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95.「ハイソン ――獣人探索+⑭――」
あれからミズハは、BEBを忍ばせていたのとは反対側の胸ポケットに消臭スプレーを常備していたことを思い出す。
それをシュッシュしながら、道を外れて進んできた先にあったこの景色を眺めている。
「廃村か」
茅葺き屋根の古い住居が建ち並ぶ空間に出た。
人が暮らしている気配はない。
雑草も伸び放題で、家々は荒れ放題だ。
「井戸の水も枯れている」
近くに転がっていた石を投げ入れてみてもむなしく反響音がするだけだった。
打ち捨てられて数年あるいは数十年になるのだろうか。
そんな集落の入り口を横切る人間の影。
見間違えではない。
遠目からその人物の背丈がドナのようにも、獣の少女のようにも見えたのだがつい先程それで騙されたばかり。
ミズハは姿勢を低くして、静かにその人物の後を追った。