傍迷惑なテンプレ
その後、ちょっと後悔した俺はルターナの回復を待った。
怒っているなら素直に謝ろうと…
だが──なんか、ルターナも満更でもないらしく怒ってはいなかったのでそのまま食堂に行き。
※俺は結局また何も食べてない。
※餓死しそう
※マジで
食事を終えた今、俺達は冒険者ギルドに来ていた。
特に金には困っていないが、要するに暇なのである。
後は固有スキルを試したいのでちょっと遠出するから、そのついでだ。
そんな訳で、ギルドの依頼が貼ってあるボードに来てみた。
俺達はFランクだ。
仕方ない事だが、受けられる依頼の報酬のショボさがヤバい。
Fランクの依頼で食っていってる奴らは、さぞや苦労してる事だろう。
常時依頼の[ゴブリン3体討伐][ウルフ3頭討伐]と、採取依頼の[マナの葉10束採取][薬草10束採取]の4つを取る。
採取の依頼はFランク、討伐はEランクだ。
マナの葉と薬草を100束、ゴブリンとウルフを30で俺達はDランクになれる。
今日のノルマ目標はこれで決まりだな。
ランクを上げないとロクな依頼がないので、サクサク上げていこう。
「ルターナ、これでいいか?」
そう言って聞くとルターナは非常にどうでもよさそうだった。
と言うのも、どれでも結果が変わらないと思っているからだろう。
実際ステータスだけでも俺達に勝ってる奴がいるなら見てみたい。
こんな感じに油断してやられたら恥ずかしいので、油断はしないが。
「いいんじゃない?」
ルターナのお許しが出たので、受付に向かう。
しかし、その途中かなりめんどくさそうな奴に会った。
「おいおいおーい、Fランクのくせに随分かわいい子連れてんじゃねえかよ?あぁ??」
俺は、こう言うのは無視するに限ると考えてる派なので、ガン無視する。
「しかし、どこで練習するよ?」
「砂漠でいいんじゃない?」
そう言えば結界(仮)の調査が中途半端だったな。
ついでに、それもやっておくか。
「おっけー」
「はぁ?おい待てや、無視してんじゃ─」
追い抜いて会話を続ける。
「そいや、魔力は安定したのか?」
「ええ、もう問題ないわ。残念?」
「残念と言ったらどうする?」
「もしかしたら、不安定になるかも」
そう言ってクスクス笑う。
なんとな!
ルターナさんがデレた!
…別に、珍しくはないか?
「ほほぅ?なら──」
「無視してんじゃねぇよ!!!」
こめかみをピクピクさせながらおっさんAが怒鳴る。
無視しようかと思ったが、おっさんの唾がルターナに飛んだ。
勿論、風魔法?で反らしたためルターナには当たっていない。
……こいつぶっ殺す。
おっさんAはまさに山賊のようなナリだった。
ボロボロの服に、傷みきったアーマー。
ちょっと偏見かもしれないが山賊にしか見えない。
ちなみにB、C、D、Eの5人組である。
B、C、EはおっさんAと似たようなものなのだが、唯一Dだけ異色な姿だった。
正直、服を着て二足歩行する豚かと錯覚した。
獣人?ってステータス覗いたくらいだしな。
ステータスには人間と書かれていた。
それを見て余計違和感がすごい。
そうそうBその他は最初こそ、おっさんAの後ろでニヤニヤしていたが今は顔が真っ赤だ。
……ルターナと違って見苦しさしか感じられない。
おっさんAが詰め寄ってくる。
「いい度胸してんじゃねぇかクソガキ」
「……」
……………くさい。
なんとも形容しがたい異臭がする。
だからか自然とルターナを自分の後ろに引っ張る。
おっさんAはそれに構わずどんどん近づいてくる。
「うっ…頼む、これ以上近づくな」
「あぁ?あんだよ、ビビってんのかぁ??」
そう言っておっさんAその他はゲラゲラ笑い出し、更に近づいてくる。
来るなと手でジェスチャーしながら俺は言う。
「……臭いが少しキツいんだ、自覚してくれ」
ここに注目が集まっているのか、俺の一言でギルドが静寂に包まれた。
「と言うか受付嬢、これはどうすればいい。手を出していいのか?」
そう言って受付嬢を見るが、ポカーンとしてて何も答えてくれない。
改めて確認がしたかったが、仕方ない。
視線をおっさんAに戻すとプルプルしてきた。
「死ね!クソガキ!!」
そう言って腰の剣を抜き、上段から剣を振り下ろしてきた。
(あーららら、願ったり叶ったりですわ)
なんか、剣にも触れたくないので両手を魔力で覆い、左の親指と人差し指で剣を止め、右手で無造作に腹を殴る。
拳がめり込み、おっさんAの体がくの字に折れ吹き飛ぶ。
手は魔力で覆っていたので、汚れていない。
殴った感触もなかった。
魔力ってば便利。
ちなみにおっさんAは丁度ギルドの扉を突き破って外に飛んでいった。
……突き破って!?
やっちまった、そこまでする気はなかった。
弁償とかすんのかなやっぱ。
視線を残ったおっさんズに向けると飛んでいったおっさんAを見て唖然としている。
こいつらもやっとくか?みたいな挙動を見せると、おっさんズは走ってどっかに行ってしまった。
はたから見たら見逃したみたいに見えるだろう。
がバカめ、俺が逃がすわけがないだろ?
おっさんズからは寿命を半分くらいもらっている。
魂を半分もらったと言う意味だから、実際に寿命が縮んだかは知らん。
ふぅ。
海斗よ、こう言うのをテンプレと言うんだろうが、実際起こるとあんま楽しくないぞ。
そう思いながら軽くルターナに頭を下げ、後始末も含めて受付にむかった。
▽▽▽
結論から言うと、お咎め無しとはいかなかった。
行為は仕方なかったと認められたが、扉を壊したのがダメだったらしい。
金貨2枚飛んでいった。
絡まれたと言うのに散々である。
それを経て現在俺達は空を飛んでいた。
ちなみにルターナは俺の腕の中である。
飛ぶときに「疲れたわ」とか「やっぱり魔力が」とか「男の子でしょ?」とか言ってルターナが飛ばなかったからだ。
今の緩みきった顔を鏡で見せてやりたい。
まあ、若干ブーメランなんだけどね。
いや仕方ないと思うよ?
だってさルターナがグチグチ言いながらも近づいてきて、最終的には俺の首に手を回して「やっぱりダメかしら…」って少し不安そうに聞いてくるんだよ?
それを見てそのままあの時と同じくお姫様抱っこしたら、ニマニマしながら俺の胸に顔を押し当ててきたんだよ??
ヤバかったからね。
特に、破壊力が。
きっとその時の俺は人に見せられないような顔してたと思う。
ほどなくして、俺が死神になった?元森の跡地に着く。
見事なまでに生き物がいない。
と言うか魂をとるだけで、こんな光景にはならないと思うんだけどね。
まあ、ルターナが積極的に言いたがらないなら無理に聞くこともないか。
ルターナをおろし翼をしまう。
「しかし、あらためて見たが見事な砂漠だな」
飛んでる時に上から見たら、森と砂漠の境界線がハッキリ分かった。
やはり、かなりでかい砂漠だ。
俺達は大体中心より少し外側にいる。
「……」
なぜかルターナが物悲しそうな顔をし、ボーッとしているので横から頬を引っ張る。
「さあ!ルターナ君、探索にいくよー!」
「ひゃっ、ふっ、ふぇん!ひょっほ、ひっはふぁなふぃふぇ!」
訳すと「ひゃっ、れ、蓮!ちょっと、引っ張らないで!」か?
それにしてもモチモチでよく伸びるほっぺですね。
ルターナがジタバタしているが気にせず進む。
すると、俺の手を持って抵抗し始めたので、手を離し今度は強引に手を繋ぐ。
「あっ……」
チラっとルターナを見ると、また顔がニマニマしていた。
……かわいい。
外見だけならどっかのバカにロリコンって言えなくなりそうだな。
▽▽▽
少し歩くと大きな岩山のところに着いた。
「…ついたな」
「ここは?」
「この砂漠にある結界(仮)」
「結界?」
「そそ、ここってば外からじゃ魂を見ることも出来なくてな。形が大まかに円形だから結界(仮)って呼んでるのよ」
……ルターナの口調が少しうつってないか?
「ああ、それなら多分遺跡の探知阻害魔力のせいよ」
繋いでる手をニギニギしながらルターナが言う。
「魔力?」
「そう。周囲の魔力を触媒に魔力を変質させ、外部の干渉を阻害するのよ。今の世界の魔法技術は前よりずっと衰えているから、俗に言う喪失技術ね。探知阻害魔力にも種類があるんだけど、これはかなり高性能の魔力偽造型ね」
結界(仮)の境界線に触れ、ルターナが言う。
「種類なんかあんのか」
「たくさんあるわよ?でも大きく分けるなら3つね。1つは視覚を誤魔化すもの、これは透明になったり違うものに見えるようにするの。もう1つは聴覚を誤魔化すもの、これは単純に音が聞こえなくなるか全く違って聞こえるわ。最後に魔力を誤魔化すもの。これは魔力を使った探知魔法のために作られた技術で、かなり高度な技術が必要で重要なところ以外は使われないわ。ちなみにこれは更に二種類に分けられて、探知の魔力が入ってこないようにするか、探知の魔力でも分からないよう魔力を周囲に似せるものがあるの」
「なんか、お宝のにおいがするな」
「そうね、魔力阻害型と偽造型はあんまり広範囲をカバー出来ないから大体は遺跡の中でしか使われないのよ。なのに、遺跡全体にかけるなら余程隠したいものがあるんでしょうね」
「ワクワクしますな!」
俺も男の子だ。
こう言う冒険的な話しには興味しんしんですよ。
「あ、でも、ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?」
「ちょっと試したいことがあってな」
試したいこととは全知のスキルだ。
ちょいちょい前と同じ事をするために今のぶっ壊れスキルを使っているが、全知、創造、神技はまだ使ったことがない。
この中で俺は全知が一番使ってみたかった。
これを使えば、何故俺がこの世界に来たのか、咲達が今どうしているのか分かるかもしれない。
それでも見てすぐ使わなかったのは、全てを知ると言うことがどんな事なのか分からなかったからだ。
今の俺が街中で暴れたら洒落になら無いからな。
しかし、この砂漠なら周囲を気にせずにすむ。
ルターナは死神の力を失なったとは言え神様だ。
多分大丈夫でしょう。
「少し離れていてくれ」
そう言うとルターナは先ほどニマニマしてたとは思えないほど真面目な顔をする。
「蓮、あなたの持っている全知は不完全でも神の力よ。使うなら気をしっかり持ちなさい」
「…」
しようと思っていたことを当てられて少しビックリしてしまう。
「それだけよ、頑張りなさい」
そう言ってルターナは俺を安心させるためかクスリと笑う。
「ルターナ…」
「ふふん、出来る女でしょう。私は」
そう言ってルターナは自慢げな顔をする。
俺はそんなルターナの
鼻をつまみ上げる。
「いたたたた!」
ルターナは目を白黒させワタワタしている。
手を離すと涙目だった。
「なっ、なにするのよ!鼻がとれちゃうかと思ったじゃない!」
ちょっと怒ってるようだ。
「ルターナに心配されるほど俺は子供じゃねぇ」
「よく言うわよ、照れ隠しでしょ?恥ずかしかったんでしょ?分かってるわよ、私は大人だから」
今度は頬を引っ張る。
「いひゃいいひゃい!」
手を離すとルターナは頬をおさえ「うぅぅぅー」と唸っている。
「なんか、ドヤ顔が気に入らなかった」
「蓮ってば本当に子供!!恥ずかしかったならそう言えばいいのに!!」
「はいはい分かったから、じゃ離れてなよ」
恨めしそうな目をしてルターナが俺から距離をとる。
俺は深呼吸して、心を落ち着かせる。
「さて、じゃやりますか」
全知を使う。
瞬間、頭が爆発したんじゃないか?と思えるような衝撃をうけた。
「────────」
くわんと視界が揺れ、慌てて全知を切る。
気づけば俺は地面にうずくまっていた。
「あ……ぐ……」
目はまだ見えない。
既にスキルは使っていないが…凄まじい勢いで情報が頭に入って来る。
キィーンとひどい耳鳴りがする。
頭をヤスリで削られているようだ。
「ふーっふーっ、すーはー」
少しすると落ち着き、頭痛も目も大分マシになった。
立ち上がり、もう一度全知を使う。
今度はさっきのように漠然と使うのではなく1つの事に集中する。
しかし、また耳鳴りが頭を揺らす。
「ぐっ……」
頭の凄まじい異物感に耐え、集中する。
だんだん慣れてきて、徐々に得られる情報が鮮明になってきた。
だが突然思考がぶれる。
「あ……」
今度は地面に倒れていた。
「くっ」
もう一度立ち上がり、集中する。
「ふーっ」
そして─
「あだっ」
全知を使おうとしたら頭を叩かれた。
「終了よ」
見るとルターナが呆れ顔で俺を見ていた。
「何すんだよ」
「自分の限界くらい知っときなさい。目、真っ赤よ?」
そう言われて目を手で擦る。
ぬるっとした感触があり、手を見ると血がついていた。
「む……」
「今度から全知の練習は3回までね」
「いや─」
「3回まで」
ルターナは有無を言わさずに言う。
「……わかった」
「全く、世話が焼けるわね」
「じゃあ次は創造の練習だな」
ルターナが頬を引っ張ってきた。
結構、力強いな。
痛いぞ?
「いふぁい」
「バカなこと言ってるからよ。せめて休憩をはさんでからにしなさい」
「はいはい」
▽▽▽
それから少し休憩をとり、俺は創造の練習を始めた。
全知に比べれば作るだけだし楽だと思った。
思ったが、現実はつらい。
「ぐっ、むっ、くっ」
確かに、全知のように倒れることはない。
しかし──
ボフッ!
「……くそ」
むっちゃくちゃムズい。
今なんて鉄の塊を作ろうとしただけなのに魔力が霧散してしまった。
ルターナが言うに創造は完全な無から作るのが真骨頂だそうだが、今の俺にそれは無理だ。
なので、元として魔力を使う。
まず魔力を手のひらに集めて固定する。
これはそこまで難しくない。
次に魔力に実体を持たせる。
これもそこまで難しくない。
その理由はここまでは普通の魔法とそこまで変わらないからだ。
魔法も、起こす現象を魔力で具現化させる過程で魔力を集め実体を持たせるのだ。
しかし、魔法はここからが創造と違う。
魔法は現象を具現化させるとき、神が作ったスキルによる補助を受けられるのだ。
創造にはそれがない。
だから創造により具現化させるときは、かなり強固なイメージが必要になる。
イメージが弱いと、さっきみたいに実体を持たせた魔力が霧散していく。
「ままならないもんだ」
次は神技の練習をしようと思ったが全知と創造で大分魔力を使ってしまったため、今度にする。
魔力errorなのに、神のスキルは燃費が悪い、と考えながらルターナとこに行き、頭を撫でる。
ナデナデ。
「なんで頭を撫でるのかしら?」
「そこに頭があったから」
「……」
「……」
ナデナデ。
無言で俺は頭を撫でる。
うん、すごくシュールだ。
ちょっと自分でもなにやってんだろって思った。
「…遺跡探すか」
そう言って手を離す。
「あっ…」
………ナデナデ。
「……」
「……」
……シュールだ。
だが、手を離すと少し残念そうな顔をするので満足してくれるまで待つことにした。




