復活の神童
スローペースだったり、設定が変わってる時があるかもしれません。
初心者ですので優しく指導してくれる方いてくださると嬉しいと妄想しながら制作しています。
「あぁ!?このやろう俺に因縁つけようってか!」
男の野太い怒声が響く。
ここは日本の中心都市、甲子園。日本の真ん中が東京だった時代は俺が寝ている間に終わっていたようだ。
今俺は生活必需品を揃えるためにショッピングモールに来ている。
そこでちょうど中年とやんちゃそうな青年が騒ぎを起こしたところだ。
「なんだよおっさん、俺が余所見して歩いてたってか?」
「あぁそうだろうが、ジュースまで丁寧にぶっかけてくれやがって」
「なんだよ、クリーニング代でもだせって?むしろ名誉毀損だよ、慰謝料払えって」
「このがき…」
なんだ、やんちゃなガキだな、そう内心思いつつ俺は無視を決め込んでその場を離れようとした、が。
「ぎゃああああああ?!」
さっきの青年が悲鳴をあげていた、見てみると右手がおかしな方向に曲がっていた。
「あんまり大人をなめたらいかんぞぉ…うん?」
片眼を赤く光らせながら中年は言った。
あぁ、あのおっさん、サイボーグだな。
サイボーグ、誰しも聞いたことあるだろう。
人間をベースに人工骨格、その他のテクノロジーで人間を強化する技術、またはされた個体の事だ。
俺が寝てる間に人工の半分はサイボーグ化してしまったと聞く。あげくには生まれたばかりの子供にすらサイボーグ施術を行う親もいると聞く。
そうすると、成人する頃には立派に体に骨格が馴染むとらしい。
サイボーグは、体が機械を拒絶することが多いからだ。
……まぁさておき、サイボーグが問題を起こしたとなると。
「俺の出番になってしまうわけか」
俺は一言呟くとそのまま中年にかけより
「民間の中でサイボーグの暴力は御法度だと、知らないのか?」
「あ?」
中年が事態を理解する前にボディに一撃、気絶させる。
「そこの奥さん、病院に電話してやれ、彼がそれなりに重症だ」
俺は近くにいた若い子供連れの女性に一言声をかけてその場をあとにした。
「で、なぜ俺がこんなとこに呼ばれる必要がある…」
「当たり前だ、民間の間でサイボーグの武力行使は御法度だからだろ!俺がどうやって揉み消すのみ必死だったか…」
「ん、ご苦労」
「何でそんな他人事なんだ…お前はただ生身の人間じゃ無いんだぞ、伊座凪…いや、失われたNo.8、マスターカイム。」
「…はぁ、その名前は捨てたはずだが」
自己紹介がまだだった気がするのでここでしておこう。
俺は伊座凪 由貴。年齢は一応21、称号は、マスターカイムNo.8。
俺の中ではつい先週のことのようだが、実際は6年前、ある事件によりコールドスリープについていた。だから俺の知り合いや友人知人はみんな年上になってしまったようだ。
俺自身は、コールドスリープから覚醒する予定日の一年前から脳だけ覚醒させ、様々な世界の情報を得てきた。
5年前、つまり俺が眠りについた翌年、サイボーグショックなる事象が起きた。
これを境に、この5年間でサイボーグは人類の半分を占めることになった。
もともと、昔からサイボーグはいたが、コスパの問題や人工血液のこともあり、避けられていたのだが…
だが、結果として言えるのは表立った戦争がなくなったのは確かなことだ。
平和の水面下では、体を機械に変えて、命を狙い狙われる日常が繰り広げられることになったのだ
「伊座凪、ミッションコードc、要人警護の任務についてくれ」
「了解、本日1700より任につく」
俺はコールドスリープから眼が覚めたあとは三日に一回のペースでミッションにあたってる。
ほとんどがカイムのレベルでいうところのcランク、普通の傭兵だと若干難易度が高く感じられる、そのレベルだ。
「任務完了、帰還報告する。」
「承認した、伊座凪、お前に来週からカイムの育成所の臨時教官として向かってもらいたい」
「まためんどうな…」
俺に任務を偉そうに投げるのは如月、俺の昔からの付き合いのある教官だ。今は現役から退いてデスクワークをしている。俺をマスタークラスに育ててくれた恩人でもある。
「そういうな、体を少し動かしてこい、扱いはインテグラルにしている」
「冗談がきつい」
カイム育成所の教官にも種類がある。
通常とエース、そしてインテグラルだ。
通常は主に昼時間帯の警備員のようなもので、そこまで威厳のある役職ではない。
エースは、武術、戦術教養すべての指導にあたる文字通りの教官だ。
そしてインテグラルては、出所生でありながら、再構成の余地ありと見なされたものが、教官として臨時で入るときに使われる扱いだ。
ちなみに、現役生はいかなる手段をもってしてもこのインテグラルを屈服させるとなにかしらの得点がつく。
「久しぶりに四六時中命狙われるということか、おもしろい」
こうして、俺は翌週より、教官コードインテグラルとしての任務につくことになった。
……そういえば期間をきいていなかった、まぁいいか。
「ぐあっはっはっは!!よく来たな若造!!」
よくわからんぐらいでかい声で俺に話しかけてきたこのじいさんは、俺がインテグラル教官として配属された先の担当総合教官、全部で9つある部隊のひとつ、ユニット5の専属カイム育成所の長でもある、マスターカイムNo.5。流派無差別格闘師範、シュウジ・ゴーズだ。
「わしはこの舞台の長、マスター…カイム!!」
「はい、どうも」
俺はめんどくさく最低限の返事で挨拶を済ますと、教官宿舎に荷物を置きに行くことにした。このあとすぐに現役生徒たちに紹介される。
「俺は今日から赴任してきたインテグラル教官、伊座凪…伊座凪・鳴神だ」
本名は名乗らなかった、面倒なことが起きそうだったから。
「一応明日からカリキュラム開始だが、別に構わない、獲りたいやつは今からでも俺の首を取りに来てくれ、以上」
ここであえ全現役生に啖呵を切る。これで少しは楽しくなりそうだ…と思った矢先。
「「おらあああああ!!!」」
複数の生徒が獲物を構え飛び込んでくる、ハンドガンからナイフ、トンファーまで様々だ。
「…フッ…」
手持ちのファイルボードで放たれた銃弾4発を受け、線を描いて飛び込んでくるナイフは左手でいなし、右手にもったボードをそのまま後ろのハンドガンを持った男に投げ込み、残るトンファー男を左の拳でカウンターを叩き込んでやる。
「悪いなトンファー、お前の顔が一番生理的に受け付けなかったんだ」
残りの現役生たちは完全に唖然としている。おそらく彼らには今のは先手必勝の技っだたのではないだろうか…。
「まぁ、というわけで、短期間だがよろしく、ルーキーども」
正直最後の一言はなんで言い放ったのかはわからないが、すこしかっこつけたかったのかもしれない。
「まぁ、鳴神くん、死人だけはだしてくれないよう頼みましたぞ」
「は、はぁ」
新任のあいさつから二日経った。あれ以来俺を狙ってくる現役生はいない…と言うより、実弾の携行を許可しているこの育成所は一体なんなのだろうか。
「私はね、いつだって本物を味わっていただきたくて、訓練も実弾、実刀で行っているんですよ」
「それで皆そろって物騒な訳か…」
「私は今のうちから本物の恐怖を味わってからここを出て行っていただきたいのですよ、早ければ傭兵の道以外の道もすぐに見つかるでしょう」
結構いろいろ考えてるんだな、この初老のじいさんは。と、俺は感じた。
よくわからない部隊だったが、ここにきてやっと理解できた気がした。
そう思ってると前から3人組の現役生が歩いてきて、俺の目の前で脚を止めた。
「教官殿…すこしよろしいですか?」
「ン…お前は…?」
「自分、今季卒業予定の前田といいます、右が真田、左が吉田です」
「彼らは今季の成績トップの3人ですよ鳴神くん」
シュージ・ゴーズ、もとい師範はそう付け加えた。
「自分らの卒業前に…すでに実地で活躍なされてた先輩の手ほどきをぜひ受けたい所存なんですが」
「ん…おう、じゃあかかってこいよ」
俺は安っぽく挑発してみるが三人の少年(?)は表情を崩さず、前田と名乗った彼は。
「いえ、明日、互の準備を整えてからやりあいませんか?時間は明日の0600の起床のベルと同時にスタート、範囲はB棟全域を使いたいと思います。終了は当日1800、12時間使って取るか取られるかでやりあいたいと思います。なので、今日の就寝場所はB棟の好きなところで宿張ってもらいますが」
「小さなサバイバル実地でもしようってことか、構わないぞ」
「では、就寝規定時間の1時間前、B棟で一度落ち合いましょう、よろしくお願いします」そう約束を交わして、彼らは去っていった。
そして当日2200。
「ありがとうございます。では、今夜は互いにいい夜を」
「あぁ、明日は朝から楽しく盛り上げよう」
俺たちはそんな冗談めいた言葉を交わし別れた。
「さて、ねぐらはどうするか」
ここ、B棟は主に座学教室のスペースと、実験室のスペースの割合が多いがくわえて広いホールもある。
「ねるなら…屋上だな、今日は空が晴れてて星が綺麗に見えそうだ…」
(ゆきくん、星が綺麗だね)
(ずっと一緒に、いれたらいいね)
「く…」
嫌な記憶がフラッシュバックする。そんな自分自身の記憶を振り払い俺は屋上に陣取る。「……ふう…」
俺は久しぶりにたばこに火をつける、ざっと6年ぶりだ。
「なんだか、あんまりうまくないな…」
昔感じたタバコの味というものを感じれなかった。
そんな気分にふけっていると下の階が少し騒がしい。だがかすかに火薬の匂いもした、おそらく、罠をはっているのだろう。
「あいつらは俺を本気で殺しにかかってるな……」
だが、そうでなくては俺自身、この身体のポテンシャルを知るには物足りない。
明日は本気で体を動かせることだろう。
聞き覚えがあるような、懐かしいチャイムの音が聞こえる。朝六時、全現役生起床の時間だ。
「……時間か…」
俺はそうつぶやいて、のそりと起き上がる…が。
「あれ」
どさ、と倒れこむ、そうだ、昨日は寝袋で寝たんだ。
じじー…とジッパーを内側からあけ、俺は寝袋から脱出を試みる。
「…ふぅ。起き抜けのタバコも何年ぶりだろうか…朝は…これにするか、もぐもぐ」
タバコを吸って、朝飯のコンビニのおにぎりを頬張りながら、明るくなって改めてB棟の全域を見渡す。棟自体も隠れるところが少なく、グラウンドも開けている。
すこし遊んでやろうと思ったが、俺は本腰を入れて彼らをいじめることにした。
「あの教官、どの罠ではめてやる?」
「そうだな、とは言っても昨日の夜中に仕込みは済んでるし、最後の仕掛けもいま真田がやってる」
前田と吉田は二人してB棟のある部屋で会議をしている。
「ちょっと進行具合を聞いてみよう…もしもし真田?」
『ま…前田?!ちょ…助けてくれ!今三階の…アッーー!!』
「…真田がやられた」
「なんだって?!」
「3階だ」
「く、行くぞ!!」
前田と吉田は武装を手に部屋を出て走っていった。
「さて、これがお前たちの作戦というわけか。で、それで本当に俺を仕留めるつもりだったのか?」
「くそ…なら白兵戦だ!!」
この真田という男は、今回由貴に挑んだ三人組の中で一番白兵戦に秀でている。彼自身も1対1なら同じ人間同士、勝ち目はあると思っていた。
「感心しないな、一般人が達人相手に丸腰で喧嘩を売るなんて」
俺は突っ込んできた真田の腕をとり関節を外してから受身なしで投げた。
「あが…」
「ほら、逃げろよ、今なら逃がしてやる」
「くそ…死ねこの童貞野郎!!」
真田は捨て台詞を吐いて逃げ出そうとするが、俺はその一言に思った以上にカチンと来たようだ。
「まてこらこのクソガキ!!」
「?!ひぃ…」
そのとき真田の端末が着信の音を出す。
「ま…前田?!ちょ…助けてくれ!今三階の…アッーー!!」
端末に気を取られた一瞬の隙をついて一気に距離を詰め、最大限の手心を加えて股下を上に大きく蹴り上げた……2mは浮いたかな。
しばらく俺は真田の亡骸を尻目にこのフロアのトラップを解体して遊んでいた。
「おい!お前!!」
「真田をどうした!!」
遊んでいたら突然の来客だ、もちろん予想していたが。
「お前たちのお仲間はあそこで気持ちよく伸びてるそ」
「気持ちよくって顔じゃねえだろ!おい真田!」
一人が駆け寄り、必然的に俺は挟まれる形になった。俺は二人がサブマシンガンを携行しているのを見抜いている。だからこそ、この布陣をとらせた。
自身のスペック解析のために。
「お前、真田に何をした!」
「さあな、気になるなら俺を屈服させてみろ」
「このやろう…!!」
二人は俺をはさんでSMGを構え放つ。
「…ッ!」
俺は体内のバッテリーをフル稼働し…避けた。
「……?!く、当たれぇ…!!」
俺は最低限の動きですべての弾丸を避ける、交差しないように互が配慮しながら撃っているので、より避けやすい。
「く…」
彼らは毒づく、もうすぐ規定の250発打ち切る…そこだ。
「はぁっ!!」
ノーモーションからの超加速で前面の彼に掌打を浴びせる。
「おごぉ…」
「え…」
あっけに取られてリロードを忘れてしまう後ろの彼にも、その場から跳躍して蹴りを入れる。
「これで決着だな、今ので体内バッテリーを10%使用…そんなものか」
「がぁはははは!!さすが伊座凪殿、見事な強さじゃ、さすがユニット8の元リーダー、完全に生徒達を欺いておられる」
いきなりゴーズ氏の声が聞こえてくる。
「残念じゃな前田、お前たちではまだまだ現場の厳しさは早かったようだな」
「…りーだー…?何言って…」
蹴りを入れられた彼、前田はそうつぶやいて気絶した。
その数分後、ミッション終了の伝令が来たため、俺はなんの挨拶も残さず養成所をあとにした。
「如月、どうして俺をここに呼んだんだ?」
「今からお前に特例と合わせたい人物がいる、入れ」
「…お久しぶりです、伊座凪さん」
「……チェル」
彼女はレイチェル・フィールデイア、過去、俺たちと共に戦ったカイムの仲間だ。当時はまだ現場に立てるほどの技能はなかったが。
「今、彼女はリーダー不在のユニット8の実質的なリーダーとしていてもらっている。三日後のリーダー会議に出る際にわからないことがあれば彼女に聞いてくれ」
「何を言っている、それだとまるで俺がこれからユニット8のリーダーをするみたいじゃないか」
「みたいではなく、するのだ、伊座凪由貴、本日1400を持って、伊座凪由貴をユニット8のリーダーに命ずる、これはカイム総隊長、ミゲル・リンドウ氏の意思でもある」
「チェル…元気だったか」
「はい…ほんとにお久しぶりです」
「怪我とかしなかったか」
「はい、伊座凪さんに教えてもらったとおり、自分を守ってましたから」
「じゃあ良かった、ところでその伊座凪さんというの、やめてくれないか?すごい変な感じだ」
「6年ぶりなんで、距離感がちょっとわからなくて…でもわかりました、由貴さん」
「はは、そうだよ、チェルはそうじゃないとな」
俺は懐かしさと嬉しさで笑った。
それから互いに会話もなく、ユニットごとに与えられた指令所に移動する車の中でチェルは唐突に口を開いた
「由貴さん、あの…あの子のことは……」
「やめろ」
チェルを遮った。その話題はいくら古い同胞であっても許すわけにはいかない。俺の最初で最後の恋人のことは…。
「誰であろうとその話題は許さない」
「由貴さん…私は…由貴さんの支えになりたい。だからわたしはここまでしてこれました」
「それがやつとなんの関係がある」
「わたしは、由貴さんがいなくなって最初抜け殻のようになってました」
チェルはなんの独白を始めたのだろうと、俺はまともに聞いてないふりをしながら話を聞き続けた。
「わたしは由貴さんに憧れてこのユニットに居続けました。それなのに、私はどうしたらいいのかなって。でも、由貴さんは絶対に帰ってくると知ったとき、私は自分を奮い立たせました。今度は由貴さんと肩を並べられるように…努力したつもりです」
努力したつもりです…か、相変わらずチェルは変なとこで謙遜する癖がある、でも、これが彼女の本音なのだと俺は知っている。
「いたらいいじゃないか」
「…本当に聞いてないフリして、ちゃんと聴いてるんですよね由貴さんは、それは私のなかで解釈した意味でいいんですよね?」
「好きにしろよ」
……うわああぁぁぁ俺はどさくさに紛れて何を言ってしまったんだろう!?!?!?
これってあれだよな、俗に言う…ほら、あれだよ、お前らならわかるよな?!(錯乱)
やっべぇぇぇ俺来てるんじゃね?いや、来てるキテルヨんほおぉぉぉ…っと、ついテンションが上がってしまったがそれを表に出すほどおれはもう子供じゃない。
「でも、無茶だけはするなよ」
「……」
チェルは黙ってしまった。自分は戦わなければいけないと思っているのだろうか。だが、今俺の立場が再びユニット8のリーダーになった以上、この子達を戦わせるわけにはいかない。そういう考えは、次の指令を受けたときに覆されることになるとは思はなかったが…。
「レイチェル・フィールデイア、ただいま戻りました」
ユニット8の指令所について、出迎えに来たのは6人うち知らない顔が5人。
「あ、おかえりチェルさん…そちらの方は?」
「え?」
チェルは不思議そうにこっちを見て一言。
「え?気持ち悪」
ちょっと傷ついた。ちなみに俺はさっき拾った馬のかぶりものをしている。
「ひひーん!」
「わ、やだぁ」
ちょっとちょけてみた。
ユリカはなつかしい口癖を言いながら少し引く。
かちゃっと音が聞こえて
「あまりふざけないでもらえますか?」
「ごめんなさい」
俺は謝りながらかぶりものを取る。
「……あぁ…」
ユリカ…俺が出迎えの中で知る唯一の子は息を漏らしながらこちらを見ていた。
「今日からユニット8のリーダーになる伊座凪由貴だ。よろしく」
この場で初めて会った人らは怪訝そうにこちらを見ているが、そんなものはこの際関係ない。
「由貴さん…由貴さぁん!!」
ユリカはそう言って俺に飛びついてきた。
「うぉ…いきなりなんだよ」
「おかえりなさい…由貴さん…!!」
「あぁ、ただいま」
俺はこうして、6年ぶりに自分の古巣に帰って来た。