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神様、目覚めました

 生活の意味がよーくわかりました、神様。

 あと楽だけど楽じゃありません、神様。

 間違えました、私も神様なんですよね神様、多分。



 やけに重苦しい息を吐きながら、私は白磁の天上を眺めていた。

 私が寝かされてるのは豪華すぎる、天蓋付のベッドでどこもかしこもとにかく真っ白だった。

 部屋も二十畳もあるけど、正直落ち着かないし、中世の神殿の一室のようなレイアウトで、できたら日本人なので畳とかせめてフローリングでお願いしたいな。

 だって落ち着かないんだもの。

「お目覚めですか、カスティア様」

「……あのー、ここどこですか?」

 側に控えてくれてたんだと思う、薄いピンク色の長い髪をした女性が笑顔を浮かべながら答えてくれた。白いローブみたいなのがとっても似合う美人、男だったら恋人にしたいです。

「ここはヴァルルイという世界を見守る神の国エテルク。神の住まう国です。神でなければここに立ち入ることもできず、住むことも許されません。そしてあなたもまた神なのです」

 あんまり神って連呼されると、変な宗教団体に入った感じがするんだけど単に疑いすぎなのかな。

「カスティア様はかつての記憶がないと……失礼いたしました、詳細をお話する前に名乗らないとは無礼を致しました」

「はぁ」

 無礼も何もよくわからないから、説明から先でも気にしない。

 とりあえず神様なんだよって言われて、ここに寝かされたぐらいしか私は知らない。

「私の名はマール=イスターシア。慈愛の神と呼ばれる者にして、統べる四神のお一人カスティア様に仕える者。仕える者ではありますが、統べる神のしもべではありません」

 仕える者ではあるけど、僕じゃないってどういう意味かな。

「本来はカスティア様に仕える、同様の力のある人物がおります。ですがその者は異性であり、異界から女性として帰還されたカスティア様の生活を補佐するには不都合が生じましょう。そこでカスティア様と懇意にしておりました私が傍に控えることとなったのです」

「生活面だと確かに男性より女性のほうがいいです」

 だって着替えとかその辺のサポートも入ってくるんじゃないかな?

 さすがに男の人は嫌だなぁ。

「ですので私は生活面を、統べる神としての知識と護衛はカスティア様に仕えていた者が傍に控えることとなります。……以前生きた場所とは違い、違和感や価値観の違いで苦しまれることもございましょう。ですが」

 そっと私の右頬に触れながら、イスターシアさんでいいのかな? 笑顔なのに悲しそうな目をしていた。

「貴方様はきっと乗り越えられる強さをお持ちです。それに私たちも支えていきますから。ですから、もう……」

「え、え。待って、イスターシアさん!」

 葉っぱみたいな緑色の大きな瞳から、ぽろぽろと涙をこぼしている。

 私は慌てて起き上がって、なぜかイスターシアさんをぎゅっと抱きしめていた。

「泣かないで下さい、ええと、こうすればいいかな」

 頭をやさしくさすると、くす、と小さな笑い声が胸の中から聞こえた。

「……ありがとうございます、カスティア様。それと私のことはマールとお呼び下さい。イスターシアは数え切れぬほど存在しておりますから」

 涙に濡れた慈愛の神様は、また美しくて私は頬を赤らめながら簡単な説明を受けた。




 私が転生した場所は異世界であること。

 そもそも私はこの世界の神様で、不慮の事故で死んで別の世界、私にとっては地球で生まれ変わってまた死んで、この世界の神様として戻ってきたということ。ややこしいね。

 だからマールさんは、戻ってきて嬉しかったらしい。どういう仲だったか、前の前の私の記憶は全くないのでさっぱりわからない。

 でも泣いてしまうぐらいだから、よっぽど悲しかったんだと思う。どんな迷惑な死に方したんだろう、私は。

 そして神様の国には神様が大勢いて、ありとあらゆる神様が生まれたり時には消えたりするらしい。

 そういう風に世界が決められているので、その枠組みで生きるしかないこと。

 そんな神様たちの頂点に立つのが、四人の神様通称統べる神。

 私はそのうちの一人だったらしい、ありとあらゆる神様を呼び寄せ力を使える。それでも死んじゃったからどんな状況かさっぱりわからないけど、落ち着いたら誰かに聞けばいいと思ってる。

 他にも細かい規則とかあるけど、少しずつ覚えることになった。そもそも神様になった時点で、勝手に体に記憶されるらしいんだけど、前例のない二回転生だから体が忘れてしまったみたい。

 全く覚えていない状態で、神様に戻って平気なのかなって聞いたけど、神様が不在のほうが大問題らしい。

 その理由も後で教えてくれるみたいだから、それで。

 ……一気に教えられてもね、さすがに覚えられないからね。


 そうそう、これだけは名前覚えるのに必要だから覚えてほしいってマールさんが言ってた。


 イスターシアというか名前の意味。

 外国人みたいに最初に来る名前が本来の名前、苗字?の部分はどんな経緯で神様になったのかって意味らしい。

 私はもともとカスティア=イスターシアという名前で、『イスターシア』はこの世界の人から神様に選ばれた意味。人から神様になった人のこと。

 イリーシュは神様と人との間に生まれた神様のこと。

 イム・クレイシスは神様に作られた神様のこと。

 この三種類に分類されるみたい。


 で、私はもともと人でマールさんも同じ。

 なのでイスターシアさんって呼ぶと、大勢が振り返るので大変なことになりますよってマールさんに言われた。そのとおりだし、一斉に神様に振り向かれたらさすがに怖い。実も知らぬ人に一斉に振り向かれたら、誰だってびっくりするよね。



「神様かぁ」

「気負わなくて良いのですよ。焦らずにお休み下さいませ。人の世の時刻では夜ですが」

「神様は寝なくてもいいんですか?」

「そうですね」

 まだ本調子じゃない私の体を横たわらせながら、マールさんは優しく微笑む。うーん、この人の笑顔最高。癒される。

「人としての食事、入浴、排泄や睡眠は一切必要はありません。空腹も汚れもしませんから。ですがイスターシア、人だった者はどうしても生活習慣としてしないと時間の感覚が失われるので行う神も少なくありません。排泄がないだけでも大分楽ですからね」

 トイレ行かずに際限なく食べられるとか、徹夜できるだけでも楽だよね。

「マールさんはご飯食べたり、寝たりするんですか?」

「大きな力を使ったときに……それは明日以降にお話いたしましょう。カスティア様はまだ本調子ではありません、戻られたばかりで回復されておりませんから」

 さっき少し立ち上がっただけで疲れたから、私の体が本調子じゃないのはよくわかる。体がまた重いし眠い。

「おやすみなさいませ、カスティア様」

「おやすみなさい、マールさん」

 呼びなれてない名前を聞きながら、私はまた深い眠りに落ちていった。



 それからまた目覚めるまで一週間かかったから、どれだけ私の体疲れてたんだろう。

 またマールさん心配してたから、がんばれ私の体!







 

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