8.「超絶精密射撃 ――海竜退治⑦――」
海竜から逸れて海に落ちていく爆弾。
絶望する投擲手ゴーガ。
ライフルを手放したミズハはそのまま両手を自身の腰に回して、甲板の縁に片足を掛ける。
次の瞬間ミズハが両手に構えていたのは、彼が腰にぶら下げていた二丁拳銃。
ゴーガがそれに気づいた頃には、すでに右手の銃が火を噴いた後だった。
最初の銃弾が爆弾の入ったカプセルの右下をチュンと掠めると、落下コースから一転して浮上。
海竜の進攻ルート上に戻った爆弾を、今度は左手の銃から放たれた弾丸がピンポイントでカプセルごと撃ち抜いた。
大爆発。
そして轟く爆破音。
船の乗客に動揺が走る。
そして一際大きな波が船を襲う。
「みんなしっかり掴まってろ!」
振り返ってミズハが叫ぶが、その叫びは時既に遅かった。
なぜならみんなこの嵐の中とっくに柱やロープ等にしがみついていたからだ。
まるで地震のような揺れが船を襲う。
銃を戻して柱に掴まったミズハは、爆煙の中を引き返していく海竜の姿を見つけた。
遠目からだが持ち前の視力を如何なく発揮して、かすり傷はあるものの爆弾による直接的な傷痕がないことを確認した。
あの極限状態の中、ミズハは最後まで海竜を殺すことなく逃がすことを選んだ。
海竜の姿が遠ざかっていくに連れ、雨雲が晴れていく。
雲間から光が差し込み、一人の死者も出すことなく生還した船を照らす。
祝福されるハンターミズハ。
そうこうしている間に船は、甲板からウェールズの港が確認できる距離まで近づいていた。