98.「あと二発 ――獣人探索+⑰――」
「あと三回…」
それが限界だった。
さっきの落とし穴が思わぬ伏兵だったのだ。
通常、自分の全体重をワイヤーのみで支える際は二本射出する。
ところがこの森に入って片側の射出装置が破壊され、その結果落下を免れるために一本のワイヤーに過大な負荷が掛かってしまった。
「先端の鉤爪がまともに機能するのは、あと三回だ」
己に言い聞かせるようにつぶやく。
そんなミズハに追い討ちを掛けるように吸血コウモリの大群が迫ってきていた。
根が露出している木々の合間を走り抜ける。
振り向きざまに二丁拳銃が火を吹くが一向に数が減らない。
全身生傷だらけだ。
喉はカラカラ、脚はパンパン。
ゴールの見えないサバイバルレースに精神的にも相当追い込まれている。
どうしてこんなことになってしまったのか。
「くそぉっ! ドナァーッ!」
原因を作った相棒の名を叫び走り続けるミズハ。
一瞬視界が霞む。
そして露出した根っこに引っ掛かり前のめりに転倒。
ゴロゴロと転がりつつもすぐに起き上がってコウモリの大群から逃げる。
逃げて逃げて、どこまでも逃げ続けるしかなかった。
「しまった!」
気付いた時にはすでに手遅れ。
転んだ際にポケットが破れていたことに気付かず、最後の弾薬をみすみす手放すことに。
拾いに戻るのは困難。
ミズハに残された武器はサバイバルナイフ一本と回数制限付きのチェーンワイヤー一機。
そして互いに一発ずつ銃弾が込められた二丁拳銃のみ。
「あと二発…」