94.「くさったまご ――獣人探索+⑬――」
いよいよ頭がうすらぼんやりとしてきた。
物語の主人公なのに、このままネズミにやられてしまうのか!?
「このままやられてたまるか!」
下唇を血が出るくらい強く噛んで意識を保つ。
そのままミズハは胸ポケットに忍ばせたBEB、正式名称「Bad Egg Bomb」を取り出し投げつけた。
爆風が広がると同時に鼻が曲がりそうなほどの強烈な異臭が一瞬にして拡散する。
それによって辺りを取り囲んでいたたくさんの動物の気配がサァーッと引いていくのを感じた。
「くさっ! でも次はもっと臭いの作ろう」
なんとか命拾いしたミズハ。
その後に摂取した薬によってひとまず意識は覚醒したが、体中の毒が抜けたわけではない。
全身を覆う針を一本一本抜きながら、ひとまずは強烈な腐敗臭が立ち込めるこの場所に一時留まることにした。
この臭いがクセになったわけではないぞ。
「ちょっとでも一息つかないと体がもたん。臭いのバリアもいずれ消えるし、このまま異臭を放ちながら歩いていたら格好の的だ。ひとまず臭い消しに川を目指そう」
鼻をつまみながらあれこれ考えを巡らせるミズハ。
「映像のドナは森に来たときと同じ服装だった。つまりあいつもこの付近を通ってる。道は外れていないはずだ」
うつろな思考能力の中で導き出した答えが正解であることを祈りつつ、今後の追跡継続のために一度横道に逸れることを決断した。
Bad eggは直訳のほかに「悪人」という意味もあるそうですが、この場合はどっちの意味でも通じるかも。