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佐藤天谷の『違』世界事情  作者: 中棚彼方
7/8

6『シエナ・セレ・ベリィ』


 ぱちり、と。

 少女は目を覚ました。

 幾許かの逡巡の後、辺りを見渡す。


 8畳程度の部屋。白いクロスの天井に白いクロスの壁。木色のデスクが置いてあり、上に銀のノートPCとサブモニターが乗っていた。どうやら書斎のようだ。

 箪笥、クローゼット、時計、カレンダー、シーリングタイプの照明。

 キレイな部屋だ。が、必要最低限のものしか置いてない。

 散らかっている様子はないし、ここの部屋の主は綺麗好きなのだろう。好印象だ。

 今自分はベッドで寝ていたらしい。シングルベッド、ホテルでよく見る良いベッドで、これまたホテルでよく見る布団が自分に掛けられている。


 体を起こし、ここがどこかを考え、事の顛末を薄っすら思い出しながら。

 ぽつり。


「(……おなか空いた)」


 自分で言って。

 どうやら、()()()()()()()()と思い至る。

 全て思い出した。

 自身の右側を見遣る。

 やはりというか、何と言うか。

 其処にある筈のモノ()が無い。上腕骨から先が綺麗に、余程上等な刃物で斬られたような断面で(そで)ごと逸失していた。血は止まっている。というより表面が肌色の皮膚で覆われ、最初からこうだったとさえ錯覚しそうになる。

 それを見て、動悸も、心拍数の一つも上昇はない。ただ静かに、あぁそうかと納得した。

 己の使命に向ける感情的な某は何の関係もないと清算した。

 少女には、人としての大事な部分が欠落している。

 己に課せられた神託、それ以上の懸念事項はあるにはあるが、ここにはない。先にも述べた、腕がない事で起こり得る物理的な支障に悔悟すら覚える。

 これが『双星信徒(エンブリオ)』の、彼女の一般常識だ。



 少女はすぐ行動に移すことにした。

 どうやら2階であるこの部屋にはベランダがあった。カーテンと大窓を開け外に躍り出る。

 快晴。日を跨ぎ空には燦々と太陽が輝いている。若干白む眼差しをさておき、手摺の向こう側の地に続く宙に左手を突き出す。その腕には白い『opera(オペラ)』があった。

 念じる。

 『opera』が光に変わり、粒子となり、やがて身の丈を超える巨大鎌──『アダマスの鎌』と呼び、呼ばれているそれの現出を成功させる。

 陽光に照らされる場違いな程に鈍色な鎌。仕事道具。


 躊躇わず。

 その刃を己の首に向け。


 切────



 「はぃストップストップストォーップぅぅゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!」


 

 背後から絶叫。

 唐突に止められた。少女を背後から抱き寄せるようにして、刃先を右の五指で鎌刃を押さえ付けて。

 男の──というまでもない、己に課せられた神託にあった、『神の使い』その人。忘れる訳がない。


「失礼ですが」


「ァエ?」


 耳嚢を揺らす囁き声に少しゾクッとする。


「今は西暦何年の何月何日何分何秒ですか?」


「小学せ……ああ、今、今ねえ。お、部屋にカレンダーある! よっしゃその命を刈り取りそうな鎌を隠して部屋入ろうぜ!な!? あ、ここに時計もある!」


「……? そうさせていただきます」


 問答に意味はない。ついさっき部屋を見渡した時で既に知っている。

 顔認証や指紋照会のようなものだ。

 『アダマスの鎌』を『opera』に戻し部屋の中に入り、ついでに時計を見る。11時半を周るところ。

 カレンダーを見る。2()0()4()5()年。4月23日より後ろはマメにバツ印を描いていた。


「23日かぁ、おれ学校丸々2日休んじまったよ」


「では……」


「ではって言いながらベランダ行かないで? お願いだから続行するな? そもそも人の家でセルフ斬首やめろ? ええいだからそっちに行くんじゃない!」


 再び『アダマスの鎌』を出そうとしたところを無理くりベッドまで引き戻して、ドタバタしながらもベッドに少女、『神の使い』が床に座る形でようやく二人は事なきを得た。彼女にとっては色々不服な結果だった。




 ▼▼▼




 シエナ・セレ・ベリィと、漸く少女の名を把握した。正確にはずらずらと連なる氏名(うじな)を大部分端折ってまとめてくれた。

 それだけ長い名前は厄介事を運んで来る意味できな臭いと天谷は思う。案の定そうらしいが国の重役とだけ教えてくれた。深入りさせない為か、情報統制に事欠かない。

 にしても随分とフットワークが軽い。


「それはそれとして……その、ごめんなさい。右腕、後先考えないで落としちまって。当然死なせるつもりはなかったんだけど、ちょっと考えたらこうなることは分かってたのに」


 土下座、奥ゆかしきジャパニーズ文化の集大成。

 それだけのことをして、それだけで済まされないと分かっているからこそ、頭を下げている。お前も腕を切り落とせと言われたら、逡巡してから切り落とす所存だ。

 しかし打って変わって、少女の返答は軽い──どころか、懸想すらしていないかのように。


「問題ありません。私の腕一本が失われようとあなた様の道程に水を差す事は有り得ません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お気になさらず」


「お気にならない訳ないのですが」


「お気になさらず」


「bot……?」


「我々『双星信徒』にとって第一は言わずもがな、偉大なるセレーネ様、ルーナ様です。第二に神託、第三に自身、家族。第四にその他」


「狂信者怖い(小並)……それ言うと俺もその他じゃ?」


「天谷様は『神の使い』の地位をルーナ様から賜っています。この場合神託に付随してあなた様の存在(価値)は我々の中で第二となります。腕の一本首の一つぐらい喜んで差し上げますとも。ですので」


「…………ですので?」


「お気になさらず」


「御役所仕事とカスタマーサービス足して2で割ったみてぇだ……」


 どうやら、彼女の中でそれはもう決着がついてるらしい。

 住まいを直し、胡座をかく。


「ところでその堅苦しい言葉遣い何とかならない?」


「善処しま──お気になさらず」


「善処して??」


 言い直す意味はあったのだろうか。思いの外自分は雑に扱われてるのかもしれない。

 天谷はモヤモヤした。


「ところで」


 シエナが強引に話の梯子を変えてくる。どうやら本当にこの話はここで終わりのようだ。

 天谷自身思うところは沢山ある。だがここで話題をすり替えてくれるなら、今は乗ることにしよう。いずれこの借りは返すと決めて。


「ここはどちらで?」


「辻木原先生って、俺の通う学院の教師の家。第2競技場での事や家がぶっ壊れちまった経緯を先生に言ったら、学生寮に転寮する手続きをするから、承諾に掛かる間自分の家間借りさせてくれたんだよ。辻木原先生マジパネェ」


「申し訳ありません」


「今はそれまで休み貰ってて、アンタの看病で部屋に入る許可も──息をするようにベランダ行こうとしないで??」


 ベランダに向かって歩いていくシエナを優しくベッドに投げるという器用な一本。正座で定位置に着陸したのを確認し自分も座り直す。


 実のところ辻木原教諭だって聞いてすぐ許諾した訳じゃない。何せ彼女は聖人ではない、教師だ。当然の帰結として葛藤があった。

 それは教師として生徒を導き扶助する者の矜持か、はたまた二人の子の親としての母性か、人として赤の他人を数日とは言え、唐突に娘や息子もいる自分の(たもと)に置く事の抵抗など。

 逆に()()()()()()()()()()()()()()()()()、様々な思惑の末に今天谷達は居座る事を許されていた。


「2日3日位あれば承諾が得られて入寮出来るだろうって教えてくれたよ。飯も出るみたいだし、服は……まぁなんとかする。取り敢えず生活は保証されたよ」


「私が言うのも何ですが、家が無くなったのに随分あっさりと受け入れますね」


「ホント──いや、なんでもない」


 またベランダしそう(動詞)な気配を察知した天谷は口を噤む。学ぶ男なのである。


「ぶっちゃけあんま感慨ないんだよな。悪く言えば、他人の家みたいな」


「永らく住んでいたのにですか?」


 永くはない。此方の世界に来てから2週間と少し。

 ルーナからどのように聞いたか天谷は知らない。が、少なくとも違う世界から来た事は知らないようだ。


「……、まぁ、そうね」


 されど肯定する。

 理由は分かっていた。

 空虚だったのだ、あの家は。

 積まれていく食器も、溜まる衣類も、針だけが進む時計も、明くる日の郷愁も。

 無機質で影や形だけが同じ箱に、帰ったら誰かが待っている訳でもない。

 だからなのだろうか。

 あの家に居ると、何だか『家族』が、とても恋しく感じてしまいがちで、ついつい感傷が湧いてくる。

 どうにも。

 ()()()()()()()

 ジクジクと苛む。

 正直、今のアノ家が嫌いだった。

 変わるならいっそ替えたい気分だった。


「アンタはどうすんだ? これから住む場所……あるのか」


 途中言い淀む。

 自分でもこの言い回しは角が立つように聞こえる。

 少し気持ちがささくれ立ってしまった故か。八つ当たりみたいになって申し訳なくなってくる。

 当の本人に気にした様子は一つもないが。


「お気になさらず。仮住まいは用意できています。本来であれば2日前からそこを拠点にしていた筈でしたが、以前化生(けしょう)と戦闘があった際私の不手際があって、身体と意識を奪われてしまい、今日に至る次第です」


「ならいいか…………いや良くない、良くないっすわ」


 化生。

 妖怪、魔物、化け物、生物。


「記憶、あるのか」


「あります。私の腕から生えた悍ましい肉塊も、アナタの大立ち回りも、アレが気絶するまでの顛末を、私は覚えています」


「……、」


 乳首舐めてた事には触れないでおこう(^^)


「いつから、そいつはあんたの中にいるんだ?」


「3日前──あなたと出会う前の日の夜です。アレはアナタとの戦闘の際には見せなかった、或いは出来なかったのかもしれませんが、肉塊を分離する(すべ)を持っていました。私がアレと衝突した直後、それを使い意識を割いていた私を取り込もうとして……」


 初めてシエナが言い淀む。


「実際に、取り込まれたってとこか」


「少し語弊があります。奴は私を完全に()()出来ていませんでした。現に私の意識は今こうして割り込んで表出出来ています」


「ああ、確かに──ちょっと待て、割り込んで表出?」


 表出。

 つまりは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それが意味するのは──、


「もしかして、まだ、いるのか」


「はい、そうです。なので私は」


 ベッドから足を下ろしたシエナは左手で自分の首に人差し指を差し、ゆっくりスライドする。



「私自身の意識が今、あるうちに命を絶ち、アレを根絶しようという次第です」



 そして、そのままベランダに行こうとして。

 天谷はその左手を握っていた。


「天谷様、お気になさらず。人の家、ましてやご厚意で住まわせてもらっていた家で行う際、確かに場を私の血で汚すのは不服でしょうと解が出ましたから。ベランダから人気のない別の方を探すことにします」


「そういう問題じゃなくて!」


 自分で出したとは思えない大きな声。今日はどうも、自分らしくない。八つ当たりするし、今も、まるで何かに焦ってるような。

 一瞬だけ()()()視界に頭を振る。


「猶予はまだあるのか?」


「あるとは言えません、アレは食欲を根源としているのがアレの中にいて分かっています。食欲の欠如、それが最高潮になったときがアレの弱点でもあり最後の狂気、暴走へ至る決壊。今はそれを知り自身の気絶を契機に虎視眈々と伏せているのでしょう」


 自身の左手を掴む天谷の手に右手を添えようとして、それがないことに気づき元の位置に戻した。


「当然、今この状況も見られている筈。私に出来た事で、今のアレに出来ない事はない」


「誰もいない場所……ああ、そうか。それで」


「アレは朧月夜を好んでいました。或いは月夜を。出てくるとすれば夜。それが期限でしょう」


 短い間柄、分かるものもある。

 彼女(シエナ)はきっと躊躇わない。

 それだけの凄みが彼女にはある。

 だからこそ。


「『神の使い』を持って命じる、シエナ・セレ・ベリィ」


 令呪ではない。


「自害するな」


「お気になさらず」


「俺の右腕を切り落とすぞ」


「分かりました」


「……場所を変えて話そう」


「どこに行くのですか?」



「動く対策本部を設立する。人員は2名、作戦会議だ」



 不承不承の体で。


「……なるほど?」


 シエナは承諾した。

 さて、どうしたものか。




 ▼▼▼




『……続いて、4月22日の午前6時頃、静岡県静岡市葵区の住宅街から離れた河原の傍の草むらにて、散歩に出ていた近隣住民が女性のものと見られる変わり果てた遺体を見つけたとの情報が入っています。調べに対し警視庁はこの件を他殺と見て、遺体の損壊具合や、その残忍かつ狡猾な手口から、過去に23人を殺害し現在も逃亡中の【花薔薇(はなばら)】、あるいは模倣犯による関与があるとして捜査にあたって────』


 ここは住宅街から離れた繁華街。

 賑わいを魅せるここは、どの世界でも同じようで。


 大型の街頭ビジョンはニュースを映していた。

 しかし平日の昼間を回った時間帯、雑踏が行き先もバラバラにして散っては新たに集いを繰り返し、人々は殺人の報道なんて二の次三の次と見向きもしない。昼飯の食欲がそうさせるのか。食欲とは往々にして、罪深い。


 天谷とシエナはここにいた。

 当然だが目立ちに目立っていた。『opera』で写真を撮ろうとする者までいる。それほど、シエナが浮世離れした相貌だと言うのだろう。


「ほら」


 最寄りの自販機に行ってすぐ戻ってきた天谷から何かを渡される。

 左手で受け取ったそれを見れば、有名パッケージの缶コーヒーなのが分かった。


「これは……?」


「別に飲み物飲んだって腹は満たされんだろ、それ飲んで、着付けしとくんだな」


「であれば、そのブラックの方で」


「甘いのは苦手か?」


 一緒に買った無糖のコーヒーをシエナと交換する。


「嫌いではありません。ですが……」


 何故か二の句を言わないまま、逡巡した後二人は缶を開けて飲んだ。

 甘い苦みが口から舌を伝い、温まる。


「そういや、アンタと初めて会った時、意識は今のそっちだったみたいだけど」


「間抜けな話ですが、あの時点ではこの身に起きていた異変に気づいていませんでした。戦闘後、不意は突かれたものの本体は討滅できましたから。アナタと会う今の今まで、全く異変を見せなかったアレは狡猾です」


「唐突に倒れたのはアイツが表出するトリガーなのか」


「いえ、あれは私がお腹が空き過ぎてただけです」


 ズコォッ! とつんのめった天谷。その流れで前方宙返り。

 周りでこっちを見てた人達から拍手を貰った。チョイ照れ。


「ほんとにお腹すいてたんかい! ──あれ、でも第2競技場でも同じことしてたよな?」


「当て推量(ずいりょう)ですが、アレが私の力を十全とは言わずとも発揮したように、私の影響がアレにも出ていたという事でしょう」


「……謂わば一心同体って訳か」


「いいえ、状況的には二心同体です」


「言い直す必要ある? 嫌なのは分かるけど」


「もしかしたら三、四心同体かも」


「もしかしてマウント取ろうとしてます?」


「本当にそうかもしれませんよ」


「へ?」


「アレの中にいた時、()()()()()()()()()の気配を感じました。思えばあれと戦う時も、ヤツの声は複数重なったような歪な声色でした。それに、アレは眼の前で遺体を取り込んでいましたが、それを終える前と後で声音が安定しました。私がアレの中にいてアレとアナタが戦闘した際には、今まで聞いた事ない口調で言葉を紡いでました」


「なら、何だ。その取り込む、取り込もうとした相手の口調を真似ると」


「あるいは能力や、それ以外も、影響される」


「そりゃ、つまり」


「えぇ」



「アレは今まで取り込んできた者の──力を、口調を、もしかしたら性格も受け継いでいます」




 ▼▼▼




 飲み終わった缶2つをゴミ箱へ。

 他にも話をしている内にいつの間にか公園に着いていた。

 保育園、幼稚園のお出かけか。それなりの子ども達が子守の大人含め遊んでいた。

 ベンチに座る。シエナも並んだ。


「話が見えてきたぞ」


「どのように?」


「アンタが初めて肉塊と会った時、ヤツは既にヤベー奴だった。カニバリズムの美食家。もしそれが取り込んで()()()()()()()()()()だったとしたら?」


「それをどうにかすれば、糸口が見えてくる、と」


「そうだ」


「どうやって?」


「あんたがその怪しい気配の元を断つ」


 一拍。

 足に絡みつく鳩と大激闘を繰り広げた末屈伏させられた哀れなシエナ。なんてことないように答える。


「私が首落とした方が手っ取り早いのでは?」


「駄目に決まってるやろがい!」


「なぜですか? 先ほども言いましたが、腕の一本首の一つで私の不手際を白紙にできるなら、私は始末書を書くよりそちらを優先しますとも」


「何でそんなに命が軽いんだよ──」


「もしかして、私をお慕いになられているのですか?」


 バコンッ!とベンチが引っくり返る。流れでバク転。見ていた子ども達や大人が拍手する。チョイ照れ。


「はぁー、はーお前はー? はぁ~お前それお前自意識過剰過ぎワロタ草満点原サ◯メ」


「ではなぜ? 私の命を重んじる理由が分かりません」


「……、」


 引っくり返ったままのベンチとシエナを元に戻し、その隣にどっかと座り直した。

 何故。

 なぜか。

 そんなの、決まっている。


「助けたい、友達を」


 呆然とした彼女は、静かに反芻する。


「友達……私とあなたが友達、ですか」


「嫌か?」


 一拍。しばし沈黙。


「嫌では……ないかもです」


 少し言葉遣いが妙だ。思うところがあるらしい。

 ポツリと、シエナは呟く。

 蚊の鳴くような声で。


「──コーヒー」


「え?」


「コーヒーです。美味しかったであります」


「お、おう。さっきのかそりゃ市販のなら何でも美味いわな」


「そうじゃなくて」


 双眸が。

 ウルフアイの金眼が。

 シエナ自身が今の今まで一度も動かさなかった表情筋を、緩めて。

 それは微笑みという。



「あの、目が覚めた時に飲んだコーヒーが、美味くて、暖かかった」



「お、あ、うん。どういたしまして」


 なんだか変に弛緩した空気。


 それをぶち壊したのは、園児達でもなく、子守の大人でもなく、鳩でもなく。


「──あ、あれ、あまた、にくん。どうしてこんなところで────────えええええええええええええええええ!」


 堀江千絵、今年十六歳の自称他称文学少女。

 次いで天谷が辻木原から渡されていた赤色の『opera(リストバンド)』から、受信音がなる。

 相手は勿論、辻木原麗その人だ。

 入寮手続きの申請許諾が成ったか、それとも。

 問題は山積みだが、さて。




 ▼▼▼




「……、」


 彼の者も、変わらず、それを見守っていた。

 ()()()()()()を思い浮かべながら。


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