二話 用意周到
ジークの無礼ともいえる言葉に王は困った顔をして答えた。
「わ、分かった。追い追い兼ね合いをしよう。もう下がれ。旅に備えて休むがよい。」
「はい。」
ジーク!!!
お前、失礼過ぎるだろ!
それに陛下!気が弱すぎ!確かにこいつの笑顔は怖いけど!一国の王が流されていいのか?政治なんて分からんが心配だ!
そっと後ろからまだ若そうな執事さんが現れた。
「では、お部屋にご案内いたします。質問があればお答えします。」
「えっ、今日は城に泊めていただけるんですか?」
「はい。そのように指示を受けました。何か不都合でもございますか?」
「店に行って明日の仕込みをしたいんですけど...」
今日は定休日だからいいけどなぁ~
父さんから受けついだ店なんだよな...
さぼったら絞められる。
「それならもう使いを出しているのでしばらくは閉店扱いです。ご安心ください。」
安心できません。
ていうか旅の間もそうなのか?
承諾したわけじゃないんだけどな。王命に逆らうのは無しだから仕方ないか。
雇ってる人のことも心配だけど...
「旅の間も閉店ですよ。従業員の方には別の仕事を紹介させます。」
「あ、ありがとうございます...」
用意周到過ぎます。
これは有無も言わせずに確定ですね?
あまり希望は持ってないよ。
「明日からは1ヶ月間、魔王討伐の旅に向けての訓練を行います。魔法・剣術・体術・その他様々な事を身につけていただきます。ジーク様の希望で料理番として付いていくこととなっておりますが、身を守る為ですのでよろしくお願いします。」
「うえええ!?あ、あの…魔法は苦手なんですが…」
「大丈夫ですよ。指導者は宮廷魔導師ですし、プロばかりなので良い指導が受けられるでしょう。」
「はぁ…」
嫌ぁぁぁぁ!!!
やりたくない!!!
昔のトラウマが…!(回想中)
ジークとオウガのあれは…
「…大丈夫ですよ。私も理解しております。あの方々の扱きは…」
哀れみの視線を向けられた…
執事さん遠い目をどうにかしよ…無理だね
肩に手を置かれたし。
これは…!
「もしかして…」
「貴方も…」
「「あの魔法の地獄を見たのかっ!?」」
「やっと出会えた…!」
「えぇ!」
バッ
「「痛みを理解できる同士よ!!!」」
この状況を解説すると、あの2人の地獄を知っている俺達はお互いの痛みを理解したのだ!あの2人は魔法の訓練を「とにかく感覚で覚えろ」をモットーにやっている。しかもほかの人にやる事なんてない。知っている中でも俺とこの執事さんだけ。だからほかの人には理解されない。物凄くタチが悪い!!!
細かい点は追い追い話の中で解説していきます。