一話 始まりは
ここはエルナンド国王宮
「ジーク。そなたをこの国を救う勇者に任命する!どうか邪悪の魔王を倒して再びこの国に平和をもたらしたまえ!そして仲間のオウガスト、アイオーン。ジークを共に支え勇者の力になっていって欲しい。旅路は危険も多いだろうが苦楽を共に乗り越えればきっと実現するだろう!女神に選ばれし勇者とその仲間よ、今立ち上がって旅に向かうのだ!」
静まった部屋に王の声が響き渡る。
俺はアイオーン。ジークとオウガストの幼馴染をやっている料理人だ。
茶色の髪と目鍛えてはいるが特に特徴はない十八歳の平凡な男。
そんな俺が言いたいことはただ一つ
・・・どうしてこうなった!?
事の始まりは三日前のこと・・・
久しぶりに幼馴染達が俺が経営する店に集まっていた。
「ん~~まっ!!!さっすがイオ!このハンバーグ美味しいっ!」
料理を美味しそうに食べてくれているこの青年はオウガスト。オウガという愛称で呼んでいる。
銀髪に紫色の猫目で身長が高い。気さくな性格から男女問わず人気がある。終始ニコニコしている性か胡散臭く見えるが決して悪いやつではない。魔導士をしている俺の自慢の幼馴染だ。
「はいはい。ゆっくり噛んで食べろよ?」
「はぁ...オウガ、たまには落ち着けないのか。」
俺の横にいる仏頂面はジーク。黒髪赤目で眼鏡をかけている。
城で騎士をしていて、鍛えているので細身に見えるが筋肉がついている。騎士をしている傍ら、魔力も膨大で頭もよく魔術騎士団の実力者である。ただし、人を寄せ付けない態度がある.厳しい言葉も俺たちのことを思って言っていると分かっているので良い幼馴染である。
こんなバラバラな性格だが...いや、だからこそ仲良くできている。
そんな三人組だが休みの合う日は今日みたいに俺の店で集まる。
昼食を取ってからどこかに出かける。
今日はみんなで買い物に行く予定だ。
新しい料理の道具を買おうと思ってる。安いので木でできた道具ばっかり使ってたんだけどやっとお金に余裕が生まれた!!!
ヤッターーーーー!!!!!
オウガは魔道具を作るときに必要になる魔石の購入らしい。
ジークは武器の補強。
みんなでゆっくり見て回った。
それぞれの用事を済ませてぶらぶらしていた。
「イオってば買い物長かったね~」
「えっ、そう?」
「全く・・・出かける前に買うものを決めておけ。」
「も~まっ、いつもの事だけどね!」
「うっ...気を付けます。」
仕方ないじゃないか...!
見るだけならタダだし!!!
いつかはもっと良い道具と食材を手に入れて町のみんなに食べさせてあげたい!
「「イオ、心の声がダダ漏れ(だ)」」
「へっ!?」
そのまま歩いていると花畑についた。
「あれ?こんなところに花畑なんてあったっけ?」
「クフフフ...知らなかった?昔からあるんだけど。」
なんかオウガに笑われるとむかつくよね。
「あんまり気にしてないだけなのか?」
「はぁ...たまには周りを見ろ。」
「ういっす」
ジークさん顔こわーい(棒)
カーン
「「「えっ?」」」
ジークが何かを踏んで金属音が出たらしい。
足元を見ると何か凄そうな剣が。
「周りを見ろって言ったのは誰だっけ?」
「...この剣は膨大な魔力をまとっているようだな。」
まさかのスルー!!!
「確かにとんでもない魔力量だね。正直言うとこの魔力に中てられそうだよ。」
「おおう。相当だな。」
俺は経験したことないが、魔力保有量が多い人は魔力に敏感になる。特にこのお二人さんは敏感なので分かるらしい。
俺は凡人並なので少ししかわかりません。
オウガが拾おうとして屈むが...
「っ!?」
一ミリも持ち上がらない。
「なにやってんの?」
「重すぎて持ち上がんないんだよ!」
そんなに重いのか。それとも冗談なのか。
「何を言っている。ほら、持ち上がるぞ。」
ジークが軽々と持ち上げる。
「なんだ...オウガ遊ぶなよー」
オウガに冷たい視線が突き刺さるが、
「ち、ちがうんだよ!本当に重いって!」
「怪しい。」
「じゃあイオも持ってみろよ!」
「はいはいどうせ冗談でしょ...ってうおっ!?」
本当に重かった。落としました。
「ええええ!?」
「ほら!言ったろ!?」
「お前たち、何を言っている?むしろこの大きさの剣にしては軽すぎるぞ?」
「「ええええ」」
「ジークって怪力だったのか。」
その日はその一言でかたずけられたが、ジークがその剣を装備していたところを大司教様にみられ、伝説の聖剣エンプラーであると判明したらしい。
俺とオウガが一緒に呼ばれたのはジークが勝手に巻き込んだらしい。
正直言って迷惑だ!!!
そして冒頭に至る。
陛下の言葉にジークは...
「お断りします。面倒です。」
...えっ!?
いやいや!そこは「はい」って答えろよ!
ほら、陛下ポカーンってなってるから!
不敬罪になってもおかしくないから!
陛下はしばらくして正気を取り戻した。
「何故だ。」
でもね、陛下...すっごく動揺してるね。額から汗流れてますよ。
「私に良い事等無いからです。」
言っちゃったよこの人!横でオウガが笑ってるけど!冗談じゃない!
「そ、そうか。ならばどうすればやってくれるかね?」
「そうですね...旅の経費はこちらに仕切らせて頂きたいですね。後、国軍は入りません。私が設計した馬車も作ってください。まだ色々と条件はありますがよろしいでしょうか。」
もうため息が止まらない。
第一話!!!
やっと出来ました!!!
おまけ
「ジーク殿!王より謁見の間に来いとの命令が!!」
「何故だ。」
「その剣は聖剣エンプラーだそうで、勇者に任命とのことです!」
「行かん。」
「ええっ!?それは困ります!」
「ちっ...なら、オウガストという魔術師とアイオーンという料理人を連れてこい。」
ニコニコニコ
「ひっ...!?わ、分かりました!!!」
ジークさん曰く、二人も当事者でむかつくから巻き込んでやろうだそうです。
そして使者のお兄さんはジークの笑顔に逆らってはいけないものを感じたそうです。