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先生「は~い、それじゃあ皆さん、パーティー組んで~。」  作者: 赤べこフルボッコ
1章始まりまでの努力
3/19

学び舎にて育つもの。

「ふへへへへへ・・・ふっへへへ・・・」


「ロッドちゃん?」


「デュフッ!!デュフフフフ・・・コポォ・・・」


「ロッド!!ロッドちゃん!!」


「ハッ!?」


「何気持ち悪い笑い方してるんだい。男前が台無しじゃないか」


「ん?俺、笑ってた?」


今日はとうとう勇者学校入学の日だ。胸が踊る。そして、笑いがこみ上げてしまうのも無理がない。

しかし、この婆さん、下げて上げるとは、中々の話術の持ち主だ。


「そんな様子で大丈夫かい?」


「大丈夫だ。問題ない。」


「それを言ってて大丈夫だった奴を見たことが無いんだけどねぇ・・・」


「だって、あいつらと同じクラスなんだろ?机で隣り合っちゃたりして・・・ふへへへ・・・」


「はいはい、そんなに友達と会えるのが嬉しいのね」


婆さんは、にこやかに微笑みながら、俺の心を見通す。


「ち、違わいっ!!これは唯単に動悸息切れが止まらないだけだい!!」


「だったら一大事じゃないかね!?」


婆さんに軽いげんこつを見舞われた。人の体を心配しているのか、傷つけたいのか分からない婆さんだ。


「おいっ!!止めろよ婆さんっ!!俺のこの祝福された頭脳が、入学前に馬鹿にでも成ってくれたらどうするっ!?」


「アンタは頭が良いのに馬鹿だよねぇ」


行く末を心配するような目で見られている。おい、止めてくれ。


「当然だろ!?これから勇者になるんだぜ!?頼れるリーダーが頭がいいのは前提条件だからな!!」


「そうかいそうかい」


婆さんは笑っていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あれだけ心配していた入学式も恙無く終わった。周りを見渡せば、ローイもいたし、アンナも居た。思わず二人に手を振ったのだが、ローイは、それを苦笑いで応じ、アンナに至っては、口を手で抑えながら、必死に笑うのを我慢していた。その事について考えながら、俺は自分のクラスに向かった。

そう!!我が愛しの幼なじみたちが居る、俺のクラスへっ!!


「グッモーニンエブリバディー!!はじめまして、そしてこれからよろしく!!」


意気揚々と、教室の引き戸を蹴破る。

突然の事に、クラスに居た、これから友人になるであろうクラスメイトたちは目を皿のようにまんまるにしている。

俺にはそれが、俺の登場を歓迎しているように見えて、とても心地よかった。

当然そこには、俺の愛するローイとアンナも居るわけで、アンナに至っては、俺の事を、ゴミを見る目で見つめていた。

おいおい、照れるじゃないか。


「おーいっ!!ローイっ!!アンナっ!!俺だーっ!!結婚しようっ!!」


テンションが上がりすぎた俺は思わず、二人に求婚していた。

アンナは露骨に嫌そうな顔をして、目をそらし、ローイは赤い顔で、もじもじしていた。

おい、逆じゃね?


「おいおいアンナ、無視するなんてあんまりじゃないか?俺とお前の中だろう?ローイはちゃんと応じてくれたぞ?」


「あーもうっ!!何でいきなり話しかけてくんのよっ!?私達まで変な子だと思われちゃうじゃないっ!?」


時すでに時間切れ。教室中の視線は今、ロッドとローイとアンナの三人だけに向けられていた。


「そう、此処は今、俺達三人だけのステージなんだっ!!」


「おー、パチパチパチパチ」


「ローイも拍手しなくて良いの!!」


俺の特に意味のない一言にも反応してくれるローイと、それに突っ込むアンナ。この世界に他に何が必要だろう?この三人がいれば何でも出来るんじゃ無いか?そう、俺達こそが世界であり、全てであり・・・・


「そう、俺達こそが真の人類でありアリアリアリアリ!?痛てててててて!?こ、こめかみが割れるっ!?」


「入学早々、扉を蹴破ったのはアンタか!?アホか!?」


気が付くと、俺の後ろには十八歳ぐらいの女の子が立っていた。

色素の薄そうな銀髪に、毛先に行くに連れ、ピンクがかった綺麗や髪をした。顔立ちの整った女性である。そんな女性が怒り心頭の表情で、俺のこめかみをひっぱたりしている。嗚呼。いつの間にやらか、MAXまで上がりきったテンションが下がっていく・・・。思わずお礼を言いたくなる。


「有難う御座います。」


「いい加減にしなさいっ!!このガキっ!!」


「アリーヴェ・デルチッ!?」


まさかの頭頂部を狙った的確なチョップである。今日だけで何回脳にダメージを喰らえば良いのだ?


「あ、貴方は・・・?」


ローイが恐る恐る聞く。


「私はアンドレア・キルエス。今日から君たちの指導者だ。」


指導者を名乗るその女性は、にこやかに自己紹介をした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その後、自己紹介は生徒たちが行う形となった。クラスの大体が自己紹介を終えていく、今自己紹介しているのは、少しガタイの良い奴で、名前はゲイン・ドリューと言うらしい。肉壁になりそうだ。そして、そろそろ、ローイの順番が回ってくる。頑張れ。あいつは恥ずかしがり屋で人見知りだから心配だ。頑張れ!!そういう思いを込めて俺はサムズ・アップ。


「僕の名前はローイ・ロスです。宜しくお願い致します。」


そして次はアンナの番になる。


「私はアンナ。アンナ・ロールよ。宜しくね。」


そしていよいよ、俺の番だ。


「俺の名前は、ロッド・ウィルソン!!ロッドで良い。其処にいるローイとアンナとマブダチさ。これから、この二人と、ナンバーワン勇者になるつもりだから、よろしくなっ!!」


ローイは目を輝かせ、アンナは顔を覆った。恥ずかしがり屋さんめ☆


「三人なのにナンバーワンなのか・・・」


そう呟いたのはさっきの肉壁だった。


「こ、これで全員終わったかしら?次は授業内容について触れておきたいんだけど。」


アンドレアはそう言うと、黒板を叩いて生徒の視線を集める。


「そんな事をしなくても、俺の視線は釘付けだぜ?」


「それじゃあ授業内容について触れて行くわよー」


スルーされた。そしてアンドレアは授業内容の説明について入っていく、が、ぶっちゃけ、座学と、実践をやるということだけだったので、特にこれという事は無い。座学については、もう既に全部勉強してあるし、後は、実践だけだろう。


「ロッド君?聞いてました?」


おっといけない、先生の額に青筋が浮かび始めた。


「大丈夫ですよ。聞いてますよ。青魔草とヒールポーションを同時に摂ると、効果が増すって話ですよね?」


「全然聞いてないじゃない!?って言うかよく知ってたわね・・・そんな事・・・」


「勉強しましたから。」


エリートオーラをこれ見よがしに放つ。おぉ、このクラス中から寄せられる視線の優越感よ!!


キーンコーンキーンコーン・・・コーンカーンコーン・・・


「変わったチャイムだな・・・」


「はい、それじゃあ今回は此処までっ!!寮を利用している生徒は可及的速やかに寮に帰って下さい。それ以外の生徒はしっかり帰宅するように。」


「先生、この歳のガキどもに可及的速やかにとかちょっと難しいと思うぜ・・・?」


この先生も中々抜けている所がある。言い終わると同時に先生はさっさと歩いて行ってしまう。


「おい、其処のお前っ!!」


まぁ、アレでも可愛げがあるから良いのか。


「おいっ!!聞いてんだろっ!?」


「何だようるせぇなぁ・・・ってなんだ、肉壁君か。」


「誰が肉壁だっ!?俺の名前はゲインだ!!ゲイン・ドリューだ!!」


「そうやって、結局自分から自己紹介しちゃうあたり、良い子感が抜けきれてねぇんだよなぁ・・・」


「うるせぇ!!お前ぇムカつくんだよっ!!さっきも無駄な知識ひけらかしやがってっ!!」


「無駄・・・?・・・無駄だと・・・?」


別にムカつくのは構わないが、こいつ、本気で、さっきの知識が無駄だと思ってるのか?回復手段については、それこそ生命線だろうに。特に、肉壁には。


「そうだよっ!!無駄だよっ!!とにかくてめぇは一度、ボコボコにしてやらねぇと気がすまねぇっ!!」


どうやらこれは喧嘩になる流れらしい。取り敢えず、ローイとアンナに目を向けてみると、ローイは両目を覆い、アンナは、両手を拳に握り、ファイティングポーズを取ってやる気満々で目を輝かせている。あいつ、以外に好戦的だよね。


(はぁ~・・・あんまりガキ相手に、本気に成ったりしたくないんだけどなぁ・・・)


まぁ、言っても、ガキ相手に本気を出す用な事は無いと思うが・・・この肉壁君が、俺と同じように、身体能力な特徴がないとも限らない。仕方なく俺もファイティングポーズを構える。


「へへっ!!逃げねぇことだけは褒めてやるぜっ!!」


「そうかよ」


「ふんっ!!」


返事を返すとほぼ同時、肉壁君はその体格とは思えないスピードで殴りかかってくる。

そして、俺はその場から動かなかった。


「キャッ!!」


「ヒィッ!!」


教室には、俺がそのまま殴り飛ばされるだろうと予測した生徒たちの悲鳴が飛び交う。

しかし、残念だが、その予想には従えない。


「ーーーー!?」


肉壁君が驚くのも無理が無い。

俺は、その場から動かなかった。


右手以外は。


「な、何ぃ!?」


俺は右手だけで、その顔面をめがけて飛んで来る拳を受け止めたのだ。


「あらよっと」


受け止めた右手を弾き、一歩前に出て、その右手で殴り飛ばす。


「うげぇ!!・・・」


「他愛なし」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


クラスメートは思わぬ展開に大盛り上がりだ。アンナはガッツポーズのまま飛び上がり、ローイはピョンピョン跳ねて喜んでいる。その他にも、お嬢様風の髪型の女子は、両手を胸の前に組み、顔を赤くしてその戦いに見入っていた。無口そうな魔法帽を被った女子も、少し顔を上気させ、僅かに興奮しているようだ。このクラス・・・女子多くね?可愛い女子が多いのは良い事だ。そして、その中に交じるローイの違和感の無さよ。


「おい、大丈夫か?肉壁君?」


「うるせぇっ!!お前の助けなんか借りねぇっ!!」


そう叫ぶと、肉壁君は、近くにあった、分厚い本や、チョークを投げてきた。

問題無い。


こいつがノーコンじゃなかったら。


投げられた分厚い本は二冊。一冊は、ローイの方へ。これを駆け寄ってキャッチ。そして、二冊目は、さっきのお嬢様風の女子の方へ、少し、弾道が低めのこれを、なんとかかがむようにしてキャッチした。しかし、チョークがお嬢様風の女子の顔へ向かって行く。お嬢様風の女子は、思わず、目を閉じ、衝突を覚悟する。しかし、当てさせない。俺は勇者になるのだ。目の前で傷つく人を放ってなど置けなかった。


対処法は簡単。今俺はお嬢様風の女子の前でかがんでいるのだ。


ならばーーーー


「ウォオオオオオッ!!」


立ち上がるのみ!!


チョークが全てオレの顔に当たる。頬が硬い何かに打たれる感触。しかし、痛みは殆ど無い。しかし、粉が付くのだ。


そして、全てのチョークを受けきると・・・


「大丈夫ですか?お姫様?」


粉だらけの頬で振り返る。出来る限りダンディーに。


「は、はい・・・あ、貴方はロッド様・・・と申しましたわね?・・・ありがとうございます。」


驚く事に、この女子は恋に落ちた顔をしているのだが、チョークの粉を落とすのに必死な王子様はそれに気づかない。


後に、この事件がきっかけで、ロッドは『粉だらけの英雄』と、呼ばれるのだが、それは、荒れに荒れた、教室を、激怒するアンドレアと一緒に、片付けた後だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そのように、荒れた入学式を乗り越え、着々と事は進んで行った。数年も経てば、肉壁君とも仲良くなり、今では向こうから、一方的に突っかかってきて、俺に返り討ちにされている仲だ。お嬢様風の女子は、やはりと言うか貴族の出だったようで、名をエイリー・ゾォス・ペローと言うらしい。エイリーは事あるごとに金に物を言わせたプレゼントをしてくるように成った。何でだろう?無口な魔法帽を被った女子は、これまた魔法使いの家の出らしく、名をラーフ・スルヴィと言うらしい。この娘との会話は非常に有意義で、魔法について詳しく教えてもらったり、熱い談義を交わしたりしている。


だからと言って、幼なじみの二人を疎かにしたりはしていない。ローイとアンナ。あいつらも俺の大事な親友である。


今も、こうして、幼なじみ二人と共に、夕日の綺麗に見える公園で、ひたすらだべっているのだ。


「あぁ~今日も疲れたなぁ~・・・特に肉壁」


「夕日、綺麗だねぇ」


「見て見て、このブレスレットッ!!昨日買ってもらったんだけど・・・」


一向に咬み合わない。会話って難しい。


俺は愛すべき肉壁に対する愚痴をこぼし、ローイは好物のレーズンパンを頬張りながら、夕日に見とれている。そして、アンナはアクセサリーの自慢。いつも通りだ。


「もぉ~自慢しがいがないわね!!ちゃんと聞いてんの!?」


「聞いてるよ。アクセサリーだろ?そんなに欲しいなら、俺が作ってやるよ」


「え・・・?・・・アンタ、アクセサリーなんて小洒落たもの作れるの・・・?」


「あったりめぇよ。お前さん、俺を誰だと思ってるんで?」


「すごいねぇ~流石ロッド君だねぇ~」


「お前は本当に俺の癒やし要素だよ。ローイ。」


「で、どんなん作れるのよ?」


「え?これとかそうだけど?」


「え!?アンタがいつもしてるその指輪、自作だったの!?」


「あぁ、自分の誕生日に自分で作った。」


「友達作りなさいよ・・・」


実際、俺が身に着けているもののほとんどが、俺が自作したものである。将来旅に出て、自分でどうにかできることは自分でどうにかしようと、俺はあらゆる技術をみにつけ、勉強している。このアクセサリー制作もその一環で、エイリーがくれる高額のプレゼントのお返しに、良く送っている物も在る。


「へ、へぇ~アンタ、意外とセンス良いじゃない」


こいつ、露骨に目をキラキラさせてやがる。


「こんぐらいなら今から家帰って作って、明日になら渡せるぞ?」


「頂戴っ!!出来れば首飾りで!!」


「オッケー。承った。」


「ぼ、僕も良いかな?」


「お前も欲しいのか?」


「う、うん。・・・ダメだった?」


「良かろうもん」


「い、良いの!?」


「モチのロン」


「やったぁっ!!」


ローイはその場で、嬉しさに身を任せ、飛び跳ねている。何と無く、必死な顔をしていたようだが、あの顔で迫られて、NOと言えるだろうか?・・・いいや、性的な意味ではなく。


「じゃあモチーフは・・・」


どうしよっかなぁと言う間も無く、それは俺の目に止まった。


「じゃあ、アンナが太陽で、ローイが月な」


その一言で察したのか、二人も目の前の夕日を見る。


「絶対、この三人で、勇者になろうなっ!!」


「うん、約束だよっ!!」


「まぁ、良いんじゃない?アンタら二人がやるなら、アタシもついて行ってあげるわよっ!!」


半ば夕日に叫ぶように、約束をした後、それぞれの家へと解散したのであった。









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