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先生「は~い、それじゃあ皆さん、パーティー組んで~。」  作者: 赤べこフルボッコ
1章始まりまでの努力
4/19

授かりの儀。

ちょっと長いです。

それから数年経った。


あれからその数年間で色々在った。


実践訓練の、雪山訓練で、実際に遭難し、俺の指揮のおかげで誰一人欠けずに帰ってこれたり、実はアンドレア先生は俺達より6歳上なだけだったり、魔法で肉壁の全身の関節を固めて見たり、肉壁遠投チャレンジをしてみたり、エイリーの親御さんに無言で握手を求められたり、アクセサリー作ったり、パン焼いたり、アンドレア先生の机に魔蟲を仕掛けてみたり、とにかく色々在った。


「何ニヤニヤしてるんですか?ロッド君?」


いかん、また先生の額に青筋が。


「ちょっと思い出に浸っていただけですよ」


「まぁ、そういうことにしておきましょう。なんてったって、今日は授かりの儀ですからねっ!!」


授かりの儀、授かりの儀とは、世界の意識に対して、祈りを捧げることにより、その人物に会った武器や防具などを授かる儀式のことである。一般的に、この儀式を受け、武器や防具を授かっり、戦う人間の事が、勇者と呼ばれている。では、なぜ神ではなく世界に対してなのかと言われれば、それはこの世界の神のランクが低く、言わば、妖精や精霊の上位互換とされていて、身近なのが原因だろう。そして、その神を上回る、世界の意識と言われる物があり、時たまそれは、人智を超えた結果や災厄を起こす。なので、この世界の人間は、世界の意思を崇めているのだ。


「僕はちょっと心配だけどなぁ・・・」


「心配すんなって、俺達はパーティーなんだからさっ!!」


「アンタ、もう既に良い武器貰ってる気に成ってるわね」


「あぁ!!なんてったって、俺は、近接用の武器の扱いも全て心得たし、魔法職に振られても良いように、魔法もそこそこ使えるように成ったからなっ!!テストも百点しか取ってないしっ!!」


「・・・最後のは完全に自慢だけど・・・こいつの魔法への努力は本物・・・だと思う」


魔法使いの家系に生まれたラーフにもお褒めのお言葉を頂いた。


「僕は槍以外はちょっと自信ないなぁ・・・」


そう言ってこちらに顔を出したのは、濃い深緑色の髪の毛と目をした優男、名をベルン・シュルトと言うらしい。こいつも孤児で、、この施設に救われた俺と同じ境遇の人間の一人だ。


「お前は槍が似合うしな。身長高いし」


「そうだぜ、まぁ、身長なら俺が上だけどな」


「出たな肉壁」


「あぁ?」


「おぉ?」


「アンタら二人ともやめなさいよ。これから儀式だってのに」


「そうですよ。さぁ、皆さん、儀式の洞窟に移動して下さい。」


先生のその一言をきっかけに、俺達は洞窟へと移動していった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


洞窟の中は薄暗く、ひんやりとしていて、奥にある祭壇は青白く光っていた。


「ここまでテンプレ」


「急に何よ」


「いや、お前のツッコミが欲しくて」


アンナとの軽口をはさみながら、祭壇へと向かう。


「それでは、一人ずつこの祭壇の前に並んで下さい。」


先生に促され、生徒たちが並んで行く、俺は一番後ろに陣取った。


「あんなに楽しみにしてたのに・・・一番乗りじゃなくていいの?」


「あぁ、オオトリだからな」


何番か前にいるローイと喋りながら順番を待つ。


すると、祭壇が光り始めるのが目に見えた。


「うおおお・・・俺はこの大きな盾か」


其処に居たのは肉壁だった。本当に壁役を引き当てたらしい。頑丈そうな大盾で、細かい神秘的な装飾が施されている。ほぅ・・・俺のパーティーに入れてやらんでもないぞ。


その後、皆んなが思い思いの武器や防具を引き当てていく。


アンナは派手な装飾を施された大弓。


エイリーは聖なる祈りを聞き届ける宝珠。


ラーフはやっぱり魔法杖。


ベルンは槍。


そして・・・


「次は・・・僕だね・・・」


ローイが神妙な面持ちでつぶやく。


祭壇に歩み寄り、手をかざす。


すると、壁に描かれた魔法陣が青白く輝く。


魔法陣が鼓動するように縮小し、回転する。


そして、その光がひときわ強く輝き、あたり一面を照らす。


「ーーーーっ!?・・・こ、これが?」


その手には、一本の剣が握られていた。


「剣・・・?・・・それに片刃しかないけど・・・」


それは、西洋の剣と、東洋の刀のような、厚みのある刀身に、片刃が特徴の剣だった。


「やったじゃないっ!!ローイッ!!剣と言えば、勇者の花型よっ!!」


あれ?・・・何か、勇者のパーティーに必要な武器、殆ど出てない?


「やった!!やったよ!!ロッド君!!」


「あ、あぁ、そうだな」


一抹の不安を覚えつつ、順番を待つ。


剣はまだ他にも出ていない。


俺には何が来るんだ?剣はもうないにしても、魔法職も・・・無いよな?まさか敢えてのブーメランとかか?そんなマイナー武器渡されても困るぞ?俺。あ、一個前のやつがブーメランだった。


「ほらっ!!ロッド君の番だよっ!!」


まだ興奮が抜け切らないのか、高揚した様子のローイに急かされる。


「お、おう」


俺も負けてはいられないと、顔を叩き、気合を入れ、祭壇に向かい合う。


手をかざす。


ちょっとだけ光る。


ん?なんかしょぼくね?


魔法陣はやる気が無さそうにゆらゆらした後、ちょっとだけ大きく光った。


残された俺の手に握られていたのは・・・


「ひ、標識?」


木の棒に矢印の形の板が貼り付けられた、武器と言うにはあまりにもお粗末な唯の標識だった。


「え・・・何?これ?」


俺が聞きたいわ。


「ひ、標識・・・か?」


「そうみたい・・・だな」


「先生、これは?」


「ちょっと・・・わからないわね・・・」


「・・・先生でも・・・わからない・・・のね・・・」


皆んながざわつきはじめる。

普段無口なラーフも思わず喋らずにはいられない。

だってこれ、完全に標識だもの。軽いし。

矢印には行き先さえ書いていない。


「ま、まぁ、能力を見てみましょう!!各自、広場に移動して下さい!!」


不安だけをその場に残し、皆んなで広場に移動した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おぉ!!俺の盾はなんかすごい防御力だぞ!!それに衝撃波まで出る!!」


「アタシの弓はエンチャントが付くのね・・・」


「風をまとう槍か・・・良いね!!」


「聖なる祈りを聞き届ける宝珠何て素敵ですわ!!」


「・・・魔力・・・増大は・・・素直に・・・嬉しい・・・」


「わぁっ!!すごいよこの剣!!体が軽いし、一時的に移動速度がすごい上がるみたいっ!!」


うおおおお!!すげええええ!!


瞬間移動のように動きまわるローイを見て、皆んな熱狂している。


俺以外は・・・だが・・・


エンチャント付きの弓を持つピンク髪の女。


風をまとった槍を振るう優男。


盾でガチガチに固まる肉壁。


宝珠に祈りを捧げるお嬢様。


魔法杖を振り回す金髪ショートカットの魔法帽を被った無口な魔法使い。


光輝く剣を持ち、人智を超えたスピードで動き回る俺の幼なじみ。


え?俺は?


「フンッ!!フンッ!!」


「ど、どう?ロッド君?」


先生が、標識にひたすら気合を込める俺を見て聞く。


「見て分かりませんか・・・?」


「え?」


「全然ダメですよ・・・何ですか・・・これ・・・」


思わず八つ当たり気味に先生に当たり、地面に標識を投げつける。


すると・・・ポキッと、小気味良い音を立てて、標識が折れた。


「「「「!?」」」」


その場に居た全員が驚いた。こうも簡単に世界の意志から授かった武器が折れるのかと。そして、それが音もなく修復していくのを。


「固有能力が・・・標識の修復・・・なのかしら・・・?」


頭が真っ白になった。


標識の・・・修復?


何の役に立つんだ・・・一体・・・


「ハッ!!使えねー能力引き当ててやんのっ!!ざまーみろっ!!所詮お前なんてそんなもんってことだろっ!?」


肉壁がなんかいっている・・・しかし、何も頭に入ってこない。


「・・・言い過ぎなんじゃないか?」


優男が静かにその怒りを露わにする。


「・・・じゃあお前は、あの能力が何に使えるかアドバイスしてやれんのかよ?」


「・・・うっ・・・それは・・・」


「・・・出来ねぇだろ?・・・俺も出来ねぇよ・・・」


「大丈夫だよ!!それに、授かった武器は、持ち主の成長に対して成長するんでしょ?なら、まだ希望は在るよっ!!」


ローイが励ますように語りかけてくる。

しかしそれは、今のままでは使えないということを物語っていて・・・


「これから実習で魔犬狩りがあるんだしさ、そこでレベルアップすればきっとっ!!」


「うるせぇよ」


「え?」


思わず口から出た言葉と、その言葉に乗せられた憎悪と悪意に自分でも驚いた。

ローイは自分がこんな反応をされるとは思っていなかったのか、未だに理解できていなさそうな顔をしている。

普段みたいに明るい切り返しを、希望在る一言を期待していたのだろう。周りの人間全員がそんな顔をしていた。

俺もそれに気付き、ハッとする。


「すまん、悪ぃ、何でもねぇ・・・」


「そ、そうだよね!!それに、その武器?魔物に対しては効果てきめんだったりしてっ!!」


たしかにその可能性はある。


「ほら、一緒にパーティー組んでさ、そうすれば僕達が守ってあげられるし、魔犬の群れだって僕達がいれば・・・ね?」


そう言って、ローイは振り返って周りの皆んなに理解を求めた。そう『自分の後ろの皆んな』に。


其処には俺は居ないぞ?『僕達』に俺は含まれていない現実を叩き付けられたようだ。


あんまりだ。


誰よりも其処に居たかった。


誰よりも、誰よりも!!その場所にいるのが夢だった!!それがどうだ!?知恵でもなく、家柄でもなく、たった一度の、能力決めだけで取り逃がしたっ!!

俺が何をしたっ!?

誰よりも勉強した、誰よりも多く武器を振るった。血豆ができても止めず、血反吐を吐いても人体強化魔法で乗り切った。皆んなの前ではその努力を隠し、いつかそれが発揮できる日を、肉体全体で楽しみにしていたっ!!なぜっ!?なぜこんなことに成ったっ!?


そしてお前はそんな俺の気持ちを知っていたはずだ。だって俺らはあの日・・・


「・・・ね!!・・・頑張ろうよっ!!」


『頑張ろうよっ!!』か、偉そうに、じゃあ今までの俺は頑張ってなかったとでも?


そんな気持ちを押し殺し・・・


「あぁ、そうだなっ!!」


にこやかに笑うのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


魔犬狩り、それは勇者になりたての人間に課せられる、いわゆるチュートリアルみたいなものだ。

通常、武装しても倒すのが困難な魔物だが、授かりの儀を受けた勇者なら、確実に倒せる相手として有名だ。


『それじゃあ今から、魔犬狩りを開始しますっ!!』


という一言があったのがもう小一時間前、俺は一人で森をさまよっていた。


パーティーは組まない。そう心に決めていた。


なぜなら、世界に授かった武器が魔物に効かないわけがないし、経験値は一人のほうが多く割り振られるからだ。


(大丈夫、俺は一人でも余裕だ。)


そう考えつつも、俺は焦っていた。魔物と出会わない。これは、他のメンバーがパーティーを組んで大方狩り尽くしてしまっているからだろう。


(早くっ!!早く倒さなきゃっ!!)


血眼になって探す。


すると、遠くに、一匹の魔犬の影が見えた。

素早くその方向に向かって走る。その距離がどんどん近づいていく。


「ハァッ!!ハァッ!!」


目的地についた頃には、もう既に息が切れていた。


しかし、この流れで勇者に出会ったのだ。魔犬も慌てていよう。


そう考えていた。


しかし・・・


・・・ニヤリ・・・


「ーーーーっ!?」


笑った。魔犬が。獲物を見つけたと言わんばかりに口の端を歪めて笑っている。


「ーーっこの!!」


手に持っていた標識でそのいやらしい笑みを浮かべた顔を下顎から殴りつける。


「ウィヒィッ!!」


一瞬驚いたようだが、また標識が折れてしまった。しかし、すぐに修復される。


「・・・効いて・・・無いのか・・・?・・・」


マズイ。


マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!


「クソッ!!ゴミカスじゃねぇかっ!!こんなのっ!!」


苛立ちを標識にぶつけながら逃げる。


(ここは一時退避だーーーー)


後ろを振り返った時、月夜に鋭く光り輝く牙が見えた。


「ーーーーなっ!?」


ふと、魔犬の足元を見る、すると其処には・・・


「魔法陣っ!?・・・こいつ・・・上位種かっ!?」


魔物には、通常種と上位種そして、変異種といるのだが、こいつは魔犬が長い年月により力を蓄えた上位種だ。


「まさか魔犬が加速魔法を使うなんてっ!?」


とっさにしゃがんで避ける。が、今度は覆い被せられてしまう形になった。


必死に喉笛を噛み千切ろうとしてくる牙を、標識で押しのける。しかし、爪は俺の体中を引き裂いていった。


(痛ぇっ!!止めろっ!!止めてくれっ!!助けてくれっ!!)


あまりの痛みに声が出なかった。


でも、出なくて良かったと理解する。


だって、其処には・・・


「ロッド君っ!!」


俺の幼なじみを筆頭にする、なりたての勇者が全員勢揃いしていたのだから。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~遡ること二十分前~


「えぇっ!?まだ帰ってきていないっ!?」


僕達が魔犬を狩って帰ってきた時、まだロッド君は帰ってきていなかった。


最初にこの魔犬狩りが始まった時、彼をパーティーに誘おうと思ったのだが、その姿はなかった。


仕方なく、いつものメンバーからロッドくんを抜いた構成で魔犬狩りにでかけたのだが。


「はい・・・私も心配で・・・」


アンドレア先生はいつもと違ってだいぶ困惑しているようだ。


それもそうだろう。クラスきっての優等生がまだ帰ってきていないのだから。それに心配なのは武器のことだ。どう考えてもあの武器では魔犬には勝てない。


「居ないのはロッドくんだけ・・・先生っ!!わたっ・・・僕達全員で探してきますっ!!」


そう言うと、僕はその場に居たクラスメイト全員を連れて森へ駆け出していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして、現在


「ロッド君っ!!」


「っ!?お前ら!?何で此処に!?」


「決まってるでしょっ!!助けに来たのよっ!!」


アンナが弓を引き絞り、放つ。


放たれた矢は赤い炎をまとい、魔犬に向かって一直線に向かっていった。


「グルァッ!!」


魔犬はそれを体を捻って避けると、地面に刺さった矢を見て、アンナにターゲットを変えた。

足元に加速の魔法陣を発動させ、アンナに向かって跳びかかっていく。

しかし、その間に盾を持った肉壁が割り込む。

どっしりと構えたその盾に、勢いをすべて殺された魔犬は、一瞬たじろぐ。


「今だっ!!撃てっ!!」


その掛け声と同時に、遠距離部隊が支援砲撃を放った。

魔法や鎖鎌、ブーメランまで飛んでいた。

魔犬はそれを何発か食らいながらも、勇者一団を睨みつけていた。


(すげぇ)


連携がしっかり取れている。

それはロッドがこの数年間で出来る限りクラスメイトに叩き込んだ戦術を完璧に再現していた。

まぁ、盾が食い止め、遠距離砲撃を撃つというだけなのだが。

そして・・・


「ハァッ!!」


いつの間にか光る剣を持ったローイが後ろから回りこんでいた。


「グッ!?」


反応が遅れた魔犬に対して容赦無い一撃。確実に急所をえぐった。

その一太刀で、魔犬はあっけなく死んだ。


(俺は何にもできなかったのに・・・)


見れば勇者一団は傷一つ無かった。俺だけだ。ボロボロなのは。


「大丈夫?」


返り血を拭きながらローイは振り返る。

ロッドはそれに返事ができなかった。

ただ、見つめることしか出来なかった。

劣等感を宿した瞳で。


「何で・・・お前らは無事なんだ?」


俺はこんなに傷だらけなのに。


「そりゃあ、武器が強いのと、魔犬が俺たちよりも弱いからだろ。」


誰かが言った。

確かに魔犬は弱い。たとえ上位種であっても、授かりの儀を受けた勇者なら、一人でも苦戦すること無く倒せるはずなのだ。


「まぁ、お前の武器は残念だったからな・・・仕方ないんじゃないか?」


仕方ない。仕方ないのか?


「俺だって、出来た」


「は?」


「俺一人でもどうにか出来たって言ってんだよ!!」


俺一人でもどうにか出来たはずなのだ。こんな武器じゃなければ。

俺はお前らなんかとはレベルが違う。

目指しているものが同じでも、積んだ過程が違う。

お前らは血反吐吐くまで修行を積んだか?

いいや、こいつらはそんなことはない。なんてこと無く入学し、普通に勉強し、普通に暮らしていただけだ。


そんな奴らに偉そうにされてたまるか。


「お前、助けてもらっておいて、その口の聞き方は何だ?」


非難の目が集まる。


しかし、今の俺を動かしているのは理性ではなく、粉々に砕かれたちっぽけなプライドと、努力が報われなかったことに対する怒り、そして意地だけだった。


「誰が助けろなんて言った!?このぐらいの敵、俺一人でもどうにか出来た!!」


そう言って魔犬の死体を何度も何度も蹴りつける。

ビチャビチャという音と、靴底に張り付くような肉と血の感触が気持ち悪い。吐きそうだ。


「てめぇ!!」


「おい、もう行こうぜ」


「そうだな。それよりローイ!!お前すごいじゃないか!!」


「え?あ、ありがとう」


「ほら、お前らもそんな無能ほっといてさっさと先生ん所行こうぜ!!」


そう言って、今回の功労者であるローイを取り囲むようにして、クラスメイトたちは俺から離れていく。


途中アンナや肉壁と目があったが、そらされた。そして二人もクラスメイトたちの輪に加わる。


「あいつ、授業じゃいっちょ前だけど、まさか最終試験で無能になるとはな!!」


クラスメイトたちは笑っている。さっきの俺の態度が気に食わなかったのかもしれない。

だが、有象無象など特に気にならなかった。唯・・・


「あいつは今度から俺たちが守ってやらなきゃなんじゃね?」


「・・・そうだね!!」


ローイが一瞬こっちを振り返り、俺に哀れみの目を向ける。

そして、横で笑う男の言うことに肯定する。微笑みながら。

その場を収めるように、取り繕うように。哀れみの目はそのままに。


それを見た時、俺は幼なじみがどこか遠くに行ってしまった錯覚に陥った。


アンナもエイリーも肉壁すらも同じ表情を浮かべていた。


過ぎ去っていく背中を見送りながら


「・・・お前らは・・・お前らだけは、そんな顔で笑ってんじゃねぇよ!!」


その叫びがあいつらに届いたかどうかはわからない。


しかし、その原因が自分にあることぐらい、自分でもわかっていた。

閲覧有り難う御座います。

作者の趣味で書いている小説ですが、面白ければ幸いです。(自信は無い。)今後も精進していきますので、よろしくお願いいいたします。


なるべく早めに更新していきたいなぁ。

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