97.「カエルとホール ――獣人探索+⑯――」
相棒ドナおよび獣の少女捜索に戻ったミズハを待ち構えていたのは、待望の池! 水場ッ!
しかしそれは罠だった。
水溜まりに見えていたのは巨大生物の唾液。
巨体過ぎて動くことが出来なくなったウシガエルの変わり種だ。
「ウシガエルがでかくなったオオウシガエルの、さらにでかくなったオオオウシガエルだな。初めて見たけどでかすぎだろ」
天を仰いだままぱっくり開かれた口だけでも、子供用のビニールプールくらいの大きさがある。
喉が乾いているとはいえ、さすがにこの液体に手を伸ばそうとは思えない。
ぐるっと迂回して先を急ぐ。
「あんな見えすいた罠に引っ掛かるかっつの」
そのセリフを言い終える瞬間!
踏み込んだ右足周辺の土がえぐれ、前のめりに倒れ込む。
落とし穴だ。
さっきのオオオウシガエルの口とほぼ同じくらいの大きさの穴にミズハの体が吸い込まれていく。
その落とし穴は底が見えないくらい深い。
とっさに空中で体を捻り、チェーンワイヤーを飛ばしていなければどうなっていたことか。
「あっぶねぇ。つーかこれ罠か? 罠じゃないよな?」
ワイヤーに吊るされたまましきりにトラップの存在を否定するミズハ。
穴に落ちる直前にほざいていたセリフの手前、強がっているわけではない。
人間や動物が仕掛けた罠ならこんなに深い穴を掘る意味が分からないからだ。
もっと浅く作って底に鋭利な刃物を仕掛けておいた方がなにかと都合が良いはずだろう。
事実ミズハはワイヤーによって静止するまでに十メートルほど落ちており、刃物バージョンのトラップなら助からなかったであろう。
「この森にはまだまだ未知の生き物がいる、ってことだな」
穴から這い出たミズハは、今回の失態をざっくりまとめて先を急ぐ。