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あなたなら「何」をのぞむ?

 深夜、パソコンに向かいオンラインゲームをしていたら唐突にアイスが食べたくなった。

 私は少し離れた所にあるコンビニに夜食を買うため車で出かけた。


 コンビニの近くまでくると夜中だというのにまるでカーレースでもしているような音が鳴り響いていた。


「やだ、暴走族かな」


 関わりたくない。怖い。早く帰ってゲームの続きをしたい。


 目の前の信号が青になったため交差点に進行した時だった。横からものすごい衝撃が全身を襲った。


 何が起こったかなんてわからなかった。




◇◇◇



 気づくと視界は真っ暗闇だった。


「あれ、私どうなったの?」


 自分が目を開けているのか、閉じているのか。

 

 それさえもわからない。


 これは夢?


 現実?


 SAN値ピンチ? 


 発狂するべきかな?


 途方に暮れていた時、声がした。



「平良智夏、21歳。午前0時29分、信号無視の車に撥ねられ窓から体が飛出し3回転したのち電柱の電線に関電、そのまま落下し現場を通ったトラックの荷台に積んであった鉄のパイプに貫かれて死亡」


 無機質な機械のような声。抑揚もなく言葉を並べる。


「次の転生先は幻想ワールド215次元。次元を超えて転生する数奇な魂ヨ。1つだけのぞみを言エ」


「え?」


 内容を理解するまで時間がかかった。


 自分は車に撥ねられアクロバティックに死んだらしい。それは納得できないが理解はした。だが、いきなり転生するからのぞみを言えって、もう少し説明とかないのかな? 死んだショックを受け入れる心の準備とかさ。みんな死んだらこんな扱いなわけ?


「あの、質問とかしていい?」


「私はプログラミングされた者。設定されたカテゴリにあるものであれば答えよウ」


 死んだら会える神様とかじゃないんだ。まあ、いいや。


「ここは何処? 私もう生き返ることは無理なの?」


「ここは『ハザマ』、死者の魂が訪れる場所。本来、死んだものは魂の管理者のもとへいク。だが、死の瞬間大きな衝撃を受けた魂が時折ここに迷い込ム。ここに来た魂はもう蘇らなイ」


 生き返ることは無理か。やり残したことや未練がたくさんあるんだがもうどうにもならないよね。

 

 万が一蘇ったところで、潰れて焼け焦げた上に穴だらけの体なんてまともな生活おくれないだろう。


「転生するって言ってましたよね。何に転生するの? 人間? 動物? もしかして虫とかじゃないですよね。それに幻想ワールドってなに? 地球ではないの?」


「次はニンゲンに転生となっていル。お前は1度の死亡で3回魂を傷つけタ。その衝撃のせいで同じ次元の輪廻から外れタ。だからこれまでと異なる世界幻想ワールド215次元に転送されル。異なる次元では何がおこるかわからなイ。お前の魂は転生した時点でこちらの管轄を離れることになル。だから餞別に願いを叶える決まりダ。無論こちらで調整出来る願いしか叶えられないガ」


 次も人間に転生できるときいてちょっとだけ安心した。


 ただ、別次元に生まれ変わるってのは半端なく怖い。


 どうしよう。なんてお願いする? 転生先がどんな所かわからない。地球みたいな現代社会かもしれないし、ファンタジーな世界かもしれない。


 お金持ちの家に生まれたいとか言ってみる? でもさ、お金持ちだから苦労しないなんてわからない。悪役の家に生まれたらどうする。相続争いとか婚約者問題とか巻き込まれたらどうする。下手にお金がありすぎるのだって問題だ。恨み僻み妬みの目にさらされるとか怖い。


 美貌のチートにしてとか言ってみる? でもさ、美貌チートってヤンデレ発生させたり、無駄に変態呼び寄せたりして大変じゃないの? もし権力者とか変なヤツに監禁寵愛されたらもう人生終わりだ。必ずしもイケメンに好かれるとは限らないし。ハゲデブのおっさんに飼われたら……おぞましい。


 肉体ステータスMAXとか不老不死とかは? 例え最強の肉体があっても私ってビビりでヘタレのチキンハートなんだよね。自分から戦闘なんてできない。たぶん宝の持ち腐れになると思う。もし地球と同じような現代社会に生まれ変わったら不老不死なんてかえって生きにくいだろうし。


 魔術師チートだとしても、あんまり大きい力だと周囲に怖がられたり、最悪化け物扱いされて捨てられたりするよね。


 平凡にってのぞんでもいまどき平凡ほど怖いものはない。スペック平凡でチートに立ち向かわなきゃいけない状況になったら死んじゃう。


 だめだ。ネガティブな発想しかできない。なにをのぞんだとしても不幸なことばかり浮かんでしまう。


 そうして30分近く悩んでいたら無機質な声が思考を遮った。


「あと3分以内にのぞみを言わなければお前はここで消失するゾ」


「え、どういうこと!」


「のぞみを言わない=次の生をのぞんでいないと認識されル。その場合は魂を消失させル」


「もっと早くいってよ」


 ど、どうする。ここで選択間違ったら次の人生がめちゃくちゃになる。


 あ。そうだ! 回復役! 回復チートならいいんじゃない? 私いつもゲームでは回復職選んでたし後方支援ならビビりな私でも大丈夫なはず。たぶん。例えファンタジーじゃなく現代社会に生まれ変わっても回復系の能力ならうまく活用できそうだし。


「決まりました! 私どんな怪我でも病気でも回復できる最強の回復術師に生まれ変わりたいです」


「承知しタ」


 真っ暗だった視界が今度は真っ白に光りだす。



 





 しばらくすると周囲で騒がしい人の声がし、ゆっくり重い瞼をあけ霞がかった視界で周囲をみる。



 嬉しそうな表情でこちらを見ている大人達。


 どうやら優しそうな人たちのもとに生まれることができたみたいだ。



 前世でお世話になったみなさん。何のお礼もできずに死んでしまい申し訳ない。

 チャットで「ちょいアイス買ってきまーすwボス戦には戻ってくるから絶対待っててよ」とか言っておいてリアル死亡落ちしてしまいごめんなさい。みんななら私がいなくても大丈夫だって信じてます。



 私はこっちの世界で回復役として頑張りますので!

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