19話 釣り合わぬ報酬。
一年ぶりです。これからまた投稿していきます。
・・・読んでる人いるんですかね・・・?
「ふぁ~あ・・・」
時刻は昼過ぎ、俺は前日の皮剥ぎ討伐祝いの宴での疲れを癒すように何でも屋本部で眠っていた。
「アンダー!!いつまで寝てるっすか!!起きるっす!!」
「んぁ・・・?」
「外!!外見るっすよ!!」
「あ?」
リフィルがやたらと騒いでるな・・・。
俺は寝起きで重い体を引きずって窓の外を見る。
と同時にあまりの驚きで窓からずり落ちそうになる。
「ファ!?」
そこにいたのは総勢50人ほどのフルプレートの騎士団。
それが狭い路地裏をガチャガチャと音を立てて歩いて来る。
その先頭にいた隊長と目が合う。
「アンダー殿おおおおおおおおおお!!おはようございまああああああああああす!!」
「うるせぇ!!」
王国騎士団!?
昨日皮剥ぎをニコスタリアに搬送していたんじゃないのかよ!?
「もう終わったのかよ」
「いやはや、ニコスタリアまでは徒歩で搬送していたのですが、向こうの大魔導様が帰りは送ってやろうと集団転移魔法を使って頂きまして」
「この人数を!?」
総勢50人を超える王国騎士団をたった一度の転移魔法で送り返したのか!?
何てバケモンだよ・・・。
「はい、そして今回はアンダー殿や今回の功労者の皆様に報酬を与えるという事です」
「何が貰えんの?」
「それではこちらに来ていただけますか?」
「おう」
俺は素直に準備をして階段を下りる。
・・・やっぱり目の前にいると迫力あるな、こいつら。
「それではこちらに」
「おう・・・おう?」
何か馬車に乗せられたんだけど。
「え?ここで受け取るんじゃねぇの?」
「はい、少々移動します」
俺を乗せた馬車はゆっくりと発進し、路地を抜け、そのまま大通りに出る。
大通りに出た馬車はまるでパレードの様に大通りを練り歩き、貴族外に向かう。
あ、あのでかい家、前に俺が依頼受けた家だ。
「どこまで行くんだ?」
「まぁまぁお待ちください」
貴族外もしばらく進んできたな・・・。
あ、めっちゃでかい家がある。
いや、違う。
あれ、王城じゃね?
「おい、王城向かってないか?おい」
「いやぁ、ははは」
「はははじゃねえよ!!」
こ、こいつら!!
俺を逃がさないようにがっちり両脇をホールドしてきやがる!!
「離せ!!は・な・せ!!」
「いやぁ、ははは」
「はははじゃねー!!」
そうこうしているうちに、馬車は王城に着いてしまった。
「・・・あー、着いちゃったよ・・・王城・・・」
「そんなに嫌ですかな?」
「いや、嫌ってわけじゃないんだけど・・・」
何か・・・場違いじゃね?
ぼろいローブに全身を包んでちょっとキモイ仮面を付けたぽっと出の自称勇者で二つ名が負け犬だぞ?
そんなのが王城入るって・・・。
最初の村を出たばっかの勇者ってこんな気持ちだったのかな・・・。
「こちらです」
「はいはい」
さすがに待合室的な所に通されるだろう。
「他の皆さんはすでにお揃いです。ささ、お早く」
「他の皆さん・・・?」
ゲンさんとかか・・・?
いや、でも、そしたら普通同じ馬車に乗せられるはずだよな?
「ってこの扉・・・」
「えぇ、王の間です!!」
「うっそだろお前!!」
「他の皆さんはもう中でお待ちです」
「中で待ってんの!?王の間で!?」
王の前で何時までも俺を待たされる奴らの気持ちも考えてやれよ!!
「では、お入りください」
「半ば脅しだよね・・・」
「では!!アンダー殿のお入りです!!」
重厚な扉がギィっと音を立てて開かれる。
そこには既に何人かが跪いていた。
あ、めっちゃ足震えてる・・・。
おい、止めろよ、そんな目で見るなよ。
悪かったって・・・。
「ふむ、これで全員揃ったようじゃな」
「はい」
「では右から、『天眼』、『断絶姫』・・・それと・・・その・・・『負け犬』・・・いや、これ本当に二つ名合っとるのか?
「はい、間違いありません」
「ふむ・・・まぁどんな二つ名であれ、皮剥ぎを追い詰め、捕らえたのもまた事実。人間なやっぱり中身じゃよ。なぁ、大臣」
「全くですな」
どんな会話だよ、と思ったが、成程。
先ほどまで俺の姿を見てひそひそ話をしていた貴族らしき奴らが一斉に黙った。
王はさり気無く俺にウィンクをすると、話を再開させる。
「ふむ、皆、知っていると思うが、わしが、わしこそが、この国の国王、エルモラ・ロードネスである。今回は、この皮剥ぎ騒動を解決するにあたって、一際活躍した者達に褒美を与えたく、こうして呼び出させて貰った」
突然雰囲気を変えた王に、ちょっとだけ背筋が伸びる。
「ではまず、皮剥ぎを見つけ、指名手配した『天眼』のグリゴレ。そなたには望み通りの金貨500枚を」
「は!!」
「次に、その皮剥ぎと一時交戦し、奴を追い詰め、情報提供をしてくれた『断絶姫』のティア。そなたとそなたのパーティーには土地・・・だったか?後程土地の候補をリストにまとめて渡しておこう」
「ありがとうございます」
「先の二人はS級冒険者としてふさわしい働きをしてくれたな」
「!?」
S級冒険者!?
しかし、皮剥ぎはあんまり追い詰められていたようには見えなかったが・・・。
「そして、『負け犬』の・・・アンダー?これは偽名か?まぁよい。そなたには希望していた入国、出国税の免除だな。後で書面を渡そう。これがあれば身分証明にもなるだろうて」
「あ、ありがとうございます!!」
「で?」
「で?」
「それだけでよいのか?」
「はい?」
「もっと何か無いのか?」
「無いです」
「いやいやいや、そなたはまだ言うなればぽっと出の冒険者なのだぞ!?」
「お金には困っていないので」
「いや、そうでは無く!!駆け出しなのにS級賞金首を捕らえたのだぞ!?」
「と言われましても・・・賞金も貰えるんですよね?」
「与えるわ!!当然じゃろう!!何か無いのか!?金か!?土地か!?装備か!?」
「王よ!!お気を確かに!!」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
王は水を飲んで息を整えている。
う~ん、何かねだった方が良いのだろうか?
「あ、じゃあ・・・」
「何じゃ!?何でも言え!!」
「お世話になった人たちにお礼がしたいです」
「良い子!!ねぇ大臣!!この子良い子!!」
「全くですな!!親の顔が見てみたい!!」
「孤児です」
「うちに来なさい!!」
「王よ!!流石にそれは問題です!!」
「では、勇者養成所とロネースル何でも屋と酒場と・・・ギルドの皆さんに・・・」
「分かった!!金をばら撒いておく!!」
この国王大丈夫か?
悪い人じゃ無いんだろうなぁ・・・。
「うむ、うむ!!ではこれにて贈呈式を終了とする!!」
「「「「は!!」」」」
そうして俺は兵士に促されるまま外に出された。
王城を見学するかとも言われたが、断った。
この格好で出来ればうろつきたく無い。
何だかんだで俺以外の奴らは良い格好してたしな。
あ、あそこでS級冒険者二人が歩いてる。
なるべく背を丸めて小さくなって目の前を通る。
「なぁ、あいつが本当に皮剥ぎに致命傷を与えて捕らえたと思うか?」
「さぁな、しかし・・・二つ名が・・・だが・・・実際に奴に助けられたと言う国民が大勢いる。奴はそれだけの実力を有しているとみても良いんじゃないか?」
「でもよぉ・・・『負け犬』だぜ?大方王国騎士団が来るまで逃げ回っていただけなんじゃないか?」
「その辺にしておけ、実際に目にもしてい無いのに悪く言う事を私は好か無い」
何だかまだまだ評価は低いんだなぁ・・・。
もっと頑張らないと!!
税の免除をしてもらったら早速この国を出てみるかな。
一度勇者養成所に帰ってみるのも悪く無いな。
俺は若干浮足立ちつつ王城を後にするのだった。