プロローグ
魔法だの、超能力だのってあると思う? ある訳ないと思うよね。私もそう信じてた。
――でも、とても信じ難いことに、――この世界は、科学的に説明がつかないことで溢れ返っているんだよ。……そんな変な目で見ないでよ。今日起こったことを振り返れば納得できるでしょう?
少し話は変わるけど。私たちを、それだけじゃなく身の回りの自然も、この地球も、この宇宙も、この世のすべての物質は「元素」から構成されているよね。
地水火風の四つの元素から世界は構成されているて言われてた頃もあったけど、今では自然界の物質を構成しているのは、水素やら炭素やら酸素やら、そういった数十種類の元素だってことを習ったと思うのだけれど。
それで、超能力やらなんやらが実はあるんだって言ったよね。今の科学とは矛盾が生じてしまうそういった能力を「異能」って呼ぶんだけど、その異能の一種って言えばいいのかな、ある一つの元素を、そしてその元素が持つ特性を、自分の思うままに操れる。――そんな能力を持っている人たちが存在する。この国に千人近くも。
今は国もその能力のことを深く理解してしまい、そういう人達の存在を無視するわけには行かなくなった。団結して政府に楯突かれたら困るから、監視している。
……監視するだけじゃなくて、その元素の能力を色々研究している。平和的にも、軍事的にも利用できるから。そういう存在が知れ渡ると社会が混乱するから勿論公にはしてないけれど。
――言い忘れてた、その元素を扱える能力者の事をね、私たちはそのまんま「元素使い」って呼ぶんだ。元術師とか元素能力者とかがより正式な呼び方だけど、元素使いって響きが魔法使いみたいで私は好きなんだ。
元素使い達は幾つもの勢力に分かれているから、小競り合いも起きるし、場合によっては殺し合いも珍しくない。元素使いの能力は殺して奪うことができてしまうから、能力目当てで元素使いを狙う奴らもいる。
まあ、元素使いは普通の人に比べて恐ろしく頑丈で再生能力もあるから、簡単に死ぬことはないのだけどね。……でもまあ私達は毎日穏やかで平和な日々を送れているっていうわけではない。
……これだけ散々しゃべったからもう私が何が言いたいのか分かると思うけど、君は、「元素使い」だ。それも小さい頃から、じゃなくて最近「元素使い」になった。嫌だと思っても、どうしようもない。君はこの殺伐とした世界からはもう逃れられない。
私の適当な説明でどのくらい伝わったか分からないけど、何となくは理解できたと願ってるよ。とにかく、改めて挨拶をしないとね。
――――ようこそ、新たな元素使いさん。