教会・レラの資質2
~エト~
教会に着いた俺達は、神官に事情を話しレラの資質確認を願い出た。
「えぇ、承りました。それではレラさん、でしたね。こちらの鏡に手を翳して下さい。鏡の周りに神々の像があるのが解りますね? 鏡に魔力を注いで頂く事で、貴方に加護をお与えになっている神々が光りますので、それが貴方の魔法資質になります」
そう告げる神官に従い、レラが少しばかり緊張した面持ちで鏡の前に立ち、両手を翳す。
この世界に置ける魔法の概念は、『神々によって与えられた加護』であると言うものであり、どの神の加護を得ているかによって習得できる魔法が変わる。
例えば水を司る神アセーリアの加護を受けていれば水系統、火を司る神ガバランの加護を受けていれば火系統と言った具合である。
無論、神の加護に関係なく万人が使える生活魔法と言ったものもあるが、威力も規模も完全な生活補助にしか使えないものだ。
指先に小さな火を灯す『灯火』、コップ一杯分程度の水を生み出す『清水』、直径30cm、深さ20cm程の穴を掘る『地穴』、髪や体を乾かす程度の風を生み出す『清風』である。
正直に言って、あれば便利だが無くても構わない程度の効力しか持たず、冒険者や行商人の様に旅を生業とする人間以外には余り広まっていない。
これは魔力集積体質者以外が保有している魔力量では、精々『灯火』数回が限度である事も原因の一つであり、態々少ない魔力を使って生活魔法を使わずとも道具を使えば火を熾す事は出来るし、水が欲しければ井戸から汲めば良いと余り使い道がない。
冒険者にした所で、旅の途中で火種を作る『灯火』と、トイレ代わりの穴を掘る『地穴』程度しか使わないだろう。
それなりの期間を旅するなら『清水』で水を作るよりも水樽を持っていく方が早い上に確実もあるし、旅の最中に呑気に水浴びが出来る状況などそうそうないので『清風』も余り意味がない。
危険覚悟で水浴びをするより、水樽の水でタオルを濡らし、体を拭いた方が安全な上に手っ取り早い。
そう言った経緯もあって、生活魔法を覚える者はそう多くないのだ。
俺も一応は使えるが、それこそ煙草に火を点ける為に『灯火』を使うか、風呂上りに髪を乾かす為に『清風』を使う程度だ。
と、生活魔法に関してはここまでにするとして、俺には魔法適性となる神々の加護がない。
これは俺の出身を考えればある意味当たり前とも言えるが、俺ならずともこう言った人間は多い。
魔法適性持ち以外は殆ど全員がそうだと言って良いだろう。
まぁ、時折魔法適性を持たない剣士であっても戦神アークレストの加護を得ている、等と言う者も居ないではないらしいが、それこそ時代時代の勇者や英雄等と謳われる輩位だそうだ。
付け加えると、一応俺はある系統の魔法だけは使える。
それは『空間』である。
まぁ、ワープだテレポートだ等と言う芸当は出来ないが、亜空間に物をしまうだとか、空間を蹴って跳躍すると言った事は出来る。
これは加護に関係なく、地球の知識によって空間に対する認識の深い事が原因だろうと見ている。
量子力学やら相対性理論やらと、空間と時間に関する研究は地球でも特殊な分野ではあるが、その手の学術書も一応目を通していたし、兄貴の手伝いもあってある程度は理解している積りだ。
この空間に対する認識の深さと、三次元四次元と言った概念的なものが相まって、俺の固有系統である『空間』が成立しているのだろうと思われる。
余談ではあるが、俺の様に加護に関係なく特異な系統の魔法を使える場合は『固有系統』と称され、一種のレアスキルに分類される。
まぁ、そんな事を言ってしまえばレヴグロウを用いた『霊晶喚起』もまた、一つの固有系と考えていいのだろうが。
そんな事を考えている内に、レラは魔鏡に魔力を注いだらしく、鏡を取り囲む様に立つ神像の幾つかが光りだした。
「ほう、これは・・・・月の神レアイラート様に風の神ファーミラ様、それに命の神エオクーラ様ですか。それにこの輝きの強さ、レラさんは特にレアイラート様とエオクーラ様に愛されておいでですね」
月と風、それに命か・・・。
風は兎も角、月と命は回復や補助に特化した魔法が多いので、パーティーメンバーとしては有難い事この上ない。
攻撃に関しても風の系統を持っているので、後衛としては十分だろう。
――しかし、見事に女神ばかりだな・・。レラに加護を与えた神とやらは。
この世界に置いて主神とされる月の女神レアイラートに風のファーミラ、命のエオクーラは所謂所の女神である。
他は水神アセーリア、契約神トゥルカ、光神イオルーが女神、火神ガバラン、地神ドーグ、木神ザバラ、戦神アークレスト、闇神バイオスが男神だと言う。
魔法適性持ちの中でもここまで女神に偏るのは今まで多くの適性持ちを見て来たと言う神官から見ても珍しいのだそうだ。
「三柱の女神に愛された貴方は、それこそ良き妻、良き母になられる事でしょうな」
そう言って俺を見て微笑む神官に、頭が痛み始めるのを感じた。
――と言うか、何だ? ジルテと言いこの神官と言い・・・俺とレラが恋仲にでも見えているのか?
痛み始めた頭を抑えつつレラを見て見れば、頬を赤らめているのが見える。
・・・いや、お前がそんな反応を返していると、加速度的に噂になりそうなんだが・・。
俺達の反応に何処か満足そうに頷く神官と、何処か夢見る様な瞳で頬を染めるレラを眺めつつ、俺はそっと溜息を吐いた。
~レラ~
あうぅ・・・まだ顔が熱い気がします、はい。
冒険者ギルドのジルテさんと教会の神官様と続けて言われた事が尾を引いてますね、これは・・・。
私の様に譲渡階級が『生涯の譲渡』になっている譲渡奴隷は、時に嫁入りと同一視される事もあるんだそうです。
確かに、奴隷云々を除いて考えて見れば、生涯を共にする御方の元に出向く訳ですので、ある意味ではそう言う見方も出来ますね。
私の様な譲渡奴隷は、通常奴隷と違って奴隷解放の方法がたった一つだけしかない代わり、掛けられる制限の幅が曖昧で本当の意味で『主次第』なんです。
まぁ、奴隷である事には変わりませんので、『主以外との性交渉の禁止』『主以外との恋愛の禁止』の様な制限は当然ついて回りますが、それは見方を変えれば『相手が主であれば恋愛もその先も自由』と言う訳で・・・。
それさえ除けば、商いを始めてお店を持つ事も出来ますし、学院等に学びに行く事も出来ます。
主の許可があればと言う前提はありますが、恋愛や性的な事柄を除いておよそ制限と言うものがないのが譲渡奴隷です。
ですので、そう言った譲渡奴隷の方は大抵が――よほど酷い主に当たらない限りは――主との間に思いを育み、婚姻によって主の家名を頂く事で民へと戻るのだそうです。
実は思い出さない様にはしているんですけど・・・村を出るに当たってエト様に生涯を譲渡する事が決まった私に、村の女の人達が色々言って来たんですよね・・。
そのぅ・・『どうせだからさっさと抱かれて結婚しちゃえ』だとか、『エンシェントさんの家名ってクライスだっけ? レラ・クライス・・うん、良いじゃない!』だとか。
飽くまで私は、村を盗賊から救ってくれたエト様への礼金代わりですから、そんな下心を持ってお仕えさせて頂く訳には、と自分を諫めているのですが昨日からこっち、そんな覚悟が揺らいじゃってます。
だって、エト様の御屋敷で働いているバンザさんやナルアさん、ジルアさんに神官様と短い間にもう4人ですよ?
バンザさん曰く
『登録からこっち、どれだけ儲けようが奴隷を持とうとしなかった旦那が連れて来たんだぜ? ギルドの女連中との浮いた話もなかったし、そう言う意味じゃぁお前さんは脈ありってこったぁな』
だそうで、ナルアさんは
『稼いだ金で娼館通いってバカも困るけど・・・エトさんはそこらが逆に綺麗過ぎてねぇ・・。かと言ってそこらの女口説いてる訳でもないし、心配はしてたんだけど・・・。レラさんへの様子を見る限りは大丈夫そうで良かったよ』
と言われました。
それだけでも若干揺れ掛けた所に、ジルテさんと神官様に追い打ちを掛けられてしまった形です。
元々エト様の印象って悪いものは一つもなかったりしますし、村の危機に駆け付けて下さった時、教会の扉を開けて姿を見せたあの時は本当に勇者様かと思いましたし、その後の接し方だとかその・・・。
これって、少しは期待して良いんでしょうか?
・・・なんて思って居られたのも、エト様の反応を見るまでだったんですけどね。
いえ、そのキッパリ振られたとかではないんですけど、エト様は余りにも普段どおりでしたので・・一人で盛り上がってるのが恥ずかしくなっちゃったんですよ。
それで何となく落ち着いた私に、神官様は去り際に一言。
「・・・頑張ってくださいね、レラさん? エトさんは確りなさっている余り、人から向けられる好意には敏くは居らっしゃらない様です。確りと想いを伝える事をお勧め致しますよ」
だから追い打ち掛けないで下さいよぉ。
ギルドではジルテさんにも応援されちゃいましたし、バンザさん達にクナちゃん、それに神官様まで・・。
うぅ・・私ってそんなに解りやすいんでしょうか?
そんな事を考えていたからでしょうか?
「・・、・・か・・のか、レラ?」
エト様に声を掛けられているのに全く気付きませんでした。
「ふぇっ? ・・・って、ふ、ふわわっ!?」
気づけば極間近に私の顔を覗き込むエト様のお顔があって、飛び跳ねそうな程驚いた私に、エト様は訝しげに眉根を寄せて尋ねてきます。
「どうかしたのか? 心此処にあらずと言った様相だが?」
「ひ、ひぇ! だ、大丈夫れふ!」
あはは、滅茶苦茶噛んじゃってます、私・・・。
「・・・発音が可笑しい時点で、大丈夫だとは言えんと思うが」
正論です、はい・・。
そんな私にエト様は小さく嘆息なさると、優しく私の頭をポンと叩き
「買い物に戻る前に、食事でも済ますとしよう。どの道、昼も近い故な」
と言って近くの料理屋へ向かって歩き出しました。
えぇっと、はい。
お昼が近いのは確かですけど・・これって明らかに買い物前に私が落ち着く時間を取っくれたんですよね、明らかに。
実際、落ち着ける時間が頂けるのは有難かったりするんですけど。
なんて事を思いながらの間も、やっぱりエト様は人気者です。
「おうっ、水晶の旦那っ! 今日は鹿肉の良いのが入ってるぜ! サービスすっから食ってってくれよ!」
「それよりウチで食べてっておくれよ! 美味しいお魚、仕入れといたよ!」
なんて声があっちこっちから聞こえてきます。
そんな人達に
「気持ちは有難いが、また今度寄らせて貰うとしよう」
「魚か・・。済まんが今日は、な。次に寄らせて貰う時は期待させて貰うさ」
って具合に答えながら、エト様は最初から決めていたみたいにあるお店に入って行かれました。
『草原の野兎』と言う看板が掲げられたそのお店は、こじんまりとしていてお世辞にも繁盛しているとは言えません。
ですが、そこに迷いなく入っていくエト様はそんな様子等気にした様子はありません。
「いらっしゃ・・あ~っ! エトの兄ちゃん! 食べに来てくれたの!?」
出迎えてくれたのは、私と同い年位の少女でした。
狐人族・・でしょうか?
小麦色の髪の毛の間から見える三角の耳と、ズボンのお尻から伸びたフワフワの尻尾が特徴的です。
そんな狐人族の少女はエト様を見かけた途端、嬉しそうに走り寄ってきます。
それに対して苦笑を洩らしつつ、エト様は小さく頷きを返しました。
「あぁ・・。二人なんだが、頼めるか?」
そう言われた少女は、嬉しそうに頷きます。
「まっかせといて! 美味しくってもう他の店に行けない様なの、作ったげるから!」
気合を入れる様に腕まくりでそう言った彼女は、そそくさと厨房に消えて・・・えっ、あの、まだ注文してませんよね、私たち。
と、そこで気づいたんですけどこのお店、品書きがありません。
普通だったら壁に品書きが書かれた木札が掛かってますし、そうでなくても字が読めない人も多いので、その日のメニューを聞いてくれるんですけど・・・どうやって注文するんでしょう?
そんな私の疑問に気づいたのか、エト様が苦笑交じりに説明してくれました。
「驚いたか? この店は基本的に一日一品、決まったメニューと言う物がない。その日の市で仕入れた物によって品が変わるんだ」
そう言って手近な席を示すエト様に促されて、私が席に着くとエト様はカウンターに置いてあった木製のコップと水差しを手にして戻ってきました。
そして二つのコップに水を注ぎ、席に着くエト様に私が内心で慌てていると、それに気付いたのか「気にするな」と言って言葉を続けます。
「強いて言えばシェフ・・あぁ、料理人のお勧め、それ一つだ。元々、食材の善し悪しを見極める目鼻が確かなのは知っていたんだが、調理の腕前も上物と知った時は驚いたものだ」
苦笑交じりに告げられた言葉に、
「またまた~、そんなに煽てても料理以外は何も出ないよ?」
と言う厨房からの言葉が被ります。
何だか、そんな聞いているだけでもホンワカした気分になってきそうなやり取りに背を押される様に、エト様と二人他愛ないお話をしていると――
「はい、お待ちどう様~。今日のメニューは猪と新鮮野菜の炒め物にアクライモと根菜のスープ、トーナ草の塩ゆでに焼き立てパン。飲み物はどうする? お酒飲むなら用意するよ?」
ほかほかと湯気を立てる料理が運ばれてきました。
見れば、猪肉と青菜、それとオレンジ色のはニンジン、白いのはモヤシでしょうか? 色とりどりの野菜と一緒になった炒め物、一口大に切られたアクライモとゴボウ、ニンジン、大根が入ったスープ、軽く湯通しした青々として食べやすい大きさに切られたトーナ草に千切りにしたショウガを添え、匂いだけでも解る位に出汁の聞いた塩が掛けられていて、もう匂いだけでもごくりと唾を飲んでしまいそうな程美味しそうです。
そんな私に苦笑を深めつつ、エト様は狐人族の少女と言葉を交わしていきます。
「確かに欲しくなるのも解らんではないが・・・、まだ日も高いからな。次の機会にさせてもらうとしよう」
「そかそか・・・って、その次が一ヶ月後~とかは嫌だからね? も~しそうならお家に押し掛けて料理しちゃうからね?」
ズイッと顔を覗き込むようにして言う少女に、エト様はやはり苦笑。
「商売を放り出してまでこられてもな・・。美味い料理は魅力だが、流石にそれは気が咎める」
そんなやり取りを交わしています。
えっと、このやり取りに特別なものを感じるのは私だけでしょうか?
なんて事を考えていたのを見て取ったのか、狐人族の女性が小さく苦笑を洩らしました。
「あはは、ヤキモチなんてやかなくても大丈夫よ。エトの兄ちゃんは私の恩人なの」
「はい? 恩人、ですか?」
そう尋ねる私に狐人族の女性――カラさんと仰いました――が説明してくれます。
それによると、カラさんは元々違法奴隷だったのだとか。
奴隷制度は法によってキッチリ管理されているからこその制度なのですが、そこはやはり抜け道と言うか、非合法の手段もあるようでカラさんはそれに引っかかってしまったそうです。
その方法と言うのが、行商を生業としていたカラさんのお父様、お母様を援助して下さっていた筈の御方が、突如掌を返した様に『今まで貸し付けて来た金額を返せ』と言って来たらしいのです。
勿論、これはカラさんのご両親にとっては寝耳に水。
元々、小さな村で小さなお店をやっていらしたと言うご両親に『私の元で行商を行って貰えないだろうか。もちろん、その為に必要なものは用意するし、後々取りたてる事もしない』と幾度にも渡って交渉された事で、ならば、と始めたのだそうですし、カラさんが年頃になるまでは平穏無事に良き支援者と、それに支えられた行商人として成り立っていたのだそうです。
ですがカラさんが年頃になり、女性としての色気が出始めた頃になるとそれが一転、『あれは投資であって無料奉仕ではない。お前達にはここまでに私が貸し付けた金を払う義務がある』と言いだしたのだとか。
どう抗弁しても聞く耳を持たないその支援者に対して、カラさんのご両親も何もしなかった訳ではありません。
まずは役所に訴え出たそうですが、保管されていた契約書の内容が改竄されていたらしく訴えを取り下げられ、ならばと行商に力を入れて借金分を支払おうとなされたらしいのですが、そちらも盗賊崩れの妨害やあり得ない物価の高騰で上手く行かず・・・。
結果、年若く男性との経験がないカラさんが『借金の形』としてご両親の元から引き離され、奴隷として売られたのだそうです。
そして市場に出され、これからの未来を思って悲嘆に暮れていた所で、エト様に救われたと仰いました。
「今思い出しても、あれは奇跡なんじゃないかなぁって思ってるんだ。だって、脂ぎったオヤジだとか、乱暴な冒険者なんかに気持ち悪い目で見られて・・・そんな日が続いてあぁ、私はもうあんな連中に好き勝手に弄ばれて一生を終えるんだって思ってたのに・・。あの日、エトの兄ちゃんが来てくれて助けてくれたんだもん。それも私だけじゃなくて、お父さん達も取り上げられてた行商権とか資産とか取り返して貰えたしね」
そう言ってカラさんは本当に嬉しそうに笑っていましたが、何と言いますか・・・、お料理の片手間に聞くお話としてはかなり重いお話です。
あぁ、いえ、お料理は美味しかったですよ。
すっごく。
ですが、本当なら手放しで喜んで天にも昇る気持ちになっていた所を、無理やり現実に留められたと言うか・・そんな感じです。
その後、食後の御茶を頂きながらエト様のお話を聞いたのですが、カラさんのご両親を支援なさっていた商人は元々真っ当な商売をなさっていたお方で、カラさんのご両親への支援も真っ当なものだったそうです。
ですが、その商会の代表が息子さんに移ってからは売上高に重点を置き始めたらしく、高額取引が見込める奴隷商に手を出し始めたのだそうです。
そして目を付けられたのがカラさん。
高額取引の見込める亜人種の女性で、未婚。
その上ある程度の教養もあって容姿も良いカラさんは、奴隷として売るには格好の獲物だったようで、それを知った代表の息子さんが策を巡らせたのだとか。
当時、違法奴隷に関する摘発依頼を受けていたエト様達の調査でそれが発覚し、商会は前代表に委託されて現代表だった息子さんは逮捕、被害者であるカラさん達は奴隷からの解放とカラさんのご両親を始め、違法取引の犠牲になった方達は無事商人として返り咲けたそうです。
そしてその際、過去の経験から行商人ではなく、料理屋を営みたいと思っていたカラさんをエトさんが手助けしたらしいです。
「手助けと言うが・・・、俺のした事等、店舗を貸し出す事と開店に辺り必要だろう資金を貸し付けた事だけだからな。実質、今の繁盛はカラ自身の技量によるものだろうよ」
そう言ってお茶を飲むエト様に、カラさんは小さく苦笑。
「いやいや、エトの兄ちゃんが居なかったら私、性奴隷として壊れるまでヤラれて終わりだったからね? と、まぁ、こんな訳で私・・と後父さん達もエトさんには頭が上がらなかったりするんだ」
そう言って、カラさんは私に小さく耳打ちをなさいました。
「まぁ、そんな訳だから。隙があればエトさんの御嫁さんの座、狙ってくからね? 油断してると後で泣いてもしらないよ?」