恥ずかしい。
取り敢えずこれで突発的な奇襲にはある程度備えられる。
だが境界の正体が分からなかったため、形だけでも知ろうとした。
で、結果から言うと境界は森を囲うよう形と分かった。
森が、ばかでかいので全体は分からなかったが多分円形なんだろう。
まるで結界である。
ちょっと自然に出来たとは考えにくい。
さっき俺はこれで死ぬとこだったし、仮に悪意ある人工物だった場合ぶち壊す。
少なくとも文句くらい言いたいじゃない?
まあ、人工物っぽくて人間の痕跡がありそうだからってのが1番の理由なんだけどさ。
▽▽▽
という訳で森の中。
さっきの奇襲みたいなことが無いように感知だけでなく強奪も平行して行っているので安心だ。
しかし、暑い…
ここまで育った森の中だしもっと涼しいと思っていたら、まるで熱帯雨林のようだ。
すんごい毒とか持ってる虫とかいたらどうしよう。
▽▽▽
迂闊だった。
森の中を進んでいて思ったがやばい。
(喉が乾いた……)
思えば今まで水を一滴も飲んでいなかった。
真面目な話これはまずい。
人間の体の大半は水で出来ているため、人体における水の役割は多岐にわたる。
単に体温調整だけでないのだ。
なので、俺は絶賛後悔中である。
まあ、あそこにいて何が変わったわけでもないが…
▽▽▽
それから時が経ち
(し…死ぬ……死んでしまう……)
俺は限界を迎えていた。
(海外の生水は飲まない方がいい、果物等も果皮とかに寄生虫などかいるかもしれない、動物の血などは論外だ)
俺はただの高校生、雑学は好きだがこんなガチサバイバルの知識はあやふやだ。
お陰でどれが安全かわからず、未だに何も飲んでいない。
水が足りなくてふらふらする。
(くそ、全部怪しく見える……)
悩んでいた俺の耳に音が届く。
「これは!!」
間違いない、今のは水の音だ!
だが飲めない水を飲みに行っても虚しいだけだろう。
そんな考えとは裏腹に足はふらふら音のした方へ吸い込まれていく。
▽▽▽
ある程度近づくと魂感知に大きな反応があった。
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シーサーペント
LV83
体力:6500/8600
魔力:7600/10030
物攻:8700
魔攻:12400
敏捷:8400
物防:9500
魔防:11000
固有スキル
【鉄砲水LV─】
スキル
〈水魔法LV7〉〈氷魔法LV6〉〈水棲LV6〉〈身体強化LV6〉〈魔力操作LV6〉〈魔力感知LV6〉
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──────────────────────────────
固有スキル
【鉄砲水】
水魔法の威力にのみ、凄まじい補正が掛かる。
しかし、威力に比例して消費魔力が増える。
スキル
〈水魔法〉
水属性の魔法が使える。
スキルLVに応じて精度、威力、規模が変わる。
〈氷魔法〉
氷属性の魔法が使える。
スキルLVに応じて精度、威力、規模が変わる。
〈水棲〉
水の中にいる時、全ての身体能力が上がる。
上昇率はスキルLVに依存する。
〈潜水LV6〉
水の中に息継ぎなしで潜っていられる。
効果時間はスキルLV×1時間。
〈魔力操作〉
魔力を操作することができる。
規模と精度はスキルLVに依存する。
〈魔力感知〉
魔力を感知することができる。
精度と範囲はスキルLVに依存する。
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自然と足が止まる。
(………強くね?)
……え?
……………は?
強すぎじゃね?
これ、やっばいよ?
俺死ぬんじゃないか?
死ぬよね?死んじゃうよね?
あまりの強さに呆然とする。
しかし、そんな怪物と戦っている奴がいるようだ。
まさかこんな奴と戦おうとする無謀な馬鹿がいるとは呆れてものも言えない。
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ハーピークイーン
LV79
体力:5500/7800
魔力:6530/9850
物攻:5700
魔攻:11400
敏捷:12400
物防:6500
魔防:12000
固有スキル
【空気圧縮LV─】
スキル
〈風魔法LV6〉〈雷魔法LV6〉〈飛行LV8〉〈索敵LV6〉〈身体強化LV6〉〈魔力操作LV6〉〈魔力感知LV6〉
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固有スキル
【空気圧縮LV─】
風魔法の威力と規模に、凄まじい補正が掛かる。
しかし、比例して消費魔力が上がる。
スキル
〈風魔法〉
風属性の魔法が使える。
スキルLVに応じて精度、威力、規模が変わる。
〈雷魔法〉
雷属性の魔法が使える。
スキルLVに応じて精度、威力、規模が変わる。
〈飛行〉
空を飛ぶことが出来る。
速度と消費魔力はスキルLVに依存する。
〈索敵〉
索敵が出来る。
範囲と精度はスキルLVに依存する。
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oh………
振り替えってダッシュ!!ダッシュ!!ダッシュ!!
あれはやばい!
冗談言ってる場合じゃなかった。
ハーピークイーンの驚異的な俊敏も十分やばいが、両方魔法特化なので迂闊に霊体化出来ないのが1番きつい!
雑魚雑魚グレータモンキーの一発でも当たったら死ぬとこだったんだ!
あんなのかすっただけでも即死だ!!
この選択がもう少し早ければと思わずには入られない。
危機察知が反応したときには遅かった。
ものすごい破裂音がしたと思ったら、背中を半端ない力で押され、吹き飛ぶ。
右半身から倒れ込むように転がり何度かバウンドして、木に叩きつけられてようやく止まる。
「ごはっ!!」
うつ伏せのまま足掻くが。
「…ぐっ…がぁ…ぁ…」
(あぁまずい…立てない…)
右側の顔は地面で擦ったのか、皮膚や肉はえぐれ右目が見えない。
右腕も肩からねじ曲がり、指が全く動かない。
足は…よく見えないが膝が曲げらんないな。
唯一まともに動くのは左手くらいだ。
ここまで来ると痛覚が麻痺するのか痛みは感じないが、刻一刻と死が近づいているのが分かる。
無様にもがいて顔だけ上げると、そこには羽をひろげれば10mくらいありそうな黒緑の鳥がいた。
と言うかハーピークイーンだった。
こんな時なのに人間の顔が無いことを疑問に思ってしまう。
(くっははは、やべぇな…)
「ギュイ??」
ハーピークイーンは俺を見て不思議そうにしている。
何でだよ、不思議なのはこっちだ。
……もう逃げられない、どうする戦うか?
しかし、どうやって戦闘中に俺の存在に気づいた?
いや、そんなのは後だ。
まずは霊体化を…
「ギギ!ギュァァァァ!!」
ハーピークイーンは急に苦しみだし、怒りの顔で俺を睨む。
───魂魄強奪か!!!
しまった!やべ!きってなかった!!
「ギュォォォォ!!」
ハーピークイーンは口を開け、なにかを集め始めた。
まさか空気圧縮か!?
待て!それはやばい!マジでやばい!
…体は動かない…
…霊体化では避けられない…
…ハーピークイーンは撃ち抜く気満々…
サーっと血の気が引くのが分かる。
オワタかもしれない。
ハーピークイーンが撃つ体勢?っぽいのになった。
それと同時にジリジリ威圧感が増していく。
あかん!あかんって!
死ぬ!そんなんで撃たれたら死ぬから!!
思わず目をつむってしまう。
瞬間、爆音が爆ぜる。
ズドン!!と体まで振動が響く。
がしかし、それ以外は特になにも起こらない。
なんでだ?
目を開けるとあたりは酷い有り様だった。
木々はなぎ倒され、地面はえぐれ、目の前にいたハーピークイーンは吹き飛ばされたようだ。
(まるで災害だな)
こんなことができそうな奴はハーピークイーンの他には1体しかいない。
「シーサーペントか…」
それも鉄砲水を使ったのだろう。
なんて、でたらめな威力だ。
ほとほとあきれるよ。
もうちょっとこっち側だったら俺も直撃だったじゃねぇか。
あ、危なかった。
……………なんてなごんでる場合じゃねぇ!
シーサーペント俺を殺す気満々じゃんか!?
さすがにこんな状態では焦る。
なななにか、だ打開策を!
(ステータスオープン!!)
──これは。
▽▽▽
再び、爆音が爆ぜたが、それは鉄砲水ではなかった。
(運が良かった……)
俺が放った固有スキルだ。
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天堂 蓮
種族:人間?
年齢:18
職業:─
性別:男
LV1
体力:5584/11100
魔力:5780/12100
物攻:6940
魔攻:12620
敏捷:13700
物防:8740
魔防:14220
固有スキル
【魂魄強奪LV1】
〈霊力21344〉
〈取得可能スキル64〉
【空気圧縮LV─】
スキル
〈霊体化LV5〉〈暗視LV6〉〈危機察知LV5〉
〈再生LV3〉〈気配察知LV3〉〈気配遮断LV3〉〈身体強化LV7〉〈根性LV3〉〈風魔法LV6〉〈雷魔法LV6〉〈飛行LV8〉〈索敵LV6〉〈魔力操作LV6〉〈魔力感知LV6〉
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ハーピークイーンから奪った空気圧縮で上空の空気を圧縮し、できた高密度の空気の玉を風魔法でシーサーペントにぶつけ破裂させたのだ。
普段なら当たらないがシーサーペントの大技の隙をうまく利用させてもらった。
直撃はしなかったようだが、それでも時間稼ぎにはなる。
こんなことが出来たのは、肉体を失ったハーピークイーンの魂を奪った時ステータスもスキルもそのまま足されたからだ。
周囲の魂を自動的に奪うようにしてて焦ったが、不幸中の幸いだった。
しかもこの場合はある程度傷が治るようで、無理は禁物そうだが十分だ。
真面目に戦って殺して奪った事が無かったので今まで分からなかった。
まあ、今のも真面目とは言いにくいけどね。
完全に漁夫の利もってた形になってるし。
遠くからシーサーペントの怒号が聞こえる。
まぁ今のは2000くらいしか魔力を込めてないし、元々殺せるとは思っていない。
「そう焦るなよ、今からそっちに行くからさ」
シーサーペントからの被害は、ないどころかハーピークイーンから助けてもらった。
だからと言って見逃すわけにはいかない上物だし、相手も俺を殺す気満々だ。
なら遠慮は入らない。
「その魂も俺が奪う」
さっきまではこんな強気ではいられなかった。
俺はまだまだどんどん強くなる。
そう思うと思わず顔がにやけるのが分かる。
(誰より強くなる。その為の踏み台となれ、シーサーペント!)
俺は無いはずの翼を広げシーサーペントの方に飛んで行った。